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HP54645DにFFT機能を追加する

 「これさえあればどうにかなる」と私が全幅の信頼を寄せる,我が測定器のトップスター,HP54645D。

 私の手元にやってきた経緯はやや複雑ですが,最初に使ったのは会社で使いました。ある方が定年までのわずかの間,私の部署にこのオシロスコープを持って異動されてきたのですが,若かった私は彼とよく衝突していました。

 彼が去った後,このオシロスコープだけ残ったのですが,対立しつつも尊敬をしていた彼の持ち物だったこのHP54645Dを受け継いで使っていくのは,この私をおいて他にない,という妙な使命感から使い始めました。

 それまでデジタルオシロに懐疑的だった私は,この時HP54645Dの実力を知り,HPという計測機器メーカーの設計思想やUIに触れることになります。以後デジタルオシロとHPという2つに信頼を寄せるようになったのです。それゆえ,その後しばらくしてHPがAgilentに変わった時,理不尽だと憤慨したことを覚えています。

 ちょうど,テクトロニクスのデジタルオシロがどうしようもないくらい使いにくいものばかりだった時代だった,からかも知れません。

 そういえば仕事では横河のDL1540も使っていましたが,これも使いやすいものでした。

 ただし,横河に限りませんが,時間軸を切り替えると,その度にキャリブレーションがかかり,1秒ほど操作不能になります。これがもうとにかく嫌で嫌で,それが私をデジタルオシロから遠ざけていたのです。

 HP54645Dの凄さはいくつかあります。今時のオシロスコープならすべて実現しているかもしれませんが,1996年当時にこれだけのことをやっていたというのは,ちょっと驚きです。

 まず,ミックスドシグナルオシロスコープであること。2chのアナログに加えて16chのロジックアナライザを持っていて,同じ画面上に同じ時間軸で表示させることが可能です。電源のノイズでバスのデータが化けるという現象をつかまえるとき,アナログ入力でトリガをかけ,ロジックアナライザでバスを観測するということが簡単にできます。

 また,トリガが強力です。バスのデータが0x68の時に誤動作する,と言う状況があったら,トリガをロジックアナライザ側からかけ,その条件に0x68を指定します。こうすると0x68がバスに乗ったらトリガがかかりますから,残りの2chのアナログでしっかりアナログの現象をつかまえるわけです。

 現実の回路のデバッグでは,波形そのものよりはデジタルのドメインで,HighからLowになった時間が重要な情報であることも多いわけですが,だからといってその時の立ち上がり時間などの過渡現象をアナログで捉えたいときもあるわけです。全てをアナログで見ていけば解決しそうな物ですが,アナログでは逆に情報が多すぎる場合も多く,「デジタル」というドメインで情報を上手に整理してくれることは,現実的には必要なことだと思っています。

 まして,ロジックアナライザは名前の通り,ロジック信号の解析を行うものです。スレッショルドレベルもちゃんと管理され,信号が変化した時刻も,どのレベルを横切ったときの時刻とするかを厳密に規定してくれています。

 そしてMegaZoom。当時としては大容量のメモリを持っていて,画面に出ていない部分もキャプチャしてくれています。通常,メモリの節約を行うため,波形のキャプチャは画面に出ている部分だけが行われるものですが,HPが始めたMegaZoomという機能では,画面に出ていない部分もキャプチャしてくれます。

 この部分を拡大したい,もう少し全体の波形を見たい,という場合にはオシロスコープの時間軸を無意識に変えるのですが,通常ストレージされた波形の場合にはリセットされ,波形が消えてなくなります。

 従って波形を取りなおすことが必要になりますが,得てして回路のデバッグではそうそう簡単に問題の波形を取り直すことが難しく,今目の前にある波形が何十分も格闘した結果手に入った,貴重なサンプルである場合も多いのです。時間軸を変えただけでそれがスパーっと消えてなくなるなんて,機会損失もいいところです。

 先程の強力なトリガと組み合わせると,このMegaZoomはものすごく強力です。

 MegaZoomでは,トリガがかかった時刻よりも前の波形も取り込んでいます。ですから,ある現象をつかまえたい時,運悪くその現象でトリガをかけられない場合などでは,時刻はずれているけれどもその条件に従って発生する間接的な条件をトリガにすることが出来ます。

 その時刻のズレが小さいうちは,画面の出ている範囲でキャプチャされるのですから,どんなオシロスコープでも対応可能でしょうが,ズレが大きい場合に時間軸を長く設定しなければならなくなり,せっかくつかまえた波形がつぶれているということがおきてしまいます。MegaZoomではそういう心配は無用です。

 もちろん,メモリのサイズは有限ですので,拡大しても波形がつぶれてしまうこともあります。みたい部分がちょうどキャプチャされていない場合もありますが,次につかまえる時にどの時間軸でどの時刻からキャプチャすればよいかの目処も確実に立ちますし,それもある範囲であればちゃんと波形が取れていますから,クリティカルな設定をすることも,何度も何度もやり直すことも防げて,実にスムーズに作業が進みます。

 そして,MegaZoomで頻繁に操作する時間軸のつまみ。これを回してもキャリブレーションは起きず,アナログオシロなみに切り替わってくれるのです。

 まだあります。画面に出てくる電圧や周波数の情報が,カーソルとは関係なく常に表示されているのです。初めてリードアウト/カーソル付きのアナログオシロを使ったときにも便利だなあと思ったものですが,常に波形の基本情報が出ていて,リアルタイムに更新されていることの安心感は,効率的なデバッグに直結します。

 そして画面が大きいこともありがたいです。アナログオシロでこのサイズのCRTを装備すると,どうしても輝度が落ちてしまうので周波数帯域に制約を受けます。輝度を上げるための特殊なCRTを使うなどお金もかかるし,扱いにくくなるものですが,これはさすがにデジタルだけに,画面のサイズは任意です。大きめのグリーンCRTは見やすく,これは昨今のLCDよりもずっとずっと気に入っています。

 そしてこれらの機能が,うまく操作系に統合されていて,思考を妨げません。メニューの階層も適切,ツマミにアサインされた機能は厳選されていて,ボタンの配置も最適。画面の下にあるファンクションキーに頼ることなく機能が整理されていて,まさに使いたい機能が使いたいところにあることで,私は初めてデジタルオシロの多機能さを自由に使うことが出来るようになったのです。

 ついでにいうと,この機種はデジタルオシロの悲しさか,中古の値段も安いです。100MHzの2chアナログに16chのロジックアナライザですから機能的には十分ですが,値段は7万円から8万円です。中国や韓国メーカーの新品が4万円くらいで買えるのですから高いというのもありますが,安い物はそれなりのものです。

 古いとは言えHPがそれまでのデジタルオシロの欠点を打破した54000シリーズは,私は確実におすすめできるオシロスコープです。

 愛機自慢に鼻息も荒く,ようやくにして本題です。

 このHP54645Dですが,人によっては「FFTが出来るよ」という話もするのです。私の54645Dにはそんな機能はなかったはず。いくらメニューをほじくっても,やっぱりFFTは出てきません。

 2465Aもそうですが,オプションを追加することで出てくる画面や機能があります。54645Dもそうではないかと調べてみると,やはりそうでした。背面にストレージユニットという拡張機器を取り付けることで,FFTなどの演算機能が使えるようになるようです。

 私の54645Dをあらためて見てみると,RS-232Cとパラレルのインターフェースを追加する54651Aというモジュールがついています。FFTや積分などの機能を追加するには,ストレージモジュールというものが必要で,残念ながらこれではありません。

 ストレージモジュールはGP-IBを追加する54657Aと,RS-232Cとパラレルを追加する54659Bの2種類があり,どちらかを追加すると演算機能や自動テスト機能が使えるようになります。もちろん名前の通り,不揮発の波形メモリも追加されるので,波形のメモが100ほど保存できるようにもなります。

 新品はもうありませんので,中古を探します。しかし,もともとHP54600シリーズの専用オプションですので,本体に付属して販売されることが多く,単品ではなかなか出てこないようです。

 あるお店で54657Aを26000円ほどで見つけましたが,これはすでに売り切れ,eBayでは1万円ちょっとでて出ているものですが,海外のオークションはリスクも大きく,ちょっと手を出せません。

 よくよく探すと,国内の業者で31500円で売っているところがありました。54657Aも54659Bも両方同じ値段で売っています。新品が65000円ほどだったことを考えると,ちょっと高い気もしますが,今買わないともう二度と手に入らない気もします。

 ちゃんとしたスペアナの代わりになることまでは期待していませんが,所詮はデジタルオシロの一機能に過ぎず,またFFTという演算を行うだけのものですので,波形の歪みがどういうスペクトルで起きているかなどを,ちゃんと見る事が出来るのだろうかと心配で,しかも3万円という安い値段ではないものですから,ちょっと迷いました。

 そもそも,デジタルオシロスコープの垂直軸の分解能は8bitです。たかだか50dBほどしかダイナミックレンジはありません。それに垂直軸の感度だって1mv/div程度ですから,基本的にこれ以下の信号はノイズに埋もれて見えなくなります。それでどのくらい使い物になるのか,私には未知数です。

 でも,私は周波数軸の測定器を持っていません。それが3万円で手に入るなら悪い話ではないと考えて,結局買うことにしました。

 数日で私の手元に届き,早速54645Dに取り付けます。故障もなく,問題なく動作しました。

 早速FFTを試してみますが,残念ながら今ひとつでした。

 高次のスペクトルの周波数と大きさをすぐに見ることが出来ることは大変に便利だと思いますが,具体的にどういうシーンで使うべきかが今ひとつ浮かんできません。歪みを見るにはちょっとダイナミックレンジが小さすぎますし,私は高周波はほとんどやりませんし。

 他の機能,自動テストや積分についても,私にはあまり必要性がありませんが,それでもこういう機能があるということを覚えていれば,役に立つ事もあるかも知れません。

 一応これで,私の54645Dはフルオプションになりました。周波数軸の観測まで可能になったことで,きっと何かの役に立つ事があると思います。そもそもスペアナなんて必要と思った事はほとんどないですから,今の時点でFFTが使いこなせるわけもありません。

 まあのんびりいきましょう。

 ところで,私が持っているRC発振器VP-7201Aと電子電圧計1631Bの,大メンテナンス大会を計画しています。劣化した電解コンデンサを交換して可能な限りの調整をしようというだけの話ですが,VP-7201Aが思いの外低歪みな発振器であり,電解コンデンサを交換するだけで性能が回復するという話を聞いて,やってみることにしたのです。

 1631Bは菊水のホームページから説明書がダウンロード出来,この中に調整方法まで書かれているので,完璧です。平均値型の交流電圧計を,メーターの指示を実効値で表示してあるだけのなんちゃって交流電圧計のように見えますが,当時はそれが当たり前でしたし,なにより大型のアナログメーターと-80dBレンジを持つ高感度っぷりが頼もしいです。

 しかし,30度を超える真夏に調整をするなんて,無謀ですね。

SONY Readerを触ってみて

 私が読む本と嫁さんが読む本との間には共通点がありません,結婚時の蔵書の合算の結果,重複なく正味2倍の冊数になったことでも,それははっきりしました。

 私が面白いと言っておすすめしても途中で投げ出すし,嫁さんが面白そうに読んでいる本を私が読み始めても数ページで閉じてしまうので,ここまで違う物かと思うことがあります。

 そんななか,私の蔵書で嫁さんがいたく気に入った本が「闘うプログラマー」です。ちょっとまえに復刻された本で,DECのスタープログラマのデヴィッド・カトラーがビル・ゲイツに三顧の礼で迎えられ,WIndowsNTの開発を率いるというドキュメンタリーです。

 ご存じの通り,WindowsNTは現在のWindowsを根本から支える基盤ですが,カトラーは気高い思想で,WindowsNTの開発に邁進しました。「闘うプログラマー」という本は,スペシャリストであるカトラーが全力投球する姿を描き,最新のOSが生まれる瞬間を捉えた作品であると同時に,大規模なプロジェクト特有のスリルと興奮を,余すことなく伝えた名著です。

 余談ですが,ソフト開発のドキュメンタリーであるこの本と双璧を成す,ハード開発のドキュメンタリーとして「超マシン誕生」があげられます。本国アメリカでは単なるコンピュータ開発物語としてではなく,ピューリッツァー賞を受賞したノンフィクションとして,現在も賞賛されロングセラーを続けています。いずれも復刻版が出た現在,この2つはコンピュータに関わる人なら読まねばならない本でしょう。

 私は,カトラーという有名人の個性に惹かれてこの本を面白く読みましたが,ソフト屋として百戦錬磨の猛者である嫁さんは,大規模プロジェクトへの妙な親近感から,その臨場感がたまらないといいます。

 私はこれをスキャンしてPDFにしてあるのですが,嫁さんが久々に読みたいと言い出しました。通勤途中で読みたいという事だったので私のKindle3を貸してあげたところ,想像以上に好印象だったようで,自分のマシンを買おうと言い出しました。

 Kindle3は安価で,入手も難しくありません。しかし,初期不良や修理などのサポートが国内で受けられず,これが負担になるため私は他の人にはお勧めしていません。

 代わりに私が話したのが,SONY Readerです。

 Kindle3とReaderとは,できる事出来ない事の違いはもちろん,そのコンセプトも全然違う端末ですが,自炊したPDFを読むという事に限って言えば,そんなに違いはありません。800x600ドットのe-inkパネルはPRS-650なら6.5インチでKindle3と同じです。

 内蔵のストレージにPDFを突っ込めば良いだけで,この点での使い勝手に差はありません。同じ世代のパネルですし,それ程表示品質に差もないでしょう。

 ソニーのポイントもいくらか持っていた嫁さんは,私が絶賛するKindle3の向こうを張って,Readerを買いました。PRS-650,6.5インチの「Touch Edition」です。

 日曜日に届いたので私も少し触らせてもらいました。以下その感想です。先に結論だけ書いてしまうと,自炊した本の受け皿としては,Kindle3とDXの圧勝です。

 Wi-Fiなどの通信機能,キーボード,amazonかReaderStoreか,対応フォーマットの違いや,WIndows専用かプラットフォーム非依存かなど,カタログを見比べれば分かることについてはここでは触れませんが,それらを抜きにしてもKindleの勝ちだと思います。

 なお,データはScanSnapS500を使ってスキャンしたPDFで,2値は600dpi,グレースケールは300dpiでスキャンしてあります。設定は文字を太くする以外,デフォルトのままです。大きさは文庫からA5のハードカバーまでの数種類ですが,B5より大きな画像やカラーの画像は扱っていません。


・第一印象

 色はブラックを買ったのですが,大変にスタイリッシュで格好はいいです。金属製の筐体はヒンヤリするため「本」らしくないと書きましたが,そのソリッド感は決して不愉快なものではなく,「本」とは別の物,と考えてしまえれば,そんなに否定的にはならずに済むでしょう。

 KindleはとてもカジュアルでTシャツにジーパンのようなものです。Readerはノーネクタイでスーツという印象で,どっちを「かっちょいい」と思えるかは完全に趣味の世界だと思います。私はGeekなKindle3が大好きです。

 Kindle3のようにキーボードがなく,スッキリしたデザインですが,タッチパネルのせいでパネルが随分奥にあって,画面の縁の高さが数ミリあることが,画面を覗き込むような感覚が残念です。これはKindle3が圧倒的にいいですね。


・e-inkパネル

 kindle3と同じ世代の「PEARL」を搭載していると聞いていたので,余り気にしなかったのですが,比較のためKindle3と並べてみると,全然違うものです。

 まず,背景の白色が全然違います。Kindle3は本当に白いのですが,Readerはやや黄色みがかっています。結果として,ぱっと見た時のコントラストに大きな差を感じ,Readerの画面が「なにやら薄暗い」という印象を持ってしまいます。

 文字色である黒色にそれ程の差はありませんが,やっぱりまぶしいような白色であるkindle3の方が綺麗だと思います。

 ただ,実際の紙の色に近いのはどっち,と言われればそれはReaderであり,もしもこの色味が紙に近づけたこだわりの結果であったなら,なるほど納得出来る話ではあります。長時間の読書で疲れないかも知れませんし,明るい部屋ではKindle3の方が見にくい可能性もあるでしょう。

 最終的には好みの問題になるように思いますが,今のe-inkでも紙にはまだまだ遠い表示品質であり,色味を合わせることでもしもコントラストが下がっているなら,そういう調整はまだ早いというのが私の感想です。


・パッチパネルと操作感

 Touch Editionと名前が付いているだけあって,パネルを直接触るという直感的な操作を実現しているのは,Kindleシリーズにはない特徴です。

 本を選ぶ,ページをめくる,文字を入力するなど,画面を直接触って操作することは,確かに理想だと思います。しかし,Readerに限って言えば,e-inkの描画速度が遅いことや全体のレスポンスがやや緩慢であることから,タッチパネルの利点を生かせていないと感じました。すぐに反応がないので,本当に押したのかどうか分からないのです。

 加えて,よく言われるパネルの汚れは想像以上にひどく,大変目障りです。

 タッチパネルになったことで,ハードキーが大幅に整理されてしまい,BackボタンやMenuボタンもタッチパネルで操作しなければならないため,1つ前の画面に戻るとか,やり直したい時にさっと操作できず,イライラします。これは嫁さんも同意見でした。

 ページめくりのジェスチャーは,指を横方向にスライドさせるものです。Kindleは本体の左右の縁に付いたボタンを押すことでページをめくりますが,私はこの「大きな操作」でページをめくるというのが煩わしく感じました。ちょっとボタンを押すだけで済むことが,なぜわざわざ指を動かさねばならないのか。肘はおろか,肩までも動かさねばならないかも知れません。片手でめくることも出来ませんから,不便でしょう。

 それが分かってか,Touch Editionでもページ送りと戻しについては,ハードキーが用意されています。ただ,嫁さんにいわせると,ハードキーがあると持ち方が制限されるので,ジェスチャーによる操作は思いの外快適だという事でした。

 実は,もっと深刻だと思ったことがあります。Kindle3の場合,右綴じだろうが左綴じだろうが,ページ送りのボタンを押せば先に進み,戻しのボタンを押せば戻ります。送りのボタンは大きく,押しやすくなっていますが,どんな本でもとにかくこれを押せば先に進むという仕様です。欧米には左綴じの本しかありませんからね。

 これがReaderではとてもややこしいです。右から左へのスライドでは,左綴じの本(つまり横書き)の場合にはページ送りになりますが,右綴じ(縦書き)の本の場合,ページ戻しになります。

 左綴じか右綴じかは,実際に綴じられた本ではすぐにわかりますが,電子書籍ではそもそも綴じていません。ということは横書きか縦書きかの違いでページの進む向きが違ってくる訳ですが,1ページがドンと表示されている次が,左にあるか右にあるかを一瞬考えてしまいます。

 本を作る方からの反発を受けることは承知の上で,電子の本についてはそもそも綴じていないわけですから,右向きの矢印で進む,左向きの矢印で戻るで統一する方がよいのではないかと,私は思います。

 なお,Readerでは,スライドする向きとページがめくられる方向を,縦書きと横書きのそれぞれで設定することが可能です。ですので電子書籍らしいページ送りも出来ます。

・処理速度と操作感

 処理速度は可もなく不可もなくで,サクサク感はない代わりに,イライラすることも少ない物でした。細かいところは別にして,速度上の操作感の印象は,Kindleとそんなに変わりません。

 ただ,SDカードの認識に時間がかかったり,メニューを出したりするときの一瞬遅れたような動きは,Kindleにはありません。ましてハードキーを持たないReaderですから,確実に操作されたというフィードバックがないため,動作が遅れているのかそれとも操作されていないのか,どちらか分からず,不安になります。無反応の時についうっかり連打すると,,あとで一気に操作が有効になって,訳が分からなくなります。これはちょっと考え直してもらいたいことです。

 
・機能

 PDFの表示くらいしか試していませんが,多様なフォーマットに対応していることは評価すべきですし,英和辞書と英英辞書も最初から搭載しています。これは便利ですよ。

 それ以前に,講談社がコンテンツを提供するというのは,もうKindleなんかとは

 音声再生は,MP3やAACにも対応しており,MP3ですらオマケ扱いのKindle3に比べるとさすが,と言うほかありません。

 メモ機能もありますし,いろいろ出来そうなことは結構ですが,Readerを買う人がメモやAACの再生をどのくらいあてにするのか,私には疑問があります。

 むしろ,このことで使い勝手がスポイルされている点が問題です。

 トップの階層(ホーム)にはボタン1つで戻れますが,本を読むにはここから書籍選択画面に移動,さらに書籍を選ぶという手順になります。

 その結果,もしも別の本を読みたい時の操作が煩雑になってしまっています。

 ハードキーを使ってまずホームへ移動すると,そこからまた書籍選択画面を選ばねばなりません。さらに別の本を選んで・・・煩わしいです。

 本来なら,戻るキーをハードキーで用意しておかないといけないでしょう。Kindleは3もDXもそうですが,BackキーとHomeキーがハードキーで用意されています。HomeキーはReaderでいう書籍選択画面ですから,とにかくこれを押せば本を選び直せます。

 Backキーは,数字入力によるページ飛ばしに対しても有効なので,飛ばしすぎた場合などのUndoとして機能します。これは安心な機能だと思います。


・余白カットとズーム

 Readerの特徴的機能として,余白カットに注目した人も多いと思いますが,まず最初にKindle3では,この機能はデフォルトです。Fit to screenを選んでおくと1画面に収まるよう拡大縮小を行ってくれますが,この時印刷のない部分のカットもちゃんと行ってくれます。

 Readerの場合,この余白カットがデフォルトではありません。そこで余白カットをハードキーの拡大キーを押して設定する事になります。

 あちこちで酷評されていますが,この余白カットを設定したあと,本を閉じて再度開くと,余白カットされない設定に戻ってしまいます。別の本を読んだあと,元の本に戻ってくると,余白カットがされないため,いちいち設定をし直さねばなりません。Kindle3では本ごとに設定が記憶されますので,こんな煩わしいことはありません。

 ズームに至ってはさらに最悪です。

 拡大キーからズームを選び,画面を拡大したり縮小したり出来るのですが,ほどよい大きさに設定した後戻ると,設定がキャンセルされてしまいます。つまり,ズームモードでだけ有効ということですね。

 ズームでは,横幅いっぱいと縦幅いっぱいを自動設定する機能もありますが,せっかくそうやって拡大した画面はその画面だけで有効に過ぎず,記憶もしてくれません。

 ページロックを行えば,その拡大率と拡大位置を維持したままページ送りが可能ですが,目障りなことに「ページロック」と書かれた大きなアイコンが右隅に出たままで,これに本文がかぶってしまうこともしばしばです。このアイコンを避けるように拡大率を下げると,ほとんど拡大できず,大きな余白が出来てしまいます。何のためのズームなのかわかりません。

 本当にこれでいいと思ってるのか,作った人は使ったことがないんじゃないのか,と首をかしげたくなる最大の欠点が,これです。わずか800x600しか画素がないのですから,もっと大事に使いたいです。

 Kindle3はこのあたりはごく当たり前の仕様になっていて,余白カット,ズームは本ごとに記憶してくれます。


・よみやすさ

 2値で600dpi,グレースケールで300dpiで作られたPDFを,わずか800x600ドットで表示するのですから,見にくくなるのは避けられません。

 Kindle3の場合,その見にくさをカバーするため,コントラスト調整機能があります。コントラストといいつつ,文字を太くする機能も担っており,特に2値のデータの場合は,PCでの事前の加工を必要としないくらい,読みやすい表示を得ることが可能です。

 グレースケールの場合は文字も階調を持つので,文字が薄めに出てしまい,細い線などは消えてしまうことがあります。この場合,PCによる事前の処理が不可欠です。

 Readerの場合はどうかというと,2値でもグレースケールでも文字が細く薄く見にくいです。それで,表示品質の設定で調整を試みますが,どれもかえって見にくくなる設定ばかりで,結局標準が一番ましという結論になってしまいました。カスタムという明るさとコントラストを自由に調整出来る設定もありますが,あまりに操作性が悪く,またどうすれば最適点になるかがさっぱり分からないので,まるで使い物になりません。

 画像処理のアルゴリズムによる違いでしょうが,結局読みやすくなるかならないかが全てなわけで,標準以外は全滅なんて,これ本当に試したのかと,2つ目の首をかしげたくなるポイントです。

 この段階で,私は嫁さんにReaderを買わせたことを,後悔し始めました。

 グレースケールについては,そのままのデータではKindle3もReaderも同じように読みにくいです。よって,PCで前処理が必要になります。


・メモリカード

 内蔵のストレージが約1.4GB,これにメモリースティックとSDカードのスロットが用意されているのが,PRS-650の最大の売りだと思います。Kindleにはメモリカードが使えませんので,いっぱいになったら本体から消さねばなりません。

 低価格化の激しい大容量メモリカードを入れておけば,自分の蔵書は全て入れておけるかも知れず,これはKindleを圧倒するメリットだと思います。

 ただ,メモリースティックはもういらないでしょう。

 ところで,SDカードへのPDFのコピーですが,別に専用のソフトを使う必要はなく,マスストレージでマウント出来るので,普通にマウントしたSDカードにPDFデータをコピーするだけです。どのパスにおいてもちゃんと検索されるようで,自分で管理しやすいようにする自由度はあると思います。

 Kindle3ではdocumentsとういフォルダに入れるしかなく,しかもそのフォルダの下にフォルダを作る事が許されていません。冊数が増えるとたくさんのファイルで汚くなります。これもReaderの方がよいですね。

 マスストレージでマウントしたメモリへのアクセスは比較的高速で,遅すぎてイライラするKindleDXはもちろん,大幅に改善されたKindle3よりも高速だと思います。これもReaderは良くできています。


・Windows専用であることとファームウェアのアップデート

 Readerの致命的欠点は,その用途に本質的に無関係な理由で,Windowsマシンがないと「使えない」ことです。

 マスストレージでマウント出来るので,Macでも自炊したコンテンツを読むだけなら困りませんが,それとて自己責任で行うものです。

 しかし,DRMの関係でコンテンツの購入には専用のソフトが必要で,これがWindows専用なために,うちの嫁さんはコンテンツ購入の手段が全くありません。10年前ならいざ知らず,今Windows専用というのは,メーカーも相当勇気がいったはずです。

 ここで3つ目の首をかしげたくなる点です。ファームウェアのアップデートが,Windowsからでなければ出来ません。

 いろいろ理由はあるんでしょうが,いかに自己責任だとはいっても,Windowsを使っていないユーザーにアップデートをする機会さえ与えないというのは,その姿勢を疑われても仕方がありません。

 例えばです,セキュリティ関係のアップデートがあったとします。その穴をふさぐアップデートをすぐに行わなければ深刻なことが起こる場合,Macで使っている人,Linuxで使っている人に,そうした機会がないことで,ユーザーにもメーカーにも,もしかすると第三者にも損害を出す可能性は大いにあります。

 それでも,メーカーは「Macだから,Linuxだから知りません」と言い切れるのでしょうか。

 タブレットやスマートフォンが全盛の今,PCなんか格好悪くて使えないという人が少しずつ増えてきました。こういう流れに乗るべきが電子書籍端末であるはずなのに,PC,しかもWindowsがないとアップデートすら出来ないなんて,こんなみっともない話はありません。


・まとめ

 総じて言えることは,ハードウェアとソフトの下回りは,良くできてると言うことでしょう。しかし,上位層に近いところは不満だらけです。最上位のUIや操作仕様の部分に始まり,画像の加工を行う部分あたりまで,Kindle3に勝てる部分はないのではないかと思います。

 Kindle3は今時のマシンとは思えないほど殺風景で,文字中心のUIですが,本を読むという単機能に絞ったことが功を奏し,それで別になんの不満もありません。

 表紙をサムネールで表示する機能はKindleにはない楽しい機能ですが,時間がかかる,一覧性に乏しい,そんなに綺麗に表示されるわけではないことで,コレクション魂を揺さぶられるわけでもなく,慣れてくるとかえって面倒になりました。

 まだまだ改良が進み,アップデートも行われる事と思いますが,伸びしろがあるという期待と考えておきたいと思います。

amazonは噂のタブレットに集中しているのか,Kindleには新しい物も出ませんし,アップデートすら行われていません。安定しているし不満もないので別に構いませんが,kindleが足踏みをしている今こそ,Readerが存在感をアップさせるチャンスです。

 それと,ファームウェアアップデートについては,全ての購入者を対象にして欲しいと思います。WIndowsを使っている人以外は,アップデートする資格すらないというのは,考えて直して欲しいと思います。

放射能レンズ続報とDoseRAE2との比較

 先日,ふとしたことから作ったガイガーカウンターを使って,他に放射線を発するレンズがないか,調べてみました。

 すると,ありましたよ,ほかにもバリバリいうやつが。

 いずれもペンタックスのTakumarレンズなので面白味はないですが,まさか全部で4本もバリバリいうレンズが見つかったので,ちょっと驚きました。

 今回見つかったのは,SuperTakumarの55mm/F1.8とSMCTakumar50mm/F1.4,そしてSMC-PENTAX50mm/F1.4です。

 SuperTakumar55mm/F1.8は廉価版のレンズで,やや小ぶりのものです。フォーカスリングには直接ローレットが切ってあります。

 SMCTakumar50mm/F1.4はES2の標準レンズとしても使われたもので,当時最先端のマルチコーティングに開放測光用の連動ピンを備えた,Takumarとしてはフルスペックのレンズです。フォーカスリングにはゴムが巻いてあり,次世代を彷彿とさせるデザインですが,光学設計が新しくなっているわけではありません。

 そして最後のSMC-PENTAX50mm/F1.4は,Kマウント用標準レンズの初代のもので,K2,KM,KXが出たときに用意されたレンズです。光学系はSMCTakumar50mm/F1.4からそのまま流用し,マウントをKマウントにしたものと聞いています。(なお,その後50mm/F1.4で世界標準となる6群7枚の変形ガウス型は,今回のSuperTakumar50m/F1.4が起源とされています)

 時間がなくてきちんと測定出来なかったのですが,感じとしては今回リファレンスとして多用したSuperTakumar50mm/F1.4(7枚玉)よりも少し弱いかなという印象(100から200CPM程度)でした。ただ,距離の関係も大きいですから,そのあたりをきちんと管理し,比較を結果ではありません。

 他の方の測定結果を見ていても,55mm/F1.8はあまり強くないらしく,また50mm/F1.4はSuperTakumarだろうがSMCTakumarだろうが,はたまたSMC-PENTAXだろうがあまり変わらずようです。

 SuperTakumar55mm/F1.8は,Kマウントアダプタを使ってK10Dなんかで使うと,使い心地もよいのです。55mmの1.5倍ですから82.5mm相当。これが50mmだと75mmですので80mmを越えません。光学的も欲張ったF1.4ではなく,無理をしない高画質が手に入ります。

 一般的傾向として,この手の放射能レンズはレンズが黄色く変色する「黄変」が起きます。この黄変は,撮影画像が明らかに黄色く転ぶくらいのものなので補正は必須ですが,現代にも通ずる,とてもよい画像を結んでくれることが多くの方によって述べられています。

 アルミの鏡筒は工芸品と呼ばれるほど精度高く加工されていますし,フォーカスリングのトルクも適切で,その感触も素晴らしいものです。

 あまり放射能レンズで大騒ぎすると,知識のない人が不用意に怖がって,最悪彼らから排斥を受けたりするかも知れません。ペンタックスやコニカだけでなく,KodakやLeicaのレンズにも放射線を出すレンズは存在するわけで,それらは一様に銘玉と呼ばれていますが,それらとて体に密着させて24時間過ごすなど極端な使い方をしなければ危険ということはないと言われていますし,放射線を出さないものまで含めて,オールドレンズが一網打尽に危険視されてしまえば,オールドレンズをこよなく愛する趣味人にとってはまさに死活問題といえるでしょう。

 私個人は,あまり目くじらを立てて放射線を敵視することも,大騒ぎすることもないと思っている人ですが,一方で近づかないに越したことはないという理屈には大賛成です。放射線を怖がることはないという学者の先生は知識があるからそういう話ができるのであって,知識がない我々は,やっぱり避けるしかないのです。

 もう1つ大事な事は,これらの放射能レンズは安全だと思いますけど,それを怖がっている人に押しつけるのは間違いと言うことです。趣味としてそのレンズの利点と欠点を味わっている人は,他の人に迷惑をかけたり,不愉快な思いをさせたりしてはいけないです。

 実家にもSuperTakumar50mm/F1.4が1つあります。ただしこれは8枚玉だと思われるので,放射線を出さないものである可能性もあります。(8枚玉でも放射線を出すものと出さないものがあるとのことです)

 私の印象では,この8枚玉と思われるSuperTakumar50mm/F1.4は,ちょっとピントが甘く,絞り開放では使えないかなあという印象でした。それに比べて,7枚玉の50mm/F1.4は同じ名状で売られていたレンズとは思えないほど切れがいいです。

 前回も書きましたが,でももしこのレンズの破片が体内に入ったりしたら,結構強い放射線で内部被曝することは避けられません。そういう点での危険性は高いので十分な注意は必要でしょう。

 ガイガーカウンターを作ってみると,このレンズの後玉をGM管に密着させればかなり放射線量を示しますが,5cmも離せばほとんど検出出来ないくらいになりますし,1mも離せばバックグラウンドとなにも変わりません。

 あくまで個人的な意見で,これをもって「安全」ということは絶対にありませんが,私はこのレンズと上手な距離を保ち,これからも使っていこうと思っています。黄色に変色していて,1960年代後半頃に作られた大口径レンズには国内外を問わず,該当するものが多いと思われますが,その安全性はそれぞれでご判断頂きたいと思います。

 ところで,先日知人にこの話をしたところ,やたら食いつきが良かったのでさらに話を聞いてみると,彼はおもむろにポケットから「DoseRAE2」というシンチレーション式の線量計を取り出し,見せてくれました。

 DoseRAE2,これいいですね。もし自作してなかったら,これを買っていたように思います。

 校正済みということで,値はそれなりに信用できると思うのですが,SuperTakumar50mm/F1.4を測定すると,2cmの距離で6uSv/h,密着させると12uSv/hという結果になりました。

 実のところ,自作のガイガーカウンターの値がちょっと大きすぎるので気になっていたのですが,D3372でSuperTakumar50mm/F1.4を測定した結果が200cpm程度という他の方からの報告で自作品の動作はほぼ間違いなく,uSv/hへの換算についてもDoseRAE2との比較によって,なかなかいい線行ってることがわかりました。

 高価な上,入手が難しい貴重なものを,こうして使う機会を得たことは,本当にありがたいことです。気持ちよく使わせてくれた知人のKさんに感謝です。

 これによって,自作ガイガーカウンターの客観性がある程度分かりました。測定器というものは,こうした客観性がとても重要なことなのです。

 加えて,対象物との距離の問題もあることがはっきりしましたし,放射線の測定というのはほんと難しいですね。

 結果に振り回されて,一喜一憂することは,かえって疲れてしまいますので,皆さんもご注意下さい。

この連休~MOS-FETアンプメンテ篇

 連休最後の大仕事として,自作MOS-FETアンプの電源平滑コンデンサの交換を行う事にしました。

 ある時,ヘッドフォンをつないでこのアンプの電源を入れると,かつてないレベルの猛烈なハム音がしました。耳障りでとても音楽など聴けたものではありません。

 私は直感的に,パワー段の電源の平滑コンデンサ(22000uF)が寿命を迎えたのだと思いました。容量抜けによるハムは定番の故障です。

 よくよく考えてみると,このMOS-FETアンプは1987年に作って以来,スイッチやボリュームを交換した以外に,部品の交換を行っていません。23年も経過していれば電解コンデンサは軒並み寿命を迎えているはずで,実害があってもなくても,交換しておいた方がよいに違いありません。

 ということで,22000uFで耐圧35Vの電解コンデンサを2つ買おうと思ったのですが,アキバではなかなか見つからず,あっても結構高価ということで困っていました。こういうとき日本橋のデジットなんかにいけばお手頃価格で手に入りそうなのですが。

 そこで先日アキバに行ったおり,秋月で10000uF-50Vの特価コンデンサを6個買ってきました。3個並列で30000uFです。1つ200円だったと思いますから,1200円で30000uFを2つ分調達出来たことになります。

 ラグ端子が出ているタイプではないし,バンド固定型でもないので,基板に立てて使うしかありませんから少しケースに加工も必要でしょうが,それはまあいいでしょう。それより,耐圧50Vで30000uFというコンデンサをこの大きさで用意できることもメリットかも知れません。(ついでにこのコンデンサは一応日本メーカー品,105℃品です)

 交換用のコンデンサは買ってきたものの,この強烈なハム音にはオチがあって,実は感度の高いバランスドアーマチュア型のヘッドフォンを初めてこのアンプでならした時に,それまでの低感度ヘッドフォンよりもハムが目立ったというだけの話でした。

 実際,普段使っているヘッドフォンに戻せば,ハム音はいつもの通り,それほど気にならない程度です。しかし,一度気になり出すともう止まりません。コンデンサの交換と一緒に,ハム音の対策もやってしまいましょう。


・コンデンサの交換

 コンデンサの交換は,従来の22000uFのバンド固定型2つを,立型の10000uF6個にするという大改造です。元のコンデンサのスペースにはそのまま収まりませんので,場所の確保が必要です。

 幸い,電源トランス(タンゴのMG-200です)を少し手前にずらせば,電解コンデンサ6個をマウントした基板を配置する場所は確保出来そうです。この強烈に重たい電源トランスを手前にずらし,同時に配線をやりやすくするために,向きを90度回します。配置の変更によってハムが増えないかどうかは,事前に確認済みです。

 トランスを固定するための自作のアルミ製の足を少し短く切って,場所を確保しました。この時パイロットランプのネオンランプのリード線が無理に引っ張られてしまい,あわや断線という感じでした。完成後ネオンランプが点灯しないことに気が付いて焦ることになった理由です。

 コンデンサと一緒に買ってきた穴あき基板をカットして適当な大きさにして,空いたスペースに置いてみるとぴったりです。

 この基板にコンデンサを取り付けますが,このコンデンサの足は太く,2mmの穴が必要です。コンデンサを並べて位置を決めたら,それぞれの足の部分の穴を2mmに広げます。そして合成ゴム系の接着剤でコンデンサと基板を接着しておきます。

 配線はどうしようかと考えました。作業にかかる前はエッチングして専用の基板を起こすことも考えましたが,面倒なので却下。それで穴あき基板を使った訳ですが,2mmの穴を開けたことで端子をハンダ付けするスルーホールのランドも削れてなくなっています。

 銅箔テープを使ってみるかと基板に貼り付けてみましたが,GNDに繋がる部分は銅箔テープでは面積が広く,ここはリン青銅板を端子にハンダ付けしてみることにしました。

 するとこれが結構しっかりくっつくんですね。穴あき基板はスルーホールの基板ですので,リン青銅板の裏側からも基板にハンダ付け出来ますし。それで銅箔テープを剥がし,すべてリン青銅板で作る事にします。

 足の部分に少し小さめの1.5mmの穴を開けて,足にぎゅーっとはめ込みます。この時めくれ上がったリン青銅板と一緒にハンダ付けすれば,がっちりくっつきます。放電用の3kΩの抵抗もこの基板にのせてしまい,あとは配線するときに便利なように卵ラグを基板に取り付け,四隅に3.2mmの穴を開けて完成です。

 スペーサを介してケース内部に固定すると,一部リン青銅板が接触してGNDにショートしていることが分かったのでカッターで切欠いて対策。見た目にもなかなかスマートな大容量コンデンサが用意出来たのでした。

 あとは配線をするわけですが,そんなに難しい部分の配線はありません。ただ,私は基本的に鈍くさい人なので,配線を間違えたりして何度もやり直す羽目になりました。先のネオンランプの配線も間違えてしまい,回り回って電源スイッチに並列に繋いだだけになっていました。そりゃ光るはずがありません。

 コンデンサを入れ替える前のリップル電圧に対し,30000uFに増量したリップル電圧は2/3程の大きさに減少していました。ただ,この程度の減少であれば,元のコンデンサの容量が抜けていたとは考えられないと思います。いずれにせよ,リップルは減ったわけですから,これはこれで良かったと思います。

 早速ヘッドフォンを繋ぎハムを確認してみますが,全く変化無し。ハムの原因がリップルでもコンデンサの故障でもないということになりました。


・ハム対策

 以前ハムの対策をしたときは,配線の引き回しが原因で,電源トランスの周辺や2次側の配線に信号線を近づけたことでハムが乗っていました。今回もそのあたりを疑うべく,パワー段の入力の配線を動かしてみたり,トランスの位置を遠ざけたりと試行錯誤をすると,ハムがほとんど消えるような引き回しが見つかりました。さらにドライバ段とイコライザアンプの電源の配線を信号ラインから遠ざけることで,ほとんど聞こえなくなるほどになりました。

 これで完璧だ,と喜んで電源を切ってみると,切った瞬間に左側だけブオーンと爆音でハムが出ます。1秒ほどで消えますがこれは話になりません。

 厄介な解析になるかもと覚悟を決めますが,よくよく配線をみると,パワーアンプの入力のシールド線のGNDが,片側だけ浮いています。片側だけ浮かせるのはGNDのループを防いでハムを減らす定番の作戦ではありますが,私はなにを勘違いしたか,RCAピンジャックのGNDがケースに最終的に繋がらず浮いたままになっていました。その上,パワーアンプに繋がる配線だって,シールド側は回り回って電源の平滑コンデンサに繋がっていますから,電圧の変動があるとGNDも動いて,まともにハムが出るんですね。

 とりあえず,RCAピンジャックをGNDに落としました。結果,ハムは小さく安定し,電源OFFでも静かに電源が切れるようになりました。


・調整

 そして最終工程,調整です。このアンプの調整はちょっとややこしく,初段のJ-FET差動アンプのバランス調整,ドライバ段のPNPトランジスタ差動アンプのバランス調整と電流調整,終段のMOS-FETのアイドル電流の調整です。DCサーボはかかっておらず,初段の差動アンプに出力を戻して負帰還をかけているだけです。

 深刻なのはオフセットがずれてしまい,出力に直流が出てしまうことですが,調整方法を書いた本を見ずに適当にいじっていたら,実はそれが誤りだったりしてちょっと混乱しました。

 まず初段のJ-FETのバランス調整ですが,これはドライバ段のPNPトランジスタを外して調整しないといけないそうです。別にいいんじゃないかなあと思いましたが,そういうものらしいです。J-FETの負荷抵抗の両端の電圧をLとRで比べていましたが,Lは明らかにアンバランスでした。でも今回は面倒なので,調整はしません。

 次にドライバ段の差動アンプです。まずバランスの調整をしますが,これがなかなか一致してくれません。なんとかだましだまし,電流の調整もしつつ無理矢理あわせ込みました。こんなに調整が面倒だったかなあと思うと,もしかすると故障している可能性も否定できませんが,面倒なのでパス。

 最後に終段のMOS-FETのアイドル電流を調整して完成です。この状態で出力の直中電圧を測定すると数百mVも出ているのでやり直しです。この直流電圧がゼロになり,かつドライバ段がバランスし,かつその電流量がある範囲に収まるように,半固定抵抗を調整していきます。

 なんとか左右でベストな位置を見つけて,調整を完了しました。この段階で作業開始から二日が経過していました。

 意気揚々とケースを閉じると,またハム音がします。ケースを開けるとハム音が消えるので,鉄製の上ケースが磁気を誘導するようです。困ったものですが,小さいハムなのでもう許します。

 ラックにセッティングするときの話ですが,腰を痛めつつあった私は,裏側の配線をしている最中に重いアンプを支えきれず,ずるっと滑らせてしまいました。その時ケースの角でスタックスのドライバアンプのパネルをギギギと擦ってしまい,大きな傷を付けてしまいました。つくづく私は鈍くさい男です。

 配線を終えたつもりが,どう間違ったのか,どの機器を選択してもずっとチューナーからの音がなりっぱなしです。仕方がないので1つ1つ確認しながら配線をやり直すことにします。

 ようやくすべての配線が終わり,高感度のヘッドフォンでハム音を確認します。するとまた盛大なハム音がします。今度はなんだろうと試行錯誤を行うと,原因はスタックスのドライバアンプでした。プリアンプから分岐してドライバアンプに繋げていますが,このドライバアンプのボリュームを最大にして電源を切ると,ハムが出るのです。

 電源を入れるか,もしくはボリュームを最小にするとハムが消えます。ボリューム最小は入力がGNDに落ちるからですし,電源OFFだと入力が完全に浮いてしまうからで,こういうおかしな使い方をしている以上,仕方がありませんね。でも,ハムが消える方法が見つかったことは,非常に助かりました。

 そもそも,ハムを少なくする配線方法を学んである程度出来るようになったのは,このアンプを作ったずっと後の話です。かといって今から配線を全部やり直すほどの根性もありませんし,そこまでするならケースと半導体を流用して全く新しいアンプを作り直す方が面白いでしょう。

 この歳になると,1987年という私が高校生だったときに完成して今日まで稼働し続けていることが重要に思えてきて,あまり手を入れることはしないでおこうと思ってしまうものです。

 今後のメニューとして,電解コンデンサを全て交換すること,抵抗を金属皮膜にすること,位相補償用のコンデンサをセラミックからマイカに交換すること,という定番の改造が出来ると良いかもしれません。フィルムコンデンサも,例えばWIMAのオーディオ用に交換するとか,それくらいはしたいですね。

 実はこのアンプ,ハムが減ったことでサーッと言うノイズが非常に耳に付くようになりました。この手のノイズはトランジスタと炭素皮膜抵抗だと思われますので,まずは抵抗を交換してみようかなと思います。

その後のKindle

 昨年7月にKindleDXを購入し,しばらく後にKindle3を買いましたが,その後の話を少しばかり書いておこうと思います。

 まず,KidnleDXを購入し,寝る前に本を読むという楽しみが劇的に改善された事実を書いておかねばなりません。これは以前にも書いてきたことですが,最近つくづくその有用性を確信するに至っています。

 本という,柔らかい紙の束を寝そべって読むには,それなりの工夫が必要です。KindleDXなら,タンスの角にでも立てかけて読むことも出来るし,片手で支える場合でも本当に手で倒れないように添える程度でかまいません。ページをめくるという作業もボタン1つですから,こんなにとても楽ちんなのです。

 特に寒い冬には重宝しました。布団から手を出さずに本が読めるわけですからね。

 KindleDXは画面も大きく,しかも完全な平面です。紙の本のように湾曲しておらず,比較的暗めの,しかも点光源でも,十分な見やすさを確保出来ます。画面の大きさは,取り込んだ本よりも大きく表示が出来る程ですから,文字も大きく美しく,疲れ知らずで読み進めることが出来ます。

 そして,かつては読みかけの本やこれから読む本を枕元に堆く積んであったものですが,KindleDXに切り替えてから,本が私の枕元から一掃されました。これも大きいですね。確かに買ってきた本をその日のうちに裁断してスキャンすることには,今でも抵抗があります。しかし,実体よりも内容を欲しいと思う本については,ちょっとした考え方の切り替えでどうにかなるものです。

 それに,これは少々程度の悪い古本を買っても,全く問題なく楽しめるようになることでもあります。たばこ臭く,手垢にまみれ,ホコリやカビで汚れた本は,いくらそれが貴重な本であっても,やっぱり寝る前に読むのはちょっと気持ち悪いですし,寝る前に手を洗ってこようと思うものです。

 でも,こういう理由で古本を敬遠してしまうと,絶版の本を読む機会が失われますし,あるいは安価に本を手に入れる事も出来ません。特に古本は,程度の悪い本ほど安いですから,中身が無事なら安い方が良い,と言う選択が出来るのは,やはり購入直後にPDFにしてKindleで読む事が出来るからです。

 だから,私はここ半年ほど,随分古本を買うようになりました。古本が通販で買いやすくなったことも大きいですし,実物を見ずに通販で古本を買っても,中身が無事な程度であればそれでいいと思えるから,特に不安も感じません。

 KindleDXは大きく重たいので持ち運びには適していません。家で読む,それも布団の中で読むということに威力を発揮していて,すでにKindleDXを使う事が日々の習慣になっているのです。

 一方のKindle3ですが,こちらの稼働率は低いままで,ほとんど使っていないような状態です。

 当初,kidleDXとKindle3の両方に同じコンテンツを入れておき,KindleDXを寝る前に使い,Kindle3は通勤に使おうと思っていました。こうすると,ハードカバーの大きい本を,家の中と外を意識せずに読む事が出来ると考えたからです。

 しかし,しばらく通勤で使って見ても,やはり画面が小さく見にくいのです。また,周囲の人の視線がちょっと気になり出しました。それで「蒼穹の昴」を文庫で読み始めた時に,文庫本というフォーマットの絶妙さを改めて認識するに至り,モバイルで読むには文庫が最適,と言う結論になってしまったわけです。

 実際,文庫本の方が安いしいろいろな種類の本が手に入ります。この本を読んだらKindle3に戻ろう,と思っていても,次から次へと面白い文庫本を見つけてしまうので,いつまでたってもKindle3には戻らず,ほとんど使うことがなくなっているのです。

 とはいえ,休日の移動など極端に荷物が少ないときの暇つぶしには重宝しますし,帰省など長期滞在の時にもとても便利です。そういうときにKindle3の出番がやってきます。

 ということで,現在のところKindleDXは毎日必ず使っていますし,Kindle3はごくたまに使うという感じです。KindleDXはもう手に馴染んだブックカバーのような親しみがあって,一日の締めくくりとしてKindleDXの電源を切り,読書灯を消して眠りに就くというプロセスが,もう当たり前になっています。

 そういえば,私のKindleDXのスクリーンセイバーは,いろいろな書店のブックカバーをスキャンしたものです。電源を切る度に縁のあった本屋さんのカバーが次々と出てくるのは,とても楽しいものです。Kindle3には自家製のスクリーンセイバーを表示させてはいませんので,その点でも,まだ手に馴染んでいないブックカバー,という感じでしょうか。

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