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MacBook Air 2025 M4に買い換えました

  • 2025/11/05 15:32
  • カテゴリー:散財

 これまで使っていたMacBook Airは2020年発売のM1で,発売と同時に注文し12月から使い始めました。13インチで8MB/256GBの一番安いモデルだったのですが,まだ円高だったこともあり,10万円ちょっとで買えたことが今となっては信じられません。

 今回買ったのも13インチのMacBook Airですが,M4搭載の現行機種で16MB/512GBですので,GPUも10コアとなりますが,お値段は194800円と一声20万円にもなります。

 買い換えた直接の理由は,音楽制作環境を整えるなかでストレージが一杯になってしまったことですが,今このタイミングで買い換えないと古いMacBook Airの買い取り金額が二束三文になるだろうという焦りもありました。

 AppleM1という素性の分からない謎のCPUの将来性を盲目的に信じ,発表と同時にMacBook Air2020を買って5年が経ちました。

 CPUの変更という大きなリスクに私は賭けたわけですが,想像を遙かに超えた性能の高さに当時驚きましたし,5年を経てほとんどのソフトがAppleSiliconネイティブになりました。

 そしてこの5年間,ちょうどコロナ禍にあり家にいる時間が長くなった毎日を,共に過ごしてくれた頼もしい相棒でした。まさに一緒に駆け抜けた感じです。感謝しかありません。

 発売と同時に買った私は,いわば評判が定まる前の人柱です。しかし結果は大成功で,5年経過した今もパワー不足を感じません。この使い心地のマシンを10万円で買うことは円安の進んだ今やあり得ず,使い潰すのが一番良い選択肢ではないかとも思っていました。

 ただ,バッテリーの性能は否応なく低下しますし,ストレージも換装できませんから,どこかで必ず限界が来ます。5年はマシン買い換えの目途でもありますし,今後値段が下がることも難しいだろうという事で,M4のマシンを買うことにしたわけです。

 繰り返しになりますが,今回購入したのは,13インチMacBook Airの2025年モデルです。16GB/512GBで,GPUも10コアになる竹モデルになります。お値段が194800円とMacBook Proに迫るお値段ですが,MacBook Proにしなかった理由は後述します。

 今回の買い換えは,10月末に搭乗したMacBook Proの14インチモデルを見た事がきっかけでした。M5が搭載され16GB/512GBでも248800円というのはかなり魅力的で,同スペックのAirとの価格差を考えると,絶対こっちだなと思っていました。

 しかし,私がMacを買うときには大きな問題があります。キーボードです。USキーボードにこだわっている私は,いちいちカスタマイズをしないといけないのです。

 なので私はいつもAppleストアで買うことを余儀なくされていたわけですが,これも発売直後に限られた話で,半年もすれば一部の量販店ではカスタマイズを受け付けてくれますし,キーボードの交換などの定番のカスタマイズについては在庫を持ってくれていて即納だったりすることもあります。

 USキーボードのモデルが即納でポイントも返ってくるなんて,夢のようです。

 ただ,出たばかりのMacBook Proでは,まだカスタマイズも受け付けていません。どうしても欲しいならAppleストアでカスタマイズをすることになるでしょう。

 そこで他の選択肢を探してみます。ヨドバシ.comを探してみると,なんと奇跡的に13インチのMacBook AirのUSキーボードモデルの在庫が見つかりました。

 のちの我が家にやってくることになるこの在庫は,10コアGPUで16GB/512GB,色はミッドナイトで1948800円で売られていました。USキーボードのモデルが明日届く・・・これは魅力的です。

 55000円の差は,憧れのProを標榜するMacBookであり,かつM5という最新のCPUを搭載するモデルであれば十分に小さいと思ってましたので随分悩んだのですが,初代のM1だって十分現役が務まるのに,Proであること,しかもM5であることを実感することがどれだけあるだろうと考えた時,やっぱり大きな金額の差だなと冷静に考え直しました。

 それより,USキーボードのモデルが今すぐ手に入ること,最新のMacBook Pro(と初代のM1のMacBook Air)を見ると,ちょっと割高だなと思いつつも,私が必要としている512GBのSSD搭載というスペックのMacにおける最安値のモデルであることを考え,買うことにしたのです。

 そうそう,私は色にはこだわりがなく,むしろその時に手に入る色を楽しむ人です。ミッドナイト,初めての色ですが面白そうじゃないですか。

 さて,約束通り翌日に届いたMacBook Airですが,いつものようにファーストインプレッションです。


・外観

 M2のMacBook Airからデザインが変わったので,M1を使っていた私はこのデザインが初めてです。Airといえばくさび形という私にとって。この弁当箱のようなもっさりしたデザインは普通過ぎて,Airであることを主張していないなあ,という印象です。

 とはいえ,パッと手に持った感じはAirそのものです。カバーを付けてしまえば流麗なくさび形もスポイルされてしまいますから,これはこれでいいのかも知れません。

 キーボードもこれまでとそれほど変わらず,若干しっとりとした感じがあるものの,大きく打鍵感を変えるような物ではありません。

 最上段のファンクションキーが大きくなっているのが美しくないと思いましたが,ESCキーが大きくなっているのは歓迎です。

 これまでのM1モデルでは,充電はUSBコネクタで行うことになっていました。貴重なUSBが充電ごときで埋まってしまうことに不満がありましたが,今回のモデルは,充電はMagSafe3として独立し,USBは温存されることになりました。しかも,従来通りUSBからも給電できるので,拡張性も充電の便利さも両立できて便利になりました。


・LCD

 M1のMacBook Airとちがい, LCDは角が丸くなっていて,カメラをよけています。その分狭くなって,かつ見にくくなるだろうと思っていたのですが,画面が狭くなった感じはしません。調べてみるとピクセル数が減ったわけではなく,LCDをカメラの位置まで広げたということで,むしろ広くなっていました。

 カメラを避けるということについても,この場所はメニューバーなので,コンテンツを見るわけではありません。メニューバーならOSの支配下にある訳ですし,統一された使い勝手を提供してくれているからか,思ったほど違和感を感じませんでした。

 それから,色も良くなっていますよね。私はいつも,どのマシンでもカラーマネジメントを行っていたのですが, ColorMunkiが最新のOSに対応しないという現実に落胆したものの,信じてTrueToneをONにすると,カラーマネジメントを行ったLCDとほぼ同じ色味になってくれました。

 X-RITEのソフトはちょっと怪しいところもあり,出来れば使いたくないというのも本音で,TrueToneが使い物になることはうれしい誤算でした。


・音

 M1のMacBook Airもなかなか良い音がしましたが,新しいMacBook Airはもっと良くなっているようです。ただ低音が出すぎていることと,高音がさっぱり出ていないので,使い物になるかと言えば,まだまだそこまでの実力はありません。


・処理能力

 M4はTSMCのN3Eという,第2世代の3nmプロセスで作られていると言われています。M3と違い,M4はCPUコアそのものにも手が入っているらしく,行ってみればフルモデルチェンジのようなものです。

 280億のトランジスタが集積されていて,クロックはピークで4.4GHzだそうです。コアはM1から高効率声が2つ追加されて全部で10コアです。Appleは公式にはM4はM1に比べて2倍高速と言っていますが,もっと差がついてもいいんじゃないかと思います。

 L2キャッシュは20MBですが,これは28MBのM5に比べて小さく,メインメモリの帯域が120GB/sに対しM5の153GB/sであることとあわせて,重い仕事をさせた時の速度低下に聞いてきそうな気がします。

 GPUについては,私があまりGPUを使うことをやってませんので差はわかりません。加えてAIもほとんど当てにしていないので,M5のメリットはそれほどなかったかも知れません。

 体感的には,M1とそんなに違いません。新しいマシンを買うと,WEBブラウザの速度やGUIの動きでCPUパワーの向上を体感する物ですが,今回は全く差を感じる事がなく,拍子抜けしました。

 それほどM1のMacBook Airが良く出来ていたということでしょうし,今でもM1のMacBook Airが現役で使えると言うことなんだと思いますが,それでもmacOS26 TahoeのGUIが重たいのは,きっとM1には荷が重いからだと思っていただけに,M4でも大きく改善しなかったことが残念ではありました。

 ただ,重い処理でもへこたれず,涼しい顔をしてサクサクと動くところがさすがで,速度低下がない頼もしさは感じます。

 それから,ffmpegでx265をエンコードすると,M1くらべて2倍から2.5倍くらい高速です。これはなかなか大したもので,CPUのコアが増えたこと,クロックが上がった事,メモリ帯域が広がったことがこの差に繋がっているのでしょう。


・電池の持ち

 M1のMacBook Airと変わりません。電池の容量も少し増えているようですが,メールやWEBなどの普段使いでは,そんなに違いは感じません。


・WiFi

 WiFiはWiFi6Eに対応し,WSR3600BE4P/NWHの最高速である2882Mbpsでリンクします。有線が1Gbpsですから,このあたりでもう頭打ちでしょう。WiFi7には対応しませんが,うちの環境ならべつに構わないと言ったところです。


・環境移行

 環境の移行は,今回はThunderboltを使いました。最初に試みたTimeMachineからの書き戻しは,OSのバージョンが合わない(新しいMacの方が古いOSだった)ためすぐに出来ず,新しいMacを最新のOSにするためにダミーのアカウントを作ってログインが必要になるので,無理に初回起動の移行アシスタントに頼る必要がなくなったためです。(初回起動時のアシスタントではThunderboltでの移行が出来ないのです)

 移行アシスタントのアプリを,出し側と受け側の両方で立ち上げ,Thunderboltのケーブルで繋ぎます。さすがに40Gbpsフルの速度は出ませんでしたが,ピークで25Gbps程度は出ていたでしょう。あっという間に100GBを越えるデータが移行出来ました。

 これはもう,WiFiやUSB3なんかで移行をやってる場合ではないです。この用途のためだけに,Thunderboltのケーブルを1つ手元に置いておくことをお進めします。


・まとめ

 M1の時に味わった圧倒的な性能差による感動は,5年経ったM4では感じる事が出来ませんでした。普通に使っている限り,M1とM4の違いは見えにくいという事でしょうし,それだけM1がすごかった,以後の進化は少しずつだったという事がわかります。

 その意味では,M1のMacBook Airはまだまだ使えるマシンで,これを10万円で買ったことは本当にお得だったと思います。新しいM4のMacBook Airは2倍の値段がするわけですが,2倍の差を味わえますかと言えば,それは難しいでしょう。

 もちろん速度は上がっていますし,メモリもストレージも倍増ですから,重いアプリも膨大なデータもこのMacBook Airなら不安はありません。しかし,そんなシーンが誰にでもあるかと言えばそんな風にも思えず,今後エントリーモデルとしての役割も担うMacBook Airが,どんな性能でどんな価格で出てくる事になるのか,気になってきました。

 厳しい言い方をすれば,M1でぐっと底上げされたマシンパワーをOSやソフトが使い切れていないと言うことになります。見た目の美しさにCPUパワーを使うのではなく,もっと本質的な使いやすさの向上にCPUパワーを使って,M1からM4に買い換えたら自分のやりたいことにすぐに手きストレスが半減した体験が提供出来ていないというのも,心配になりました。

 加えて,Proとの差をもっと広げないといけないと思いますし,エントリーモデルであることを主張する本国での$999という最下位モデルの価格が,日本では164800円になってしまうのも,やむを得ないこととはいえ,残念だなと思います。

 そんなわけで,5年前の10万円のMacと,最新の20万円のMacで,それほど大きな差を感じる事が出来ませんでした。同じ値段でも5年経てば感動する暗いの違いがあるものだったのに,いろいろなところで停滞感を感じてしまいます。

 もちろん,器は大きく,重い処理もこなしますし,512GBになったSSDは外海に出たような開放感です。それをこれまでの同じ手触りで楽しめるのですから,そこはとても満足です。

 こういうことだと,MacBook Proを買っていたらどうなっていたんだろうと思います。サーマルスロットリングがないこと,少し画面が広がったことで,M1のMacBook Airとの価格差15万円と大きくなったことをすっと受け入れられたでしょうか。

 

2025年11月12日追記

 ヨドバシで査定してもらったMacBook Air 2020ですが,なんと49000円になりました。査定が39000円,キャンペーンが10000円で合計49000円です。かなり状態が良かったので,と言うお話も頂いたので,誠実に査定をして下さったんだなあとおもいます。
 どうせキャンペーン分だけ査定を割り引くんだろうとか,あれこれと難癖を付けて(たとえばUSキーボードだからとか)査定額を下げるんだろうとか思っていたんですが,私の間違いでした。
 少なくともAppleストアで下取りに出すよりは高いんじゃないかと思います。5年使って残存価値が約5万円というのは,11万円で購入したマシンとしてはかなり高いと思います。さすがリセールバリューの高いApple製品です。
 天下のヨドバシから5万円もの現金を持ち帰るなんて芸当は,なかなか出来るもんやないです,ほんま。

nanoKONTROL2を改造する

 nanoKONTROL2というガジェットを買いました。

 続にフィジカルコントローラという音楽制作のツールで,スライダやらツマミやらボタンが一杯ついている,物理的なコントローラです。

 ハードウェアをソフトで実現して統合した物がDAWのくせに,操作部分,つまり人間との接点はやっぱりハードウェアがよいという,なんだかおかしな話ではあるのですが,おもいおこせば1980年代,DX7を端緒としてボタンとLCDだけになったシンセサイザーが,その絶望的な音作りの面倒臭さゆえにスライダーをパラメータごとに備えた専用のプログラマーをオプションとして用意していたのと,同じようなお話だと思います。

 私もDAWを使うようになり,トラックパッドでのミキサーの操作に辛い肩凝りを誘発してしまい,フィジカルコントローラへの興味がこのところ出ていたのです。

 そこへ,microKEY Airに付属していたはずのバンドルソフトや音源のライセンスカードをなくしてしまい,探し回るよりもお金で解決するのが大人だろうと,同じコルグから出ていたnanoKONTROL2を買ったというわけです。

 でもこれ,10年ほど前に出た物がそのままのロングセラーですし,しかも当時の価格は5000円程度だったそうで,今の半額です。これだけ円安が進むとバンドルソフトの価格だけでも5000円を超えるだろうと思うので無理もないのですが,なんでも早めに買っておく方が得をするんだなと,物価高が本格的に庶民を襲う昨今の教訓にしないといけないところです。

 で,とりあえず手に入れたnanoKONTROL2ですが,これが1万円というのはちょっとどうかと思う安っぽさ。とりあえず便利になりそうですし,大きさも手頃で悪くはないのですが,これで満足かと言われればさすがに難しいでしょう。

 気に入らないのは大きく2つ。

 1つは,LEDの色,もう1つは今どきのmicroUSBであることです。

(1)左上の電源LEDが白なのは当時としては精一杯の贅沢だったのでしょうが,他のLEDが全赤というのは頂けません。せめて再生は緑にすることくらいできたんじゃないかと思います。

 そこで,フィジカルコントローラの標準色に交換を考えます。再生は緑,SOLOは黄色,MUTEはオレンジ,RECは赤とし,これ以外のLEDはオレンジで統一とします。

 幸いにも1608サイズの各色LEDが手持ちにあったので交換したのですが,黄色と緑が暗すぎて,光っているのかどうか分からない位です。オレンジもかろうじてというレベルで,赤に完全に負けています。

 そこで,LEDに入っている抵抗を下げました。もともと330Ωが入っていたのですが,これをとりあえず100Ωにします。するとオレンジはかなり明るくなって実用レベルになったのですが,黄色と緑が相変わらず厳しいです。

 ならばとこの抵抗を47Ωまで下げましたが,あまり明るさには違いが出ません。抵抗をパラ付けして23.5Ωまで下げましたが変化無しです。ダイアミックドライブですので元々抵抗は低かったのですが,さすがにこれくらい小さくしても明るさに変化がないとなると,電源電圧が3.3Vなので電流が頭打ちになるとか,そういう理由で意味がないことになりそうです。

 こうなってくると電流が少なくても明るいLEDにするのが対策で,緑色は純緑にしました。これだとさすがに明るく,赤色に負けないくらい光ります。

 しかし,黄色は高輝度タイプが手元にないので,このままとしました。白色に黄色の透明テープで対応することも考えましたが,1608の白色が全く手元にないのであきらめました。これは次回の課題です。


(2)microUSB

 個人的には嫌いじゃなく,microUSBよりはずっと気に入っていたminiUSBは,まさにこの時代の象徴であり,古くささの元凶でもあります。

 なにより,今どきminiUSBのケーブルなんて身近にはありません。ましてMacBookと直結するためのTypeCとminiUSBのケーブルなんて,探さないと入手さえ難しいでしょう。

 ならば,時代遅れのminiUSBをmicroUSBのコネクタに改装すれば解決します。

 ただ,基板のパターンまでコンパチなmicroUSBのコネクタは私の知る限りなく,当然手持ちもありません。なにより,microUSBはminiUSBに対し,オス側のサイズはそんなに変わらないのに,メス側のフットプリントがかなり小さい事が,製品の設計者にはありがたいわけです。

 私の部品箱を探すと,aitendoの福箱に入っていたmicroUSBコネクタが出てきました。これ,落とし込みタイプで,通常の表面実装の基板には使えませんし,当然アマチュアにも使い道がないのですが,私はこれを見てピンときました。

 miniUSBの代わりにこれをマウントし,配線は細い銅線で手配線するのです。手配線するなら基板に接した足よりは,基板からちょっと浮いている方がやりやすいわけで,まさに今回の作戦にはぴったりです。

 壊してしまう危険性もありましたが,最近涼しくなったこともあり,意を決して改造です。

 まず基板を壊さないようにminiUSBコネクタを外します。外れたら新しいmicroUSBコネクタの外側のスリープから出ている固定用の足を曲げて,基板に触れるくらいに調整します。

 この足の部分をminiUSBの固定用ランドにくっつけてハンダ付けします。位置を上手く調整して問題なく差し込めることもこの時確認します。

 終わったら,コネクタの端子と基板を配線します。5ピンのうち1本はIDですので,オープンかもしくはGNDですので,配線の必要はありません。オープンにしたままか,隣とくっつけてしまいます。

 案外上手くいったのでテストをすると,当然動作します。ケースに組み込んでも問題なくコネクタは刺さりますので,改造は成功です。

 これでnanoKONTROL2は,うちのMacBookとTypeC-microBのケーブルで直結出来るようになりました。

 miniUSB用の角穴がmicroUSBには大きすぎて不細工なのですが,便利さにはかないません。これですっきりしました。

 バンドルソフトもインストールし(使えそうな物はあまりなかったのですが),この件はこれで終了。環境の改善ばかりやってないで,いい加減に音楽を作らないといけません・・・

 ところで,これで気をよくした私は,他に残ったminiUSBの機器をmicroUSBに改造する計画を立てることにしました。この話は後日。

記憶に残る美化されたヤマハR100の音

 空間系のエフェクトをPRO-800やMatrix-1000にかけようと,Pocket Masterを買ってみたものの,ギターでは思いのほか楽しかった反面,本来の目的が今ひとつ達成されなかったことをうけ,新しいエフェクタを用意しなくてはならなくなりました。

 Pocket Masterが悪いのか,それとも記憶に残るヤマハのリバーブが良いのか。

 回り道をするのも面倒ですので,私が昔々に使っていたR100を手に入れる事にします。某オークションで探してみると,終了まで2時間で安い物が出ています。

 傷だらけで程度は悪そうですが,雑に使われた感じでもないですし,壊れていてもR100なら修理出来ます。安いのが正義でしょう。

 他の方と少し競争がありましたが,送料込みで3500円ほどで決着。思ったより高いなと思いましたが,ACアダプタ付きですし,仕方がないでしょう。

 調べてみると,ヤマハの80年代のリバーブは,ギターの世界で特に人気があるらしく,とあるヒット曲で耳にする,とあるスタープレイヤーが奏でる独特の音が,この時代のヤマハのリバーブでしか再現出来ないのだそうです。でもそんな音いるか?

 本物はSPX90で作られるこの音,R100でも出来ると知れてから人気も価格も上昇とのことで,それでも数が出ているから貴重品にならずにすんでいるみたいです。

 そういう事情があるとは知らず,気に入った音が出るから欲しかったR100は,久々に私の目の前に姿を現したのでした。

 手にしたR100は汚れて傷だらけで触るのも気持ち悪いレベルですが,丁寧にレストアしていきましょう。

 まず分解。出来るだけ分解したらツマミや筐体を全部ハンドソープで洗います。落ちない汚れはアルコールでさっと拭き取ります。

 ケースの両サイドが,なにやら尖った物でひっかいたような悲惨な状態でしたので,黒のつや消しスプレーで補修します。

 そして基板です。基板は一見すると非常に程度が良く,分解前の通電テストでも正常だったので,それほど手間はかからないと思います。

 まず電解コンデンサの交換。しかし4級塩の電解コンデンサが使われる前なので,液漏れもなく,容量ヌケもなくて,非常に良い状態です。いちぶバイポーラの電解コンデンサが使われているので要注意です。

 加えて2箇所,電源部にタンタルコンデンサが使われています。当時は高級な部品だったタンタルコンデンサですが,今はもう時限爆弾みたいなもので,見つけたら即交換しないと恐ろしいことになります。これは同じ容量のセラミックに交換です。

 次にバッテリーです。メモリーバックアップ用のCR2032を交換するのですが,せっかくなのでソケットにします。外した電池の電圧はまだ3Vをキープしており,35年たってもメモリーを維持するこのマクセルの電池には感動しました。マクセルすげー。

 ソケットの足はそのままでは基板に取り付けできないので1mmの穴を新たに基板にあけて,ソケットをハンダ付けします。

 そして最後にOP-AMPです。OP-AMPは音質やノイズに直接関係のある部分に使われているのですが,三菱のM5238と新日本無線のNJM4558です。

 M5238はFET入力のTL082の改良品らしく,音にも定評があるようですが,いかんせん設計も古いですし,ここは同じFET入力のOPA2134にしましょう。

 NJM4558もオーディオ用にはノイズや帯域で今一歩なところがあるので,その改良品種であるNJM4580にします。NJM4580は本当にいい音がします。幸いにしてどちらも面実装品が手元にあるので,なにも考えずに交換します。

 ここまでで筐体に取り付け,通電テストをします。同時に電源電圧を測定して問題がないことを確認出来たら詳しいテストと調整です。

 まず,BYPASSとPARAMボタンを押しながら電源を入れます。これでテストモードに入りますので,MEMORYキーのあとUPやDOWNキーでファンクションを選び,RECALLで決定します。

 まずはファンクション1のLEDです。すべてのLEDの点灯を確認したら,ファンクション2のキーに進みます。

 左から順番にキーを押すとLEDの数が増えていきます。最後にフットスイッチまで確認出来たらd2と表示されるので,次に進みます。

 ファンクション3はADコンバータのオフセットです。0.1秒おきに位相を入れ換えるように動作しますが,もしオフセットがあるとクリック音が出るので,出力にアンプを繋いでVR104を調整し,クリック音が最小になるようにします。

ファンクション4はメモリーの初期化です。電池を入れておけば内蔵メモリが元通りに復活します。

 ここから先はオーディオのテストと調整ですが,入力に1kHz,-20dBmの信号を入れ,出力に-10dBmが出てくるようにVR102を調整します。

 最後にノイズをチェックして,-85dBm以下にいなければ,VR104を少しだけ動かして範囲に入れます。あまり大きく動かすとオフセットが出てしまいますので,出来るだけ触らない方が無難です。

 と,まあここまでスムーズに行くと思ったのですが,いろいろ大変でした。

 まずノイズ。実は音を聴かずに測定器だけで調整を進めたからでもあったのですが,最後のノイズのチェックで,まさかの-60dBmというとんでもなく悪い値が出てきました。これはおかしいと音を聴いてみたところ,ビーというかギャーというか,マイコンがいかにも出しそうなノイズがはっきり聞こえます。

 さらによく聴いてみると,LEDの表示によって音が変わります。点滅すればその周期に合わせてノイズが出たり引っ込んだりするので,これはLEDの表示まわりの回路から電源に回り込んだノイズが原因でしょう。

 交換した部品はコンデンサとOP-AMPですので,順番に元に戻すというのも考えたのですが,それもまた面倒なので回路図を見ながら可能性のある部分に対策を打っていきます。

 この件の原因は,タンタルコンデンサをセラミックに交換したことにありました。タンタルコンデンサを同じ容量のセラミックに交換することは割と普通に行われているのですが,そうはいっても主波数特性は異なりますし,セラミックは電圧がかかると容量が減るという特性もあります。今回の条件では電源を綺麗に出来なかったんでしょう。

 対策はセラミックコンデンサに並列に大きめの容量のアルミ電解コンデンサを取り付けました。これで嘘のようにノイズが聞こえなくなり,最終的なスペックも-90dBmとなりました。

 次に調整の問題。dBmという単位は電力の単位で,dBm=1mWを示し,電力ですから負荷抵抗には無関係に使える単位ではあります。実際R100の出力レベルは負荷抵抗10kΩで測定するように指示があります。

 ただ,同じ1mWでも負荷抵抗が変わると電圧レベルは変わってしまいます。私が使うオーディオアナライザではdBmで出力を設定したり測定値を表示したり出来るので心配ないわ,と思っていたのですが,そのままではどうも上手く調整出来ていないことに気が付きました。

 簡単に言えば-20dBm入れて-10dBm出るようにするというのが調整のゴールです。ただ,電圧ではなく電力であり,電圧で調整をするのではないということを頭に入れておく必要もあります。

 メーカーの言うように,本当に負荷10kΩで-10dBmにするなら,1Vrmsというかなり大きな電圧に合わせることになってしまいます。一報の入力である-20dBmも,標準的な負荷である600Ωで扱いますから,実際にR100に入る電圧は一体どのくらいなのかは,測定しないとわかりません。

 私の場合,無負荷での-20dBmの電圧は0.156Vrmsでした。この電圧をそのままdBmで書くと-14dBmになってしまうので,600Ωの負荷をちゃんとくっつけて,その時の電圧で見る必要があるということです。おそらくもう6dBm下がって-20dBmになるんでしょう。

 どっちにしても,今回調整したいのは電圧ゲインであって,無理に電力で扱う必要はありません。

 ただ,最初はオーディオアナライザを無条件に信じてdBm表示で調整を試みました。試行錯誤をしたのですがどうも元の半固定の位置から大きくズレてしまうので,自分自身の解釈を疑っては何度もやり直すことになりましたが,冷静に考えればとても簡単な話です。

 -20dBmから-10dBmということは,電力比で10dBですから,10倍のゲインです。電力が10倍になるのは,電圧と電流がSQR(10)ですから,電圧が3.16倍になればいいわけです。

 私のオーディオアナライザの-20dBm出力の電圧は前述の通り0.156Vrmsでしたから,その3.16倍の0.493Vrmsに合わせるとOKです。これだともとの半固定の位置から大きく外れず,実際に使ってみても違和感はありません。

 ただ,この場合でも入力ボリュームの位置によっては,ノイズがバリバリ出ることがあります。これはかなり面倒なのですが,どうもオフセット調整とも関連がありそうで,何度かやり直して,ようやく普段使うところでノイズが小さくなるように調整出来ました。

 ということで,電気的にはこれでいいんですが,もう1つ大きな失敗をしました。LEDの窓のスモークです。

 パネルを何度か付けたり外したりしているうちに,LEDのスモークの裏側を触ったらしく,指紋がついてしまいました。気持ち悪いので拭き取ろうとしたのですが,ここでアルコールを使ったのが失敗。なんとこのスモークは,アルコールで剥がれてしまう塗装でした。

 濃いめの紫のスモークでしたので,てっきり塩ビかアクリルだとおもっていたのですが,まさか塗装とは。仕方がないので全部アルコールで剥がして吹きとりましたが,そうすると完全な透明になってしまい,LEDの下地である白色が丸見えです。

 こういう失敗をやらかすのが私の鈍くさいところで,本当に情けないことです。気を付けて触らなければこんなことにはならなかったはず。せめて水拭きで済ませればまだよかったのに,そこでアルコールなどを使うからこんなことになるんです。

 外側からは見えなく,内側からのLEDは透過するような,そんな都合の良い材料があればいいんですが,なかなかいい物が浮かんできません。

 しばらく考えてなんとか思いついたのが,LCDの偏光フィルムです。試したところ1枚では薄くて下地が見えてしまいます。そこで2枚ずらして重ねて,透過量を調整ながらスモークフィルムを作る事にしました。

 なんどもやり直しましたが,きりがないので我慢出来るレベルで手を打ちました。

 こうしてようやく完成したR100,早速実際に使ってみることにします。

 改めて音を聴いてみると,懐かしいです。そうそう,こんな音でした。アーリーリフレクションの強い音を選ぶと左右に音が広がり,PADに適したエフェクトだと当時は多用した物です。

 でもさすがに今のリバーブとは演算精度もメモリ容量も段違いに少ないですから,不自然な音の消え方をしますし,当時は気にならなかったようなノイズも耳障りに聞こえます。これ,さすがに今使うのは厳しいかもなあと思いました。

 これもまあ,個性と考えればいいのかも知れません。ヤマハのリバーブはパリッとした透明感のあるリバーブという印象で,今どきのしっとりした音とは違った個性を持っていて,欲しい音が手に入って満足です。電池も交換しましたし,これで当分使える事でしょう。

 ・・・単体のリバーブが絶滅したのは事実なんですが,実は安いミキサーにも内蔵されていることを,つい先日知りました。15000円の6chミキサーに,わりとちゃんとしたリバーブが入っているの知り,こっちの方が良かったかもなあと,ちょっと後悔しました。やっぱりデジタルリバーブは安くなっているんですね。

 

Pocket Masterを買ってみた

  • 2025/08/27 09:10
  • カテゴリー:散財

 先日PRO-800を買って,こいつを実戦投入するのに,コーラスとリバーブが必要だと感じました。さすがにリバーブ無しでは,PRO-800の音が出ている位置をコントロール出来ません。馴染ませるのか際立たせるのか,包むのか一点から放射するのか,アナログシンセサイザーには考えなくてはいけない要素が多いものです。

 私が以前Matrix-1000を使っていたときにはヤマハのR100を使っていました。一番安いデジタルリバーブだったから,というのが理由ですが,実は他社のリバーブに比べてヤマハのリバーブは綺麗にかかるので大好きでした。

 JX-8Pにはコーラスが,他のD-70やVintageKeysには一応リバーブまで内蔵されていたので,モノラルアウトのアナログシンセサイザー特有の問題として,外部エフェクタをどうするかが課題だったわけです。

 Matrix-1000も使わなくなって久しく,結局R100もSE-50も数年前に廃棄してしまったわけですが,まさか今になってPRO-800のためにエフェクタで悩むときが来るとは思いもよりませんでした。

 仕方がない,空間系のエフェクタを1つ買うか,1万円くらいであるだろうよ,と探してみたのですが,なんとまあ,新品で買える物はほとんどないのですね。愕然としました。

 以前は1Uはもちろんハーフラックのものもいくらでも売ってましたし,高価なものから安価なものまで選ぶ事が出来たはずなのに,今や絶滅しています。エフェクタといえば,もうギター用の足で踏んづけるものか,ガジェット系のものしかない有様です。

 しかも,リバーブもコーラスも単独のエフェクターとしては存在せず,マルチエフェクタの要素の1つと,随分惨めな扱いを受けています。すでに1980年代後半にそうした傾向はあったにせよ,それでも単独のリバーブには凛としたたたずまいがありました。

 かくして私は焦り,R100やSE-50を廃棄したかつての愚行を悔やむことになりました。

 冷静に考えてみると,リバーブもコーラスもわざわざハードウェアで用意しなくても,DAWのプラグインでかければ済む事です。しかし,ちょっと演奏したいときとか,ステージに持ち出すときに,一々PCを立ち上げる手間をかけるか,と言うと,やっぱり抵抗がありますよね。

 どうしたものかと腕を組んで考えた結果,1つの結論に達しました。

 PRO-800を購入したお店で見つけた,Pocket Masterというマルチエフェクタを買うことです。

 お値段8800円。ポイントでかなり安くなりそうです。

 なになに,中国はSONICAKEのギター用マルチエフェクタで,安いのに本格的な音が出てくることで話題沸騰中,ガジェット系とはいえしっかり使えるものらしいです。

 以前から話題になっていたとのことで,私は恥ずかしながらノーチェックでした。ギター用なのでモノラル入力,ステレオ出力ですから,今回の用途にも使えそうです。

 そもそもどんなエフェクトがあるのかという話ですが,目当てにしているコーラスとディレイ,リバーブも一応あるみたいです。ただ,あくまでギター弾きにとってうれしいエフェクタであり,なかでも売りはNAM機能なので,評判を真に受けると悲しい事になるかも知れません。

 でもまあ,一応ギターも弾きますし,この値段ですから,オモチャとして買ってみましょう。その感想です。

(1)外観,第一印象

 ギター用のエフェクタらしからぬ外観で,私はこういうの大好きです。縦長でごっついダイキャスト,いかにも踏めと言わんばかりのスイッチやペダルは私には「いつまで1970年代を引き摺ってるのよ」と感じざるを得ません。

 プラスチックで角の取れたかわいらしいケース,小さなカラフルなディスプレイにツマミ1つにスイッチ2つのシンプルさ。これは確かにガジェット系ですね。

 ちなみに,最近ファミコンっぽい色やスケルトンなどのカラーバリエーションが追加されたみたいです。私はグレーを買いました。


(2)操作性

 これは独特の物があるので,慣れるまで大変です。まず電源投入が最初の壁でしょう。ツマミを長押ししただけではだめで,そこから電源投入を選択して短押しという2ステップで要約電源が入ります。

 電源オフもなかなか難しく,通常操作の画面から長押しでメニューを出し,電源OFFを選んで短押しです。このメニューを出すのもなかなかわかりにくく,エディットなどの階層に入っている場合には,通常の画面まで戻らないといけませんが,その戻る方法も2つのボタンの同時&短押しです。わかるかそんなもん。

 こういう,ちょっとズレた操作体系に慣れてしまうと,案外サクサク操作できる物で,エフェクトの選択や編集も簡単にできるようになりますし,システムの設定などもストレスを感じなくなります。


(3)音

 音はですね,まずギターなら,特に欠点もなく楽しく演奏出来ると思います。良く出来ています。大きな音を広いところで出した場合にどんな風に聞こえるかわかりませんが,ひずみ系もディレイも,しっかり作ってある割に真面目すぎず,適度に遊び要素もあって,楽しいですよ。

 アンプシミュレータも良く出来ていると思います。JCのクリーントーンににコーラスとディレイなんて,本当に気分良く演奏出来ます。

 アコースティックシミュレータも追加されたそうなので試しましたが,これは今ひとつ。ZOOMの安いやつの方が,もっと強力にアコギっぽくなります。

 で,肝心のNAMですが,これがもうにやけるレベルです。私はPignoseを持っているのですが,音は気に入っているものの,近所の手前実際に使うことはほとんどありません。このPignoseのデータを手に入れてPocket Masterにロードしてみるとあら不思議,Pignoseの音が出てくるわけです。

 これはちょっと感動です。エフェクトを出来るだけ外しダイレクトにPignoseの音を楽しんでいます。


(4)使い心地

 なんといっても電池内蔵というのが便利過ぎます。乾電池もいらない,ACアダプタもいらない,と,ようやくエフェクタも今どきの仕様になりました。しかもBluetoothに対応しているので,私は試していませんがヘッドフォンもワイヤレスに出来そうです。

 少し気になったのがレイテンシです。すべて有線で繋いだ時にも,僅かに遅れが出る場合があります。弾いているうちに気にならなくなってしまいますが,それは人間がレイテンシを補正して早めにピッキングを行っているからで,褒められたことではありません。


(5)空間系のエフェクト

 私はPRO-800のために,リバーブをかけたくてこのPocket Masterを買いました。ということで,リバーブだけのパッチを作って試しましたが,正直なところ満足出来る物ではありませんでした。

 まず,基本となるアルゴリズムが少なすぎです。しかもそれぞれのアルゴリズムで調整出来るパラメータも少なすぎ,調整の範囲が狭くてなにも出来ません。

 アルゴリズムによってはタップ数が少ないのか,かなり雑なかかり方です。チャーチなどは使い物になりません。

 左右の広がりも音の消え方も中途半端であり,初期反射音も今ひとつで,残響も透明度が低いうえに,途中でブツッと切れてしまいます。いや,こっちが切れるわ。

 コーラスは実用レベルですが,JX-8PのアナログコーラスやJupuier-Xの内蔵コーラスを知るものとしては,シンセサイザーに馴染まない変なコーラスだと思います。僅かに厚みも出ますが,音が前に出てこなくなるのは致命的かなと感じました。


(6)ところがどっこい

 そんな不満だらけの空間系ですが,ギターに繋いで歪ませてアンプシミュレータを通すとあら不思議,心地よいエフェクトがかかるのです。不思議です・・・


(7)結論

 面白いです。そして生真面目ではない音は,プレイヤーとリスナーに,ワクワクするような躍動感を共有できるんじゃないかと思います。

 NAM機能は強力です。これがDAWのプラグインではなく,リアルな実機で,しかもこの値段で扱えるというのは,本当に面白いと思います。もっといろいろ試してみたいです。

 空間系は,私の期待には応えてくれませんでしたが,ないよりまし,PRO-800でもMatrix-1000でも,ちょっと弾いてみる時には便利に使うでしょう。

 ただ,ギターで使うとこんなに面白いとは思ってなかったので,ギターのお供に使うことが主になりそうな気がします。

 うーん,そうすると空間系のエフェクターを考えないといかんなあ・・・捨てなきゃよかったなあ,R100。

 

愛すべきアナログシンセサイザー,BehringerのPRO-800

  • 2025/08/26 14:57
  • カテゴリー:散財

 Behringerという,ある世界ではとても有名な会社があります。ヨーロッパで生まれて現在は中国にある,プロおよびハイアマ用オーディオ機器のメーカーです。

 かつて,プロ用の機材はとても高価で,アマチュアが趣味で手に入れることはとても出来ませんでした。アマチュア用に簡略化された安価な機材はありましたが,それでも決して安い物とは言えず,そのくせ性能はプロ用のものに全くかないません。

 私は,音楽制作を劇的に変えたこととして,電気録音,マルチトラックレコーディング,ディジタル録音に続いてDAWの誕生があると思っていますが,DAWがスタジオ機材のコストを大きく低減させたこと,そしてその結果としてホームレコーディングが一般的になったことで音楽の製作コストが大きく下がり,その価値が激変したことに論を俟たないでしょう。

 同じ視点でBehringerという会社の製品を眺めてみると,DAWに取り込む事がどうしても出来ないハードウェアを,安価に提供することを使命とするこのメーカーの役割もまた,ホームレコーディングという新しい音楽制作の文化を根付かせるに貢献したといえるのではないかと思います。

 今から20年ほど前,円高という事もあってびっくりするような値段でプロスペックの機材がBehringerから登場した時,安かろう悪かろうだとか,デッドコピーだから開発費もかかってないから安いのだとか,いろいろ悪く言う人も多かったように思います。

 事実,私も2015年にステレオ15バンドのGEQであるFBQ1502を買いました。最安の時には1万円を切っていたというこの衝撃的な価格の製品も,使ってみるとノイズも多く,スライドボリュームの感触も悪くてLEDも時々消えたりしてがっかりしましたし,分解してみると安い部品が多用され,しかも決して丁寧とは言えないような作りで,本当のプロの現場で使うのは無理だろうなと思ったものです。

 それでも,同じ物を1万円で作る事は無理な話で,そこにこそ価値があることを理解しなければならないでしょう。

 そんなBehringerも,いつの間にやら大きな会社に成長し,当時はやってなかったギターアンプやシンセサイザーもラインナップするようになりました。しかも,傘下ににCoolAudioという半導体メーカーまで持っていて,絶版になって久しいアナログシンセ用リニアICやBBDなどの復刻をやっているのですから,仮にクローンメーカーと揶揄されてもここまでやればもう拍手するしかありません。

 この会社が自ら半導体まで復刻してクローンを作るには,創業者のブレない意地が大きいのかなと思います。スタジオ機材,とりわけヴィンテージシンセサイザーに対する憧れと尊敬が,新品で,かつ数万円で買えてしまうMiniMoogを作ってしまうのでしょう。

 確かに開発費は負担していませんし,シンセサイザーの専業メーカーにとっては不当な競争を仕掛けられたように感じるでしょう。商習慣として必ずしも褒められたことはなく,時に信念というのは個人の想いとは別に,体制に抗うことそのものだったりするものです。

 ですが,Behringerの場合,シンセサイザーのメーカーに対する尊敬は忘れていませんし,喧嘩をすることを望んでいるわけでもなさそうです。そこには欲しくても買えなかったというかつての自らの悔しさを知恵と工夫で解決し,欲しい人が現実的な価格で入手出来る製品を揃えるという創業のきっかけが,今も生きているからだろうと思います。

 そんなシンセサイザー大好きなBeringerが,MiniMoogのクローンをびっくりするような価格で発売したとき,多くの人が驚きました。神格化されたMiniMoogが数万円です。しかも,形だけ似せたわけでも,その逆の音だけ似ていて形は全く別物になっているわけでもなく,音も形もMiniMoogらしさを取りこぼさず,上手いさじ加減がなされていました。さすがヴィンテージシンセが大好きな人らしい仕事だと思った人が多かったからこそ,今もクローンを作ることが出来るのでしょう。

 好評だったのか創業者の意地なのか,シンセサイザーのラインナップは増えていきます。前述したように,80年代のシンセサイザーを復刻するのに避けて通れない専用のICを半導体のメーカーまで手に入れて用意するんですから,もう本気です。

 そうして復刻されたICを使って甦ったのが,SequentialのProphet600を復刻したPRO-800です。名機Prophet5ではないのがまたBehringerらしいところで,Prophet5までいってしまうと本家のRev.4と衝突しますし,木箱など値段の下がらない要素もあって,安くなるとは言え数万円というわけにはいかないでしょう。(聞いた話では,Prophet5のボイス数を増やした物を開発中だが難航しているということです。コストもそうですけど,純粋に技術的難易度が高いという事かもしれません)

 そんなProphet600は当時Prophet5の後継機種と言われた,世界で最初にMIDIを搭載したシンセです。2VCO+VCF+VCAという構成ですが,エンベロープやLFOはソフトでやっている,まさにアナログポリシンセの第2世代といえるものです。

 Prophet5よりも随分安くなったとは言え,DX7と同時期では,価格と性能で圧倒的に見劣りし,そんなに売れなかったと聞いています。

 ですが,アナログの音の良さが見直された昨今,音の良さに定評のあるPropeht600が復刻に最適だったと言うことは納得出来るお話です。

 このProphet600の復刻版であるPRO-800,オリジナルとは大きく異なっているのが,鍵盤のない音源モジュールであることです。一方で6音ポリから8音ポリに同時発音数も増えていて,オリジナルにはなかったノイズジェネレータも搭載されています。

 しかし,音そのものはProphet600と同じ物を目指していて,VCOもVCFも同じものを搭載し,あの特徴的なProphetサウンドが再現されています。加えて,CPUの速度から来るエンベロープのもたつきなども解消されていて,シンセサイザーとしての基本性能にはちゃんと手が入っているというわけです。

 2022年に登場した時は7万円を越えていたと思うのですが,先日見ると58000円まで値下がりしていました。これ以上下がる事はないだろう(実はありました・・・)し,下手をすると品切れになるかもしれず,またVCOのチップが1つ3000円近くする(しかも現在入手困難)ことを考慮すると決して高いものではないということで,思い切って買うことにしました。

 冷静に考えてみると,VCOのポリシンセって,これまで一度も手に入れたことがないんですよ。モノシンセやDCOポリシンセは持ってたんですが・・・


 2週間ほど前に届いたPRO-800ですが,第一印象は思いのほかチープな感じです。ぱっと見ると1980年代前半のメカメカしさはあるのですが,木と見せかけたサイドウッドや,アルミ削り出しと見せかけたツマミと,触るとわかるプラスチッキーなチープさを知ると,がっかりするかも知れません。

 私はそんなことにあまりこだわらないので,さっさと音出しです。

 音を出すために準備をするわけですが,今どきMIDIケーブルなんて,若い人は使うんですかね・・・私もしばらく探し回りましたよ。

 それから,アウトプット端子が1つだけという潔さ。そう,アナログシンセは,エフェクタを内蔵していないならモノラルのアウトプット1つなんです。いいですよね。

 ヘッドフォン端子もあるのですが,これは単に両耳で音が出るようにしてあるだけの物で,なにも特別な効果は得られません。ということで,ここにヘッドフォンを差し込み,音を聴いてみます。

 うーん,なるほど。

 これがProphetの音なんですね。今まで特に意識してこなかったんですが,YouTubeで見るProphet5の音なんかと,確かに共通するものはあります。ポリシンセが珍しかった頃に,こんな音が和音で出せたらそりゃ感動するに違いありません。

 純粋なアナログ,VCOシンセらしく,16個あるVCOがそれぞれ微妙にチューニングがずれています。これがまた独特の厚みや響きを生み出すのです。DCOシンセとは全然違うとしか言えません。

 で,いきなり2時間ほど演奏してみましたが,思ったほどチューニングのずれもなく,比較的安定して演奏出来ました。やはりIC化されたVCOってのは,実用レベルのシンセサイザーをきちんと作る事ができるんですね。

 さて,早速1つ音を作ってみます。私の場合,馬鹿の一つ覚えとも言うべきシンセストリングスをいつも作ることにしているのですが,VCAのエンベロープはアタックを遅めに,リリースを長めにしたいわゆるストリングスでありながら,VCFのエンベロープは強めのアタックに短めのディケイ,サスティンは低くリリースも短めにして,レゾナンスをかけたフィルタをぐいっと動かします。

 これでフィルタの利き具合とか,のこぎり波の倍音とかをさっと確かめる訳なんですが,さすがPRO-800はProphetの直系だけに,とてもしなやかで密度の濃い音が出てきます。しかもVCOならではの音の分厚さがあるので,演奏していて楽しくなるストリングスです。

 ポリモジュレーションでエンベロープをVCOにもかけると,どこかできいたシンセブラスの音になります。PRO-800のポリモジュレーションはProphet5なんかと違ってPWMにはかからないそうで,そこが残念な所の1つなんだそうですが,私自身はそれがどれくらい音作りに影響があるのかよく分かっていないので,この段階で十分楽しいです。

 先日のMatrix-1000やMicronのように,モジュレーションの自由度が高いとどうしても音作りが難しくなるものですが,それらをうまく整理し,モジュレーションを限定して音作りのやりやすさと自由度を両立を試みるのがポリシンセです。

 その整理具合は各社の思想やモデル毎の個性から生まれるわけで,当然自分のやりたいことにすぐに届けば「いいシンセ」,自分のやりたいことが出来なければ「ダメなシンセ」ということになります。

 シンセサイザーは楽器ですから当然音の良し悪しも大事ですが,何でも出来るはずのシンセサイザーをあえて不自由にする作業こそが,シンセサイザーの開発のキモではないかと思います。

 SequentialのProphetシリーズはそのあたりが実に上手く,ブラスやストリングスと言った定番の音にもすぐに手が届きますし,ポリモジュレーションで金属音や効果音などの音を作る自由度もありますから,使いやすくて何でも出来て,しかも音がいいので今でも強く支持されるのでしょう。

 PRO-800はそのシーケンシャルの末っ子の,しかもクローンです。ですが,その思想はしっかり継承されているように感じました。これでわかった気になるのは危険ですが,確かにPRO-800を触っていると,Prophet5がなぜ名機と言われるのか,納得できる気がします。

 わかりやすいツマミの配置,出てくる音が予測可能,必要にして十分なパラメータの数,なによりよく効くフィルタに分厚い音が,このシンセサイザーでの音作りに没頭させてくれます。

 加えて,拡張機能でVCFとVCAのベロシティに対応しているのですよ。これはうれしい。昔のアナログシンセの何が悔しいかって,ベロシティやアフタータッチに未対応であることです。しかもMIDI対応ですからね。

 アフタータッチは鍵盤側の不備から未対応でも構わないのですが,どんだけ存在感のあるいい音でもベロシティには対応してくれないと,実戦で使うわけにはいかんのです。だからPRO-800もMatrix-1000も本当にいい子です。

 PRO-800はこれ以外にもうれしい追加機能があります。例えばLFOの波形です。オリジナルには矩形波と三角波しか用意されていませんが,sin波やランプ波,ランダム,ノイズまで用意されています。このランダムというのは何かを計算中の電子頭脳(!)を表現するあの音を出すときに絶対に必要となるもので,これがないともうお手上げです。(お手上げでもぜんぜんかまわんのですが)

 あと,先にちょっと触れましたが,ノイズジェネレータも搭載されています。Prophet600ではノイズジェネレータを搭載する改造が定番化してるそうですが,これを最初から搭載しているのがPRO-800です。憎いですよね。

 定番の改造と言えば,CPUの高速化でエンベロープやLFO,反応の高速化などを行うものがあるそうで,このCPUの置き換えを行っている人の意見を取りこんでPRO-800は開発されているそうです。ならば,この改造も反映済み,と言うことでよろしいんじゃないでしょうか。

 つまるところ,Prophet5と同じ傾向の音を8音ポリフォニックにし,ベロシティ&アフタータッチとMIDIに対応して,小さく軽く安くしたものがこのPRO-800なわけで,そう考えるとなんと素晴らしいシンセサイザーかと思い知ります。

 とはいえ,いいことばかりではありません。悔しいのは,操作がややこしいことです。もちろん,音作りに使うツマミのダイレクト感に不満はありませんが,それ以外の操作についてはマニュアル無しでは怖くて触れません。

 音色の記憶やツマミからアクセス出来ないパラメータの変更は7セグのLEDを見ながら行わねばなりませんが,正直これはきつい。一応オリジナルが2桁であるのに対し,PRO-800は4桁に倍増してはいますけど,表現力が乏しすぎます。

 確かにPRO-800はProphet-600のクローンですから,特徴的なシートキーや7セグLEDも引き継ぐべき要素だったかも知れません。しかし,機能は増えているのですから,無理にこの操作系にこだわる必要もなかったかなと思います。

 例えば,PRO-800ではバンクという考え方で音色メモリーを大幅に拡張しています。ただ,バンクBの01番を表示するのに,8-01ではさすがにわからんです。なんでb-01にしなかったんでしょう。

 さらにいうと,PRO-800では音色名も記憶でき,PCからも管理出来るようになっているのですが,これを無理に7セグで表示しようとするので,CPUが暴走したのかと一瞬焦ります。だからでしょうか,音色名の表示をOFFにする機能まで用意されているんですよ。

 個人的には,14セグのLEDを搭載して欲しかったです。LCDやOLEDは,キャラクタタイプでもグラフィックタイプでも,PRO-800のクラシカルな外観にはマッチしないと思うので,Prophet600の範囲で動いているうちは7セグで,PRO-800で拡張された機能については14セグで表示するようにしてくれたら,小うるさいマニアも黙ったことでしょう。

 操作系についてさらに言えば,データのエントリーのために新設されたロータリーエンコーダに難ありです。これ,クリックなしなので,どこでデータがエントリーされたかわかりにくいので個人的には許せません。可変抵抗をA-Dコンバータで拾う方式ならクリックはいりませんが,ロータリーエンコーダはデジタルの入力装置ですから,ONとOFFの区別はユーザーにフィードバックされねばならないでしょう。(時々ロータリーエンコーダをまるでアナログの入力機器のように実装した物に巡り逢うことがありますが,これは見事ですよね)


 ということで,いくつかの不満もありながらも,PRO-800は新品で買える本物のアナログポリシンセとして,最も安価で最も扱いやすいものだと言えると思います。

 この価格での2VCOの8音ポリフォニックは唯一無二の存在でしょうし,VCFはProphetゆずりで音の良さは間違いなし。

 アナログシンセの醍醐味である音色の編集は整理されたパラメータをダイレクトにツマミを回して直感的にできて,Prophetの伝統であるポリモジュレーションでシンセサイズの自由度も確保。LFO波形の追加やベロシティ&アフタータッチに拡張メニューで対応して演奏の幅も現代水準です。

 その上小さく軽く,その気になればユーロラックにもマウント出来て,こんな合理的な選択肢があっていいのかと,つくづく不思議になるくらいです。これはやっぱりCoolAudioがアナログシンセ用のICを復刻したことが大きいでしょうね。

 では,これをDAWで使うかと言えば,優秀なアナログシンセのプラグインが安価に手に入りますし,6万円も出して8ボイス1パートだけ,しかもMIDIとアナログ信号で処理することになる面倒さを考えると,強いこだわりがないと出番はないでしょう。

 ライブならこれはギターと十分張り合えますし,バンドサウンドにぐっと厚みも出ること間違いなしでしょうが,今どきのバンドでアナログシンセ混ぜるチャンスなんかあるのか?と問われれば,80年代のコピーバンドくらいしかないかも知れません。

 それでも,このつるんとした音は唯一無二です。リード,ブラス,ストリングス,ベースと,いくらでも応用はできます。それに,音作りという創造的な作業に没頭し,気が付いたら日が暮れていたという体験は,音楽を作るという一連の作業において別次元の豊かさを味わえるものです。

 つまらない音のシンセサイザーでは,何時間も音作りなどできません。操作が複雑なシンセサイザーなら音作りは苦痛な作業です。パラメータの少ないシンセサイザーだったら,底が浅くてすぐにあきてしまいます。

 PRO-800は,それらを上手くバランスした,現時点における最も現実的で魅力的な解だと思います。みなさんも買えるうちに買っておきましょう。あ,リセールバリューは期待出来ないので,死ぬまで使う気持ちで買って下さい。

 最後に,シーケンサーやアルペジエータについて。これらの機能は私はあまり興味がなく,使っていません。面白いとは思いますが,感想を述べるほどに使わないと思いますので,そこにこだわるなら別のシンセを買うか,MIDIで動かして下さい。


 ・・・ところで,クリックのないロータリーエンコーダについてなんですが,クリックありの物に交換したところ,随分使い勝手が良くなりました。秋月電子で売られているアルプスのロータリーエンコーダと置き換え可能です。電気的な互換性はもちろん,フットプリントも同じですし,シャフトの長さやシャフトとツマミとの相性もバッチリですので,そのまま交換出来ます。

 クリックがあることで,確実な操作ができることは間違いないのですが,音色の選択だけは3クリックで1エントリーになるようで,音色が切り替わるのに3回のクリックを数えないといけません。これはかなり面倒です。

 それ以外のパラメータ変更は1クリックで大丈夫なようで,さすがに操作に違和感はなくなりました。

 好みの問題もありますが,クリック無しでゆるゆると変化するパラメータにイライラする方は,交換を検討されてはいかがでしょうか。

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