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Rollei35を買ってしまった

 先日渋谷で行われた,世界の中古カメラフェアをのぞいてきました。

 実はこの日,F2の動作確認のためを含む,合計7本のネガフィルムを現像に出すために,当日で仕上げてくれるキタムラに行くことにしていました。

 混雑具合にもよるけど,と前置きをした上で,1時間ほどで出来るということだったのでお願いすることにしたのですが,問題は待ち時間に何をしていようかという事でした。

 するとまあうまい具合に,東急百貨店で「世界の中古カメラフェア」の初日でした。渋谷の街中をウロウロをするのも気が重い人嫌いの私ではありますが,こういう場合は背に腹は代えられません。

 特に,東急百貨店が閉店する関係で,この場所で毎年行われて来たこの催し物も,今回で最後になります。8階の催し物スペースは,まだ小学校に上がる前の娘と一緒に古本を見に来たことでも思い出深いところで,今回で見納めになるということも背中を押してくれました。

 先に現像のことを書いておくと,何ら問題なく1時間ちょっとで仕上げてくれました。助かりますね。

 F2の撮影結果は,インデックスプリントとネガの状態を見る限り,良好でした。露出計(特にフォトミックA)はよく出来ていて,ほとんど外していないようです。

 切れが悪くて不安だった1/2000秒も実用上問題はなさそうで,特にAi45mmF2.8Pの写りの良さが印象的でした。ただ,コマ間隔にちょっとバラツキが出ているようで,これが私の個体の問題点という事になるでしょうか。重なったり大きくあいたりということはないので,気にしなければよいのですが,そこはFヒトケタですので,綺麗に揃っていてほしいのです。

 さて本題。

 世界の中古カメラフェアをただブラブラするのものバカらしい(そりゃそうです,十分に年寄りになった私より,さらに一回りお歳を召した方々と,主に中国あたりから来られた大きな荷物を引き摺ったバイヤーの方々のるつぼに,一見さんが目的もなくフラフラするなんて馬鹿らしいにも程があります)ので,ちょっと無理にでも目的をでっち上げます。

(1)M-Rokkor
(2)MD-Rokkor およびMC-ROkkor
(3)Rollei35

 (1)はCLE用のレンズで,私の中では別格のCLEについているレンズがコシナのものばかりというのは,いささか不憫に思われたからです。今の金銭感覚ならM-Rokkorもいける!とふんで探してみたのですが,今ってもう数が減っていしまっているんですね。

 特に28mmについては写りがいいこと,Mマウントレンズとしてはそれでも安価なことで根強い人気がある上に,最近は数がめっきり減ってしまっているようです。残念な事に修理出来ないクモリが持病としてあり,良品はもうほとんどお目にかかれません。

 しかしそこは稀少品も出てくるこのフェアです。とても程度のいい28mmが出ていました。とても高価だったので完全にスルーしましたが・・・

 90mmは数もあるし人気もいまいちなので安価なのですが,いくら安くても90mmを使う事を想像出来ず,これもパス。

 (2)はミノルタの旧レンズなのですが,とても青が綺麗に出るレンズです。私は28mm,50mm,135mmと定番のラインナップを持っているので困っているわけではないのですが,28mmはF3.5ですからF2.8が欲しいなあと思っていました。

 ですが,ミノルタの旧レンズと言っても,すでにアルファ用のレンズが旧レンズ扱いで,MD-Rokkorなんて珍品扱いです。ミノルタの旧ロゴなんど,数えるほどしかお目にかかれませんでした。

 で最後の(3)です。

 昔から気になっていたのが,この名機Rollei35シリーズです。後に日本のお家芸となる世界最小を1960年代後半に成し遂げたのが西ドイツの名門Rolleiです。

 あちこちでうんちくを目にしますので説明は省略しますが,このカメラの登場でハーフサイズカメラのブームにピリオドが打たれたと言われるくらい,衝撃的なカメラだったようです。

 とはいえ,レンズもシャッターも露出計もドイツの一級品の供給をうけた高級コンパクトカメラですので,大変高価でした。その分その精密感は圧倒的で,50年の月日が流れた今も高い人気を誇っています。

 長期間にわたってシリーズ化されて販売された物としても知られていて,その分多くのバリエーションがあります。

 私はやっぱりあのシルエットにクラクラしていて,古くさいんだかそうでないんだかわからない年齢不詳のデザインに,テッサーとスローシャッターを装備した機械式カメラというという立ち位置が独特すぎて,欲しいけど縁遠い存在として認知していました。

 生産時期が長いという事は,コレクターズアイテムのビンテージものから,実用バリバリの安価な最近のものまで,よりどりみどりだと思っていたのですが,案外そうでもないらしく,調べてみると精密感があるのは初期のものくらいで,年を経るごとに低コスト化が図られて,どんどん軽く安っぽくなっていました。

 でもまあ,私はこのシルエットが欲しいわけで,変なこだわりがないのがいいんだと思って,会場をぐるっと回ってみます。

 目に付いたのは,無印の35です。相場は4万円前後。35Sだと程度の良いものは6万円から7万円という所でしょうか。

 現実にはこのくらいから選ぶ事になりそうだなあ,でも4万円ならここで買う必要はないよなあと思って歩いていると,後期の廉価版シリーズが目に入ってきます。そう,ダイアルがレンズの横に並んでいないやつです。

 35LEDという機種が21000円ほどでしたので,思い切って声をかけます。

 一通り機能が生きていることを確認しながら,お店の人と話をします。なにせ付け焼き刃で少しだけ勉強してきたRollei35の知識ですから,素直にわからないと言って教えを請います。

 普通に使うならこの35LEDで問題ないというのは事実だと思いますが,スローシャッターがないこと,レンズがトリプレットになっていることで,かなり購入意欲が落ちています。

 そしてついでに出してくれた無印35を手に取ったのが決定的でした。重さが全然違います。巻き上げの感触が全然違います。

 これはもう完全に別物です。2万円の価格差は,むしろ小さすぎると思わせるほどの違いでした。

 謝った上で35LEDを買うことは取りやめ,やはり無印35にしないとだめだと会場をもう一回りします。うーん,4万円がギリギリとして,でも4万円だとぶつけた跡があったりストラップがなかったり,なにかと妥協を強いられます。妥協するならもうちょっと安くないとなあ。

 お,35000円で無印35があります。特にぶつけた跡もなく,動作していればお買い得かも知れません。(中古カメラにおいては損をすることはしょっちゅうあっても,お買い得ってのはありません)

 思い切って声をかけ,見せてもらいます。大阪から来ているお店だそうで,心地よい大阪弁が私の心を開いていきます。

 正直によくわからないと話をすると,使い方や個体の問題点を教えてくれます。一番の問題は,ファインダーのクモリだそうです。

 確かに曇っています。でも,距離計連動でもなんでもないファインダーですので,別に私は気にしません。

 スローシャッターも狂ってはいますが動作しているし,露出計の針も動いています。かなり使い込んだ感じがありますが,レンズも綺麗ですし,すぐに撮影に使えるかも知れません。

 レンズキャップがなかったので尋ねると,向かいの別のお店から分けてもらってきてくれて,オマケしてくれました。私の相手をしてくれたのはこのお店の社長さんなのだそうですが,現金での値引きかキャップのオマケかという話になり,手に入るかどうかわからないキャップをお願いしたのでした。

 さらに電池のアダプタもオマケしてくれるということで,すでに買う気になっていた私は,結構気をよくして支払いを済ませ,会場を後にしたのです。

 自宅に帰ってから確認したのですが,やっぱ価格相応,あるいは価格以下かもなあと思って,舞い上がった自分にしょんぼりしました。

 ファインダーのクモリは,かなり気になるレベルです。明るいところではそうでもないでしょうが,暗い所ではもやーっとしていて,すっきりしません。

 それ以上に問題なのは,露出計です。なるほど針は動きます。しかし,指針が全く動かないのです。そういうものなのかなあと思っていたのですが,本来シャッタースピードや絞り,感度に連動しないと露出計は意味がないので,そういう仕組みがないというのはおかしいです。

 調べてみると,やはりツマミが機械連動で指針を動かす仕組みになっているそうで,私の個体はこの段階で故障していたことになります。

 お店の人は,責任持って修理するので任せて欲しい,と言い切っていましたが,それにしてはそんなに高いものではないし,なんやかんやで渋られるだろうとも思いましたので,とりあえず自分でなんとかすることを考えます。

 スローシャッターについても問題がありました。1/2秒は1秒くらいの長さですし,1/4秒や1/8秒は区別が付かないくらいです。これも残念でした。

 あと,ARレバー(撮影終了後にパトローネに巻き戻すときに,スプロケットが逆回転しないようにしてあるロックを外すレバーです)がききません。Rの位置にしてもスプロケットは逆回転しないです。これもいきなりフィルムを入れたら大失敗しただろう故障です。

 あちこちに分解痕もありますし,素人の手が入っているような気もしますが,中途半端な良品を4万円で買うのが良いか,どうせ手を入れるんだから多少の問題は安くなる分かえってラッキーと思うか,微妙な所です。

 前者なら問題があったらがっかりするだろうし,後者にしては35000円ですから,あまり安くなっていません。やっぱり,あまりよい買い物とは言えなかったような気がしてきました。

 せっかく涼しくなってきましたし,世界中にファンがいるRollei35ですから,じっくりオーバーホールを行って,楽しく撮影をしたいと思います。

 

MDR-M1STは次世代主力モニタの座につけるのか

  • 2019/09/06 13:08
  • カテゴリー:散財

 新しいヘッドホンを買いました。ソニーのスタジオモニターである,MDR-M1STです。

 先日出たばかりなのですが,(メディア関係者ばかりなのがきな臭いですが)大絶賛です。

 私は昔からスピーカーよりもヘッドホンで音楽を聴く習慣がある人なのですが,ながら聴きを含むリスニング用にはスタックスのSR-303を,なんらかの作業のための確認用にはT50RPmk3nを使っています。

 どちらも高解像度で周波数レンジも広く,位相の乱れがない優秀なヘッドホンで,音の傾向もよく似ています。違うのは音場の再現で,スタックスは目の前にぱーっと広がる空間的な音,T50RPmk3nは頭の中で鳴っている感じです。

 この,音の近さというのは思った以上に重要な事で,ある音に注目して作業をするのに空間的である事はより神経を研ぎ澄ます必要がありますし,リラックスして音楽を全体として愉しみたいのに,音が近いというのは疲れてしまうものです。

 用途で分けることはこのように必須とも言えますが,大事な事は違いがあって欲しいところと同じであって欲しところがあるということです。高音や低音の出方の傾向は同じであって欲しくて,ヘッドホンを交換したときに「あれっ」という違和感が一発入ることは,私はどうしても避けたいと思っています。

 位相が揃っていることはヘッドホンにとどまらずオーディオ機器に最低限必要な性能だと思いますから,やっぱり音の近さが一番大きい差だと思います。

 で,T50RPmk3nとぶつかるMDR-M1STを何故買ったかといえば,いわゆる業界標準(になるであろう)モニタを1つ手に入れておきたいということと,同じ理由で必要性を感じつつもどうしても気に入らず使う事がなかったMDR-CD900STへのリベンジです。

 業界標準のモニタを手に入れて,それで評価することは,非常に客観的な結果を生み出すための第一歩になります。自分の気に入ったヘッドホンで調整をしても,その結果を「よい」と思ってくれる人は限られます。

 かといって大多数が使っているヘッドホンなどわかりません。

 そこで,プロがモニタに使っているヘッドホンを使うわけです。これで調整を行って破綻がなければ,とりあえず「いいわけ」が出来ますよね。

 いいわけ,とはまた刺激的な言葉ですが,逆の言い方をすると自分の作ったオーディオ機器や音が業界標準のモニタで作られていないと,その段階でほとんど信用されないというのが現実です。

 もちろん,最終的には好みの問題なのでどうでもいいといえばそうなのですが,そのモニタが業界標準になっているには相応の理由もあるわけで,そこである程度追い込めたら,私にも自信が付くというものです。

 そういう理由で,宅録をする人やオーディオ機器の自作をする人の間では,好き嫌いとは別の軸で,MDR-CD900STを使う人が多いです。

 私もそう考えたのですが,一度MDR-CD900STを使ってみる機会があったときに,30秒で「これかあかん」と投げ出してしまったのです。

 耳殻を押さえつけるイヤーパッドは長時間の使用に耐えられず,典型的なかまぼこ形の周波数特性は,特に高域のつまり具合に我慢なりませんでした。

 それまで聞こえていた音が聞こえなくなったこともそうですし,私がお金がなかったころに辛抱して使っていたヘッドホンとそっくりな音だったことが,つまらない過去を想起させたからかも知れません。

 着け心地も悪く,頭にかぶると言うより頭を挟むという感覚は,非常に窮屈でした。

 私は自分の耳はもう腐っていると思っているので,音質云々を評論する資格はないと思っているのですが,それでも音の違いは区別出来る場合はそれを信じて判断しています。そしてその判断は概ね最初の10秒で決着し,逆に30秒以上聞くとわからなくなってしまいます。

 慣れてしまうんですね,スピーカーもヘッドホンも。脳が補正をかけてしまうからだと思うのですが,これを肯定するともうどんなヘッドホンでもええやんけ,となってしまいますし,補正も少ない方が疲れないと思いますから,最初に感じる違和感が少ない方が良いという判断は妥当だと思っています。さらにいうと,普段から良いものに慣れておく方がよいですよね。

 ということで,慣れという観点でスタックスとT50RPmk3nはベストなタッグだと思っているのですが,もしかするとMDR-M1STは,ここに割って入ることが出来るかもしれないという期待があったのです。

 レビューを見ていると,MDR-CD900STとは別物で違う音だとか,もっと高域が出ているとか,音が近いとか書かれています。着け心地もよいそうです。

 なら,今ひとつ着け心地がよくないT50RPmk3nを置き換えることが出来るかも知れません。置き換えることができると,自分の作品にお墨付きも得やすいですし。

 こういう長ったらしい理由で,MDR-M1STを買ってみました。

 まず最初に注意点。理由は今ひとつわからんのですが,ソニーとしてはプロ用のモデルなので通常の1年保証はしません,ということです。壊れたらどんな場合も有償ですということなのですが,これは壊れやすいという意味なのか,プロはよく壊すという意味なのか,どうも釈然としません。

 どっちにしても,無償修理期間がないことと修理費用が安くなっていることとはペアだと思う訳ですが,その事もアナウンスされていません。おそらく修理費用が安いということがないからでしょう。

 本体価格も安いとは思えず,MDR-CD900STよりも随分高価です。壊れたら買い換え,あるいは消耗品として定期的に交換,という発想で使うにも,結構厳しいかも知れません。

 まあ,単純に商流の問題でしょうけど。

 もう1つ,ケーブルが6.5mmの標準プラグしか付いてきません。一般的な3.5mmはそのままでは使えません。

 ケーブルの断線にもさっと対応出来るように,Lチャネルの片出しでケーブルを着脱できます。ケーブルはLとRがそのままで出ている4極のプラグを持っていて,バランスにも対応するのは結構なことです。

 3.5mmのジャックに繋ぎたい(DR-100mk3です)私は,6.5mmを3.5mmに変換すると邪魔になることを知っているので,ケーブルを交換したいと思っていましたが,こういうのって結構高価なので困ります。

 なにかいい方法はないかと探してみると,3.5mmの3極のプラグが両側についたケーブルがそのまま使える事に気が付いて,以後これで使っています。


 さて,装着感からみてみます。

 T50RPmk3nは重い上に剛性が低く,グニャグニャです。これを強く挟む込むことで固定し,強い側圧を軽減するために大きなイヤーパッドを使っています。アメリカンですね。

 MDR-M1STは精密機械のような出来で,剛性感もそこそこありますがなにより精度が高く,かっちりとしています。軽いですし,これだと側圧が強くなくてもちゃんと装着出来ます。

 イヤーパッドも近年のソニーのヘッドホンのように着け心地にこだわっていて,とてもよいです。ただ,ちょっと小さいので耳殻にあたってしまうことは避けられず,長時間の仕様で痛くなりました。

 このあたりはさすがソニーです。

 続けて音です。

 がっかりしたのはここからで,やっぱりかまぼこ形でした。明らかにMDR-CD900STの延長線上にある音で,MDR-CD900STに慣れた人には全く問題ない音に聞こえるでしょう。

 いくらMDR-CD900STとは別の機種だの併売するだのといっても,そこはやっぱり同じ方向です。うがった見方をすれば,MDR-CD900STを否定しきれなかったということかも知れません。

 ただ,さすがだなと感心したのは,MDR-CD900STの傾向でありながら,実に自然に高音が伸びていて,解像度が劇的に上がっているということです。

 特に高音は,いやらしい付け足しではなく,ごく自然に聞こえてきます。不思議な感覚といいますか,これまで聞いたことがない音と言いますか,とにかくこれは見事だと思います。

 だから,MDR-CD900STとの互換性は高く,違和感なく移行できるのに,これまで聞こえなかった音が聞こえるようになるのではないでしょうか。

 これが狙いだといえば,してやったりなのでしょう。

 しかし私にはあまりにも違和感がありました。MDR-CD900STを気に入らない私が,その延長にあるこの音を受け入れるはずがありません。

 それは私の好みとして置いておくとして,やはりドライバが40mmと今どきのヘッドホンとしては大きいとは言えず,どうしても小さい穴から絞り出されて耳に届いている感じがしてなりません。加えてダイナミック型特有の暴れ(というか破綻)も気になります。

 これがスタックスやT50RPmk3nのような平面振動だと,耳と言うより頭の両側からまっすぐ平行に振動されるような感じで聞こえます。全帯域で伸びやかで,雑味がないのは,平面振動が理想的に起こっていて,チャンバー内の空気が等しく加圧されるからではないかと思います。

 

 直径40mmくらいの振動面では,扇を広げるように圧力が伝わっていくのだと思うのですが,この差は特に周波数によって聞こえ方が違ってくると言う形で,聴感上意外にに大きく影響しそうな感じがします。
 

 ということで,結論です。

 MDR-M1STは,MDR-CD900STを置き換えることが可能なように配慮されています。

 MDR-M1STは,MDR-CD900STよりも大幅に良くなっていて,きちんとハイレゾに対応しているばかりか,解像度も上がっています。

 MDR-M1STは,着け心地も大幅に良くなっていて,長時間の使用にも十分耐えることが出来そうです。

 しかし,MDR-CD900STが気に入らなかった人は,MDR-M1STも気に入らないと思います。

 私は,確認用のモニタとして使う事はやめませんが,これをうちのメインにはしません。

 しかしながら,世の中ではこういう音が,色づけのない素の音として認知されているんだなあと学ぶ良い機会になりました。なるほど。

 

ルータを新調する

  • 2019/07/29 13:18
  • カテゴリー:散財

 自宅のネットワーク環境が老朽化してきました。

 我が家はインターネットへの依存が低く,21世紀初頭のまま時計が止まってしまったんではないかと思うほどなのですが,実際,高速である事よりも常時接続であることが長年求められていて,私がADSLの登場時にいの一番の飛びついたのは,速度よりも繋ぎっぱなしでも大丈夫という,従量課金ではなく定額であったことが重要でした。

 ですから,光ファイバや高速モバイル通信によってADSL加入者が減り,ADSLの設備が老朽化で維持できなくなりつつある昨今,いつまでADSLに頼ることが出来るか気が気でなりません。

 光ファイバにするのが順当ですが,維持にかかる費用が今の倍くらいかかるわけで,速度よりも常時接続を目的にしている私にとっては高価な上にオーバースペックです。

 そのうち安い接続サービスが出てくるよと思って早10年,競争はモバイルに映ってしまい,固定回線は競争がなくなりました。価格は下がらず,参入業者も増えません。

 なので,このままサービス終了までADSLにしがみつくことになるんだろうなあと思っているのですが,ここ最近,ADSL使い続けることで別の問題が出てきました。

 セキュリティの問題です。

 ADSLはすでに過去の技術です。モデムを作っていたメーカーは統廃合が続き,少なくとも国内向けに新しい製品は投入されていません。

 従って,長い間ファームウェアのアップデートが行われていません。インターネットの,それも最前線に立たされるモデム(とルータ)が,10年以上もアップデートされずそのままというのは,もう蜂蜜を塗りたくってアリの巣の前に寝転がっているようなものです。

 そのアップデートも,メーカーの撤回もあって今後も期待出来ず,我々ADSLの人々はセキュリティリスクに晒され続けているわけです。

 実際,ここ数年,うちも外部からのアタックがひどく,ルータ0が処理能力を超えて止まってしまうこともしばしばです。特にここ1ヶ月ほどは,毎日再起動をしないと全く通信が出来ない状態に陥っています。

 さすがに対策をしないとなと思っていたところ,とうとう先日大規模な障害が発生し,再起動後も1日も持たないという事態に発展し,これはこのまま放置できないと緊急対策を取ることになりました。

 ADSLモデムは,厳密にはADSLで繋ぐモデムと,IPアドレスをもらい,グローバルネットワークとローカルネットワークを橋渡しするルータで構成されています。障害の発生やセキュリティのリスクはこのルータの部分が原因ですので,ここを新しいものに置き換えればとりあえず解決しそうです。

 我が家には,AirMacExtremeがありますし,これをルータとして使えばいいと考えたのですが,電話回線があるのが1階,従ってADSLモデムも1階に設置しなければならず,自動的にルータを1階に置く必要がでてきます。

 しかし,無線LANを1階に置くと3階からは繋がりにくくなるので,やはり2階に設置しておきたいところです。

 そんなわけで,もったいないと思いましたが,有線のルータを買うことにしました。ここでルータを独立させておけば,ADSLから別のネットワークに移行しても,無線LAN機器を入れ換えたとしても,その部分だけ交換出来るので楽でしょうし。

 で,家庭用の有線ルータなんて,もう絶滅しているだろうと思っていたのですが,SOHO向けにはVPNを手堅く実現する方法として定番化しており,今でも安価に有線ルータを買うことが出来るようです。

 TP-LINKのTL-R600Vは実売8000円ほどでとにかく安く,基本機能は十分に持っているのですが,いかんせん速度が遅く,ADSLなら問題はないですが,先々は厳しいでしょう。

 プラネックスのVR500-A1は13000円弱ですが,価格差分くらい高速なので,選ぶならこちらでしょう。

 ということで早速手配。週末に設定を行いました。

 やることはとても簡単で,ADSLモデムのルータ機能を殺し,VR500-A1のWANをPPPoEで繋ぐようにしてやるだけです。LAN側の設定は従来の設定を踏襲すればOKのはずです。

 作業そのものは10分もかからず,簡単にADSLが繋がるようになりました。ただ,電話局とのリンク速度がわからなくなってしまったのは,ちょっとさみしいところです。

 そして設定と動作のチェックです。

 NATの設定,ポートフォワードの設定などを進めていくのですが,どうしても従来の設定を引き継げないものがありました。UPnPです。

 以前のADSLモデムにはUPnP機能があり,QNAP Cloudではこれを使っていたのですが,VR500-A1にはUPnPがないようで,QNAP Cloudでエラーが出るのです。

 UPnPでの設定をなんとかしようとちょっと頑張ってみましたが,もともと植木鉢の底に鍵を張り付けておくようなUPnPを私はどうも信用することができず,これを機会にUPnPをやめることにしました。

 とりあえず使いそうなポートを手動で開放して,設定完了。テストも済ませて運用に入りました。

 VR500-A1は設定も楽ですし,速度もまずまずで,なんといっても価格がこのクラスでは飛び抜けて安いです。しかし,前述のUPnPには対応しませんし,耐久性についてはなんとも言えません。(TL-600Vは5年保証ですし,なかなか壊れないそうです)

 私は使っていませんがVPNにも対応しますし,きちんと使えれば便利なルータかも知れません。
 
 ルータが新しくなると,ネットワーク速度が確実に向上したと感じます。もっと早くに入れ換えておけば良かったと後悔しました。

 

世にも珍しい魚眼ズームAT-X107DXを中古で買う

 突然魚眼レンズが欲しくなりました。

 チェキをオモチャ代わりに遊んでいる娘が,エフェクトの1つである「Fisheye」の面白さに目覚めてしまい,私も再発見の機会を得たというのが理由です。

 「魚眼」ではなく「フィッシュアイ」で,ひどく歪んだ画像を生み出すレンズを覚えた娘は,私よりもずっと先に特殊レンズの洗礼を受けました。

 ついでにいうと,B&Wというエフェクトも再発見の対象となっていて,なんでもないポートレートが,なにかを語ろうとする意味深なものに変わることに新鮮な驚きを感じてしまいました。

 なんというか,私がモノクロで撮影していた頃というのは,とにかく枚数を稼ぐことが目的だったので,そんなに感動的な説得力のある写真を撮ることは一度もありませんでした。

 加えていうと,さすがフジフイルム。デジタルなのに,そのコントラスト,その階調には,思わず笑ってしまうほどの再現性があります。
 
 話を戻すと,私はこれまで魚眼レンズを使ったことも欲しいと思った事もありませんでした。高価ですし,ほぼ例外なくデメキンレンズなので神経質になるし,その割には使い道は限られてしまい,常用出来るレンズではないというのが,興味を全く持たなかった理由です。

 だから,PENTAX Qのトイレンズで,数千円の魚眼レンズがでた時には,真っ先に買いました。結果,面白いと思いましたし,案外使えるもんだなあと思いましたが,やっぱり常用出来ないので,一眼レフ用のまともな魚眼レンズには手を出しませんでした。

 そして,偶然見かけたのが,ペンタックスがコーティングを変更して発売した,魚眼ズームの記事でした。

 APS-C用の10mm-17mmというズームですが,10mmだと180度の対角魚眼,テレ側になると歪みが減り超広角ズームとして使えるという,面白い一本です。

 これ,トキナーとの共同開発らしく,同じ光学系のレンズが他のマウント用に,トキナーから発売されているのですが,これもペンタックスの旧製品も,10年以上前から売られるロングセラーです。(なにせ作例がD200とか,そんな懐かしい時代の作例です)

 ですので,定価はは8万円ほどですが,実売は45000円以下と安くなっています。AFもボディモーターで駆動するものですし,デザインも垢抜けていません。光学特性もずば抜けているとはいえず,この当時の平凡なものですので,今どきの基準で見れば全然ダメなんじゃないかと思います。

 なにより,APS-C用というのが厳しいです。海外版はフードが取り外せて,フルサイズでも使えるようになっているそうですが,国内版はフードが作り付けですので,ケラれてどうにも使えません。

 でも,魚眼ズームだと,ズームによって魚眼と超広角を切り替えて使う事が出来るわけで,魚眼だけではどうにも使えない状況でも,このレンズであればさっと広角に切り替えて使う事ができます。

 ズームレンズは単焦点レンズ数本分の役割をするといいますが,これこそその真骨頂でしょう。APS-Cなら17mmは25.5mm相当です。今どきこれは超広角とは呼びません。

 しかも幸いなことに,このレンズは欲しいと思っていたトキナーのレンズです。

 トキナーのレンズは,AT-X16-28mmF2.8PROを買った時,その色を大変気に入りました。あいにく,解像度が今ひとつで手放してしまいましたが,この青色には未練があり,安ければ買い直そうかなと思っていたくらいです。

 もちろん,この魚眼ズームが同じ「トキナーブルー」を出してくれるとは限りません。でも,時代的にも大なり小なり同じ方向を向いているでしょうし,少なくともタムロンのような傾向ではないと思います。

 だとすれば,この値段で,しかも広角域で,トキナーブルーが楽しめることになります。これはおいしい。

 ただ,今さらこのスペックのレンズを新品で買うのも,ちょっと勇気がいります。ということは,中古を探すことになるわけです。

 AT-X107DXという名前のこのレンズは,ロングセラーではありますが,大ヒット商品ではないでしょうし,そんなに球数があるとは思えません。でも,買った人の多くが「だめだ使いこなせない」とさっさと売りに出している可能性もあり,数は少ないけど値段は安いというレンズかも知れません。

 探してみると,中野の某店で,程度がAランクのニコン用が26000円。他に在庫はないようですし,他のお店では在庫すらありません。むむむ。

 現物を見ないままで中古を買うことは,必ず1つや1つがっかりさせられるものなのですが,いちいち中野に出向けませんし,確認したところで結局買うのですから,もう買ってしまいましょう。Aランクという言葉を信じて・・・

 届いたものは,キャップくらいしか付属品がない状態で,レンズ本体は綺麗で使用感も少ない良品でした。ちょっと当て傷のようなものがありますが,ほとんど気になりません。

 問題はフロントレンズキャップでして,フードに被せるものなのですが,分厚いアルミで出来た非常に質感の高いものなのですが,コイツの表面に傷がたくさんあるのです。

 なにか,シールでも貼り付けたものを無理に剥がして,ゴシゴシ擦ったような感じの擦り傷で,随分目立ちます。安いものならキャップだけ別に買うかと探してみましたが,あいにくアルミ製なので非常に高価とわかり,あきらめました。

 ちゃんと調べていませんがこれ,ペンタックスのFA43mmやFA77mmのキャップとよく似ています。

 手に取ってみると,これがなかなかずっしりとして,いい質感です。小型で取り回しもいいのですが,ちゃちな感じはせず,見た目に反して凝縮感があります。設計はペンタックスだということらしいですが,さもありなん,という感じがします。

 ズームもフォーカスも,可動部分も滑らかです。4万円そこそこで売っているレンズとは思えないです。

 実際に撮影してテストをしますが,光学的には問題なし。さすがに暗いですし,画像も高価なズームに比べるとさっぱりですが,そこはやはり一眼レフ用,ちゃんとした画像が撮影出来ます。

 D850はAPS-Cにクロップすると,撮影エリアの外側が黒く塗りつぶされてファインダーに投影されます。ですのでこのレンズでもなんら問題不自由を感じる事なく使えるわけですが,12mmという超広角の世界に見慣れた人でも,画面がグイーンと曲がる魚眼の面白さは,ファインダーを見ただけで感じられることでしょう。

 ということで,何枚か撮影してみます。このレンズは14cmまで寄れるありがたいレンズで,これだけ寄れれば魚眼も超広角も怖くありません。魚眼は,中央部は歪みが少なく,外に行けば大きく歪むレンズなわけですから,ぐっと寄って被写体を真ん中に据えることは必ず必要になります。

 くっつくんじゃないかと思うほどに近寄った娘の顔を撮影し,本人に見せてみると,にやっと笑ってから「フィッシュアイだ」とうれしそうにいいます。この歪みを表現手法として使うのは難しいですが,魚眼も含めた広角はとにかく「寄る」ことが基本です。

 その上で,180度言う視野角を使い,ぱーっと目の前の画像を一網打尽にするというのはなんと気持ちのいいことか。特に縦位置でいけば,足下から空まで全部入り込んできます。これは面白いです。

 機会があれば,D850をAPS-Cに固定して,このレンズだけで外に出てみたいところです。きっと面白い景色を切り取ることができるでしょう。同時に,バリエーションの少ない,どっかで見たことのあるような写真が量産されることにもなりかねず,そうしたつまらなさに,案外がっかりすることになるかも知れません。

 

instax mini LiPlayはチェキの正常進化版なのか

  • 2019/06/26 13:00
  • カテゴリー:散財

 7,8年ほど前に,正月の福袋に「チェキ」が入っていたことがありました。数千円で買える最も安いチェキの,当時の型落ち品でした。

 デジタルカメラが大きく進歩しているときで,フィルムが少しずつ店頭から消え,どこでも出来た現像が出来なくなっていき,まず真っ先にインスタント写真など消えてなくなるだろうと,そう信じて疑わなかった時代です。

 1枚1枚,じーっという音と共に紙切れが吐き出され,しばらくすると画像が浮かび上がってくるという神秘性に,面白いなあと思った事は私にもありましたが,実用性を考えても,画質を考えても,そしてコストを考えても,どうしても肯定的な気分にはなりません。

 やがて子供が生まれ,彼女が私の写真を撮っている姿を真似するようになると,一眼レフは当然として,簡単操作が売りのコンパクトデジタルカメラでさえも,子供ににとって難しい事がわかってきました。

 操作が難しいのではありません。操作によって結果がどう変わるかを,とにかくたくさん「暗記」しなければならないのです。

 電源をいれ,シャッターボタンを半分押せばAFが作動し,画面の真ん中の四角が緑色ならピントが合っていて,赤ならピントが合っていない,そこからさらに押し込めばシャッターが切れる。

 たったこれだけの事,誰にもわかると思うでしょう。

 しかし,

 シャッターボタンってなんだ?
 半押しってどのくらい押すことだ?
 ピントってなんだ?AFってなんだ?
 真ん中の四角ってなんだ?
 ピントが合うってなんだ?
 シャッターってなんだ?切れるもの?

 我々は,ある程度の基礎的知識をベースにあらゆるものを使っています。ものを作る人も,そういう基礎的知識のある人を対象にして作っていますし,そうしないととてもものを完成できません。

 でも,結局,ここでやりたいことは単純に,目の前の光景を紙に印刷したい,それだけなのです。

 その上,この難しい操作のあとには,本当の地獄が待っています。

 SDカードを取り出し,PCに転送,プリンタをUSBでつなぎ,印刷用の紙をプリンタに入れて,印刷用ソフトを立ち上げ,印刷する。おっと,インク切れ?筋が入るけどどうしたらいい?

 もうくどくど書きません。

 繰り返しますが,やりたいことは目の前の光景を紙に印刷したいだけです。

 こんなの屁理屈だ,現実的にこんなに説明しないといけない人などいない,と私も思っていました。しかし,いるんですね。

 そう,子供です。

 子供だから知らないわからない,のではありません。その人にとって,初めての事だからわからないのです。子供は初めての事がほとんどです。だから子供はなめられますが,大人だって初めての事には右往左往するでしょう。

 しかし,子供も,自分がやりたいことははっきりしています。目の前の光景を紙に印刷したいのです。

 私は,小さなデジカメを子供に渡し,せめてデータとして目の前の光景を取りこむところまではやってもらおうと頑張りましたが,何もしらない,すべてが初めての子供には,説明不能である事を思い知り,そこに立ち尽くしてしまいます。

 無理だ,子供には無理だ。

 しかし,私の前に一条の光が差し込みます。

 チェキです。

 レンズを引っ張れば電源が入ることで,電源とは,の説明が不要。
 パンフォーカスなのでAFもピントの説明も不要。
 シャッターボタンに半押しがないので,半押しの説明が不要。
 カメラを相手に向けて「唯一の」ボタンを押せば,紙が出てきて画が出てくる。
 電池が数年間もつ。交換したことなどない。

 すごい,すごすぎます。

 もう一度繰り返しますが,やりたいことは,目の前の光景を紙に印刷することです。デジカメだととても印刷までたどり着けないのに,チェキならあっという間に,自分のしたいことにたどり着きます。

 私は,感激しました。チェキが大好きになりました。

 そして,子供に,チェキをどんどん使わせました。

 低画質? 出力サイズが決まっているのに画質云々なんか関係ない。
 高コスト? これだけ簡単なのは,難しい処理がフィルム側に入っているから。

 そして,このシンプルな「ボタンを1つ押せば紙にその光景が印刷される」ことを実現する仕組みを作ることは,案外難しい事にも気が付きます。そして最も簡単な仕組みこそが,インスタント写真技術です。

 感光,現像,定着,色の調整など,難しい事はすべてフィルム側が担います。だからユーザーは難しい事はなにも考える必要はありません。一方で,ユーザーが調整を行う余地はありません。
 
 そんなわけで,私は子供に,写真を撮影することも面白さ,ひいてはその本質である「なにをどう撮るのか」に興味を持ってもらうことにしました。そう,デジタルカメラは,写真の本質を経験し楽しむために,越えなければならない壁が多すぎるのです。

 果たして,チェキは,子供のカメラになりました。やがて,名刺サイズの印画紙があちこちに山積みになりました。

 もったいないからなんでもかんでも撮るなよ,という言葉は,チェキを与えた大人が発してはいけない言葉とわかっています。しかし,私の現実の経済状態が,この言葉をどうしても口から出るのです。

 そんなある日,ハイブリッド型のチェキが登場したというニュースが耳に入ってきます。曰く,デジタルカメラとチェキへのプリンタを一体化したものだそうです。

 私の最初の印象は「賢い人がウンウンいって考えた結果閃いた,1周回って元のところに戻ってきたアイデア」です。直接光を当てて感光させればいいようにせっかく作ってある印画紙を,なぜわざわざデジタルで撮影し,このデータを元に印刷をせねばならないのか・・・

 どうも,印画紙をデジタルで感光させたら面白そうだという思いつきから,そのメリットを後付けで考えて商品化を押し通したように見えて,それはチェキのあるべき姿ではないと思えたのです。

 この考えは今でも変わりません。しかし,現実的な問題として,デジタル写真を印刷することを考えた場合に,本体のプリンタ機構を簡単にするには,やはり紙の側に色を出す仕組みを入れるしかなく,そしてそれは今のチェキの印画紙が最適であるという事実があります。

 この時登場したハイブリッド型のチェキは,スクエアフォーマットの大型のものでした。我々が一般にチェキと呼んでいる名刺サイズのInstax miniというフォーマットではありません。

 そして先日,いよいよこの名刺サイズのフォーマットでハイブリッド型が登場しました。それがinstax mini LiPlayです。

 チェキの面白さがわかってきた私としては,フジが作るんだから印画紙の画質はもっと高いに違いない,チェキの画質が悪いのはきっと光学系がプアだからだと思っていました。事実,子供の使っていた廉価なチェキは,プラレンズです。

 真面目な光学系のチェキはどうも売っていないようで,もったいないなあと思っていた所にこのハイブリッド型の登場です。ここで初めてハイブリッド型への期待を私は持つに至ったのでした。

 instax mini LiPlayは,ハイブリッド型にしたことによる明確なメリットがあります。1つは本体が小さくなったこと。チェキは印画紙に直接露光しますので,投影面はずばりあの印画紙のサイズを持っていますから,当然光学系は大きくなります。(一方で精度はゆるくなるので,安く作る事ができるはず)

 しかし,一度デジタルにするなら,光学系は小型に出来ます。小さいCMOSセンサ(instax mini LiPlayは1/5インチです)にオートフォーカス機構やレンズなどの光学系を1つにまとめたカメラモジュールが携帯電話やスマートホン用に安く用意されているので,これを使えば小さく出来ます。

 AFのように,レンズを動かす機構が入れば,マクロモードを入れることも簡単です。つまり寄れるチェキが誕生します。

 子供が失敗する撮影の多くは,近寄りすぎでした。そりゃそうです,子供は近づいて今見ているものを撮影したいのですから。

 パンフォーカスのチェキでは60cm程度が限界で,それでは子供が手のひらに載せるような大きさのものでも,豆粒のような大きさでしか撮影出来ません。

 まして,素通しのファインダーしかないチェキで,撮影結果を正確に予想するなど難易度が高すぎます。近寄るとぼけてしまう,近寄るとファインダーの位置から被写体がズレてくる(パララックス)ということは,子供には窮屈な制約です。

 instax mini LiPlayは,寄れることがとても大きなメリットだと思います。

 プリンタ機構はすでにフジが選考して商品化しているので,得に問題になりません。極論すれば,instax mini LiPlayとはこのプリンタのどこかに,カメラモジュールを押し込んでしまえば完成するような商品です。

 消費電力が増大するので乾電池ではどのみち無理で,そうすると小型の充電池を内蔵することになります。そうするとさらに小さく出来ます。

 そしてそのプリンタについても,小型化が可能です。印画紙とカートリッジのサイズが決まっているので面積は小さく出来ないかも知れませんが,光学系に奥行きが必要な従来のチェキに比べ,有機ELで出来た印刷ヘッドを密着させて印刷するプリンタは,薄く作る事が可能です。

 小さいカメラと薄いプリンタを電線で繋いで,1つの箱に入れたものが,このinstax mini LiPlayというわけです。

 一度デジタルになってしまえば,何でもありです。ストレージに蓄え,失敗写真を印刷せずに済むのは当然として,フレームを追加したり画像を加工したりすることは,誰でも思いつくことでしょう。

 カメラの画像をPCやスマホに転送することも出来るし,PCやスマホの画像を印刷することも可能になります。

 これだけでは足りないと感じたフジは,音声をクラウドに置き,ここへのアドレスをQRコードで印刷することで,短い音声を写真に取り込む事にしました。これも新しい機能でしょう。

 それで,価格はプリンタ単体よりもちょっと安いくらいです。カメラの値段はもう無料みたいなものです。しかしその分,全体的な安物感は拭えなくなってしまいました。

 しかし,このチェキには,スマホプリンタとしての機能に加えて,高画質化というカメラにとっての本質的な改良と,ランニングコストの大半を占める印画紙の無駄な消費を抑えるというコストダウンを期待出来る製品と,私の目には映りました。

 チェキが我々家族の標準ツールとなっている現状から鑑みて,これは買うしかありません。

 予約して発売日に届いたinstax mini LiPlayですが,インプレッションを簡単に書きます。


(1)質感

 歴代最小とまで謳っている本体の大きさは,手に取ってみると想像以上の大きさに面食らいます。もっと小さく,もっと凝縮感のあるものを期待しただけに,叩くと「カンカン」と無粋な音を発する筐体に,まず最初に幻滅しました。

 実際に大きいという事もそうですが,多用された曲面とデザインの妙技によって小さく見えているはずですから,実際には見えている以上に大きいはずです。事実,大きさから来る持ちにくさまでは,隠し切れていません。

 プラスチッキーで,ああこれはやっぱりチェキ一族なんだなあと思うのですが,これだけ設計に無理をしていなければ,落としたりぶつけたりしても,壊れることなどないんじゃないかと思います。


(2)画質

 注目点である画質ですが,これもちょっと期待外れでした。本体で撮影,本体で印刷してみると,銀塩のチェキとそっくりの画質で印刷されます。

 スマホから印刷してみましたが,これもまあチェキで撮影したかのような見事な画像処理です。色合いといいコントラストといい白飛びの具合といい,チェキの雰囲気をこれほど残せるものかと感心しました。

 カメラのは500万画素と10年前の携帯電話並み,一方の印刷は312dpiで階調ありですのでかなり高画質なはずですが,カメラの画像はそれなりに綺麗でも,印刷するとチェキになります。
 
 原因が印画紙の性能によるものなのか,それとも画像処理でわざと銀塩のチェキと同じ程度の画質を落として印刷しているのかわかりません。しかし,フィルターによって画質がそれなりに変化していることを考えると,印画紙の性能の限界によって画質が低下しているとはちょっと言い切れないように思います。


(3)使い勝手

 使い勝手は悪いです。まず説明書が不親切で,手に取ってもオロオロするだけです。

 設定の一部はスマホのアプリからしか出来なくなっていますが,それがどの機能なのかは説明書には書かれていませんので,試行錯誤が必要です。

 また,広くハイブリッド型を標榜する製品の宿命である,それぞれの機能の切り替えですが,このカメラについては画像の再生と印刷に独立したボタンはあるのに,撮影モードに移行するボタンがシャッターボタンと兼用になっています。私はこれがなかなか理解出来ず,カメラモードへは電源投入時にしか入れないものだと思って,いちいち電源を切っていたくらいです。

 LCDの画質も悪く,解像度も足りなければ発色もコントラストも悪いです。なにより,視野角の狭さには閉口もので,少し横から見ると色が派手に転びます。娘は,こういう機能だと思っていたほどです。

 UIとしても,ボタンへの機能割り当てが直感的ではなく,暗記しないといけないものが散見されます。悪いことにグローバルモデルゆえボタンに付いているのはアイコンで,そのアイコンもわかりにくいものです。

 私自身が操作方法を習得するのに30分ほどかかりましたが,これを娘に教えるのにとても苦労しました。

 もう1つ,許せないのが通信についてです。

 プリンタとして使う時にはスマホとBluetoothで繋ぎます。しかし,同時にペアリングしておける台数が1台に限られているのです。

 複数のスマホと共有出来ず,一々ペアリングを削除しなければなりません。プリンタだけではなく,スマホの設定からも削除が必要なので,とても面倒です。

 スマホやタブレットは一人一台です。家族で共有出来ないと不便で仕方がありません。

 セキュリティ面が理由ではないかと考えましたが,スマホから可能な操作が少ないこともあり,複数のスマホのペアリング情報を残しておくことは難しくないはずです。

 もっとも,設定がスマホのアプリから行う現在の仕組みは,本体の設定状態とアプリの設定の記録とを同期させねばなりません。Aさんが設定したあとBさんが設定をいじり,またAさんに戻ってきたとき,Aさんのスマホに残っている設定状態との食い違いをどこで同期させるのか,真面目に考えないと破綻しそうです。

 個人的には,接続したスマホごとに設定を切り替えるのが良さそうですが,それだとスタンドアロンで使う時にどの設定で使うのかという問題が残ります。ということは,やっぱりスマホのアプリで設定をさせるという現在の仕様そのものに無理があったという事になるでしょう。

 もう1つ,せっかく低画素なカメラなのに,画像をPCなりスマホに転送する方法がないのです。マイクロSDで持ってくればいいのですが,なぜBluetoothで転送できるようにしなかったのでしょうか?これも疑問が残る,不便な仕様の1つです。


(4)面白さ

 実のところ,一度デジタルを経由するかどうかは,紙の写真をすぐに手に入れたいという目的に対して,どうでもいい些末な事なのかも知れません。撮影し,選んで,印刷を行うと,いつものチェキの写真が出てくるという事に,ややこしい背景は関係がありません。

 撮影は手軽に,しかし印刷はよく考えてということで,撮影と印刷が同時に起こるかつてのチェキに比べて,悩む「壁」の場所と大きさが再調整されたものと考える事ができるでしょう。

 そして,撮影と印刷の2点間には,フレームの追加とフィルタによる加工というデジタルならではの遊びがはいります。

 娘はこの2つが面白いらしく,私としてはここをもっと強化するして欲しいなあと思いました。


(5)電池寿命

 電池がすぐ切れます。娘もびっくりしていました。

 充電がUSBからになったことはよいのですが,3時間ほど充電にかかってしまい,その間は使えなくなるのに,簡単に電池が切れてしまいます。

 LCDの輝度を落とすとか,LCDをOFFにするとか,そういう低消費電力化の設定があるかと思いましたがありません。

 原理的なものは仕方がないとして,以前のチェキが,いつ電池を交換したかを忘れてしまうくらい電池が切れなかったことを考えると,今回のモデルはあまりに電池寿命が短すぎるように思います。


(6)全体として

 これはなんとも難しいカメラです。歴代最小のチェキとみるか,スマホの周辺機器とみるか,安い低画質デジカメとみるか,画像を加工できるチェキとみるか,見方によって評価は変わると思います。

 個人的には,画質と質感,大きさと電池寿命で大きく期待から外れてしまった感は否めず,それがこのカメラの魅力を半減させているのですが,嬉々として使っている娘を見ていると,そんなものはどうでもいいのかも知れない,とそんな風にも思えてきました。

 私が残念だと思った点は,おそらく次のモデルの改良点として必ず検討されることだとは思いますが,小型軽量は別にして,高画質化が果たしてチェキのユーザーの望むことかといわれれば,それは違うような気もします。

 オモチャと割り切るにはちょっと高価ですし,スマホのカメラにも画質で負けているので,カメラ代わりにはなり得ません。

 かといって半額の光学式チェキとそんなに出来る事も違ってこないわけで,私の中では,これは結局,賢い人がウンウン唸って1周回って原点に戻ってきたチェキだということに,なってしまいました。

 楽しいのは事実です。子供も面白がって毎日使っています。これが来てから家族で遊ぶことが増えました。

 ただ,それはきっとチェキの面白さが根本にあると思うので,安いチェキとよく比べて選んで欲しいなあと思います。

 夏休みが間近に控えています。チェキを自分の道具にした私の子供が,この夏をどんなふうに切り取って残すのか,楽しみです。

 

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