エントリー

カテゴリー「散財」の検索結果は以下のとおりです。

唯一無二のレンズ

 気になっていたレンズを,とうとう買うことにしました。

 厳密に言うと,変わったレンズだなと気になっていただけであり,買うか買わないかで気になっていたわけではなく,それこそ買おうと持ってから実際に購入鉄津起きに至るまでの行動は15分にも満たないものでした。

 AF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6D,という長い名前のレンズです。

 Nikkorというほどですので,もちろんニコン。1997年生まれといいますから,ちょうど名機F5と同じ時期に投入されたレンズです。

 F5と同じく,高い理想を技術と材料で実現した贅沢なレンズと言えると思いますが,先に結論を書いてしまうとあまり売れなかったそうで,中古市場では幻のレンズになる一歩手前の印象があります。少なくとも,欲しい時にいつでも買えるレンズではないですし,同時に複数のレンズを比較して一番良いものを選ぶ事の出来るようなレンズでもないということです。

 ではなにが高い理想だったのか。それはZoomでMicroだったことです。

 1990年代の終わり頃というのは,まだまだズームレンズの画質が単焦点のそれには届かないものであるのが常識で,どちらかというとズームであることの利便性を訴求した商品が多数派だったと記憶しています。

 それは1本で広角から望遠までとりあえずカバーする便利ズームであったり,ボディとのセット価格を引き下げるためにとにかく安く作った標準ズームであったりしました。

 性能ではなく,それ以外で選んでもらえるレンズである事が,当時のズームレンズだったのです。

 この時期のズームレンズは,ビデオカメラの製品開発の過程で鍛え上げられたそうです。コンスーマー向けのビデオカメラの市場が大きくなり,開発競争が激しくなるにつれ,画素数が限定されるビデオの世界で倍率とコストで競争が起きるのは自明です。

 一方で,21世紀には当たり前になる,単焦点に迫る高画質ズームの萌芽もこのころで,それらは新しいチャレンジとして自ずと高額になる運命を背負い,しかし高額商品を手にできる「保守的なユーザー」の厳しい評価に挑み続けねばなりませんでした。

 そんな中で生まれたのが,このAF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6Dです。

 今さら説明の必要もないでしょうが,随分昔に書かれた「ニッコール千夜一夜」の第18話に登場するこのレンズは,当時の記述らしく,この商品が持つ可能性や開発者の熱量を考えた時に,これが今の「ニッコール千夜一夜」に採り上げられていたら,と残念でならないほど,実にあっさりと,別の言い方をすれば禁欲的にまとめられています。

 曰く,花のマクロ撮影が流行していた,花の撮影こそズームが便利なはず,しかしズームとマクロ(マイクロ)レンズとは両立しない難しい技術,しかもフィールド撮影が目的なんだから持ち運び出来ないとダメだ,と言う制限のなかで,2年歳月を経て完成したのが,このレンズだとあります。

 14群18枚,重さは1kgを越える,まるでガラスのかたまりで,最終的な価格は168000円とあります。前述の通り1997年に発売され,2005年に販売が終了したという短命なレンズです。

 正確なことは分かりませんが,当時はまだニッコールという名前に厳しい基準があり,焦点移動があったらZoomを名乗れないとか,様々な性能の基準があるなかで,Zoomと歪曲収差があってはならないMicroとの両立は,さすがに困難だったのではないかと思います。

 そしてその性能は,70mmから180mmまでのズームをF4.5から5.6まででカバーし,全域で37cmまで寄れ,倍率は180mmでは1/1.32倍と立派なマクロレンズです。しかも通常のマクロレンズと違って被写体との距離によって露出倍数が変化しません。どこでも露出倍数は1なのです。

 ZoomでありMicroであるこの見事のレンズは,新しいマクロ領域の撮影方法を開拓しました。マクロ撮影を行った人なら経験があると思いますが,構図を先に決めるとフォーカスが合わず,フォーカスを先に合わせると構図が狂うということが多いです。

 構図の調整だけではなく,フォーカスも被写体との距離で調整することがあるマクロ撮影では,自分が動けなければ手も足も出ません。さらに相手が動く被写体ならまずます難易度が上がります。

 そこでズームです。ズームが出来れば構図も拡大率も思いのままです。ズームレンズは撮影者が動かずに済むため,多くの名のある写真家が単焦点レンズを使って「自ら動け」と若者を鼓舞した時代にあって,実は自ら動けないマクロ撮影こそ,ズームが欲しい撮影の代名詞だったというわけです。

 とはいえ,設計はとても難しいものだったそうです。噂に聞くに,メーカーを越えたレンズ設計者のとある座談会では「真似の出来ないレンズ」というお題でこのレンズが筆頭に上がったとか,似たようなレンズが他社から全く出なかったのは売れそうにないからというより,そもそも作れなかったからじゃないかとか。

 実際,このレンズは発売時にいくつかの賞を受賞していますし,学会発表では第一回光設計大賞という名誉ある賞も手にしています。このエピソードを聞くと,このレンズの設計は同業者を震撼させたレンズだったと言えそうで,写真家よりも設計者の心に響いたレンズだったということでしょう。

 しかし,一部の写真家はこのレンズの優位性に気付いており,もともと数が少ない上に分かっている人は手放さず使い倒しますので,中古市場にも出にくく,まして新品同様の程度のいいものなど期待薄なわけです。

 登場が1997年というのもまた問題で,18枚ものレンズに世代の古いコーティング,プラスチック製の鏡筒に塗装の劣化,華奢なスイッチやレバーの経年的な劣化と破損,VR非搭載は当然としてAFモータすら内蔵ではないと,明らかに旧世代のレンズなのです。加えてとっくの昔に修理可能な時期を過ぎており,つまり壊れたらもうおしまいです。

 かように厳しいレンズではありますが,世界初のズームのマクロレンズは,今のところ唯一のレンズでもあり続けており,これを使いたいならFマウントを選ぶしか選択肢がありません。

 とまあ,私の事情に話を移すと,やっぱりマクロ撮影は難しいのです。MicroNikkor60mmF2.8Gは性能は申し分ないのですが,いざマクロ撮影をやろうとすると思い通りにいきません。三脚を使えば大丈夫なのですが,小さい相手に大げさな準備というのも敷居が高く,だったらスマホで十分か,といういつもの結論に流れてしまいます。

 そんなとき知ったのがこのズームです。マクロ領域こそ望遠だ,と言うニコンの設計者の主張を頭の片隅に残っており,でも本当ならズームこそ最強なんじゃないかと,もしかしたらマクロ領域の撮影を根本から変えてくれるんじゃないかと,そんな風にストーリーが組み上がって,中古市場を探して回ることになったのです。

 とはいえ中古は縁のものです。いいものがなければ諦める予定だったのですが,幸い自称Aランクの中古がキタムラの地方のお店に安価に出ており,クモリもなく大きな傷もなく,フードも付いているというので買いました。マップカメラではフードなしの使用感あり,でこれよりも高い値段がついていました。

 しばらくして届いた個体は,Aランクと言うよりBランクという感じの使い込まれた1本で,細かい擦り傷も多いですし,プラスチックのテカリもあるし,スイッチも動きが渋く,値段相応だなという感じです。でもいいんです,私も使い倒すつもりで買いましたから。

 幸い小さいホコリはあるものの,クモリもなく,性能も出ているようです。光学的には問題なく,実用品として使うにはなんら問題はありません。

 ただ,そもそもD850のお奨めレンズリストからには記載がない(これはこのリストが作られた当時にすでに販売が終了していたからかも知れませんが),そんなに高解像度なレンズでは覚悟しておくべきだとも思います。

 試写してみましたが,まずマクロ領域では申し分ないです。解像度も十分,歪曲などの収差も問題なく,なにより撮影が想像以上に楽ちんです。撮影倍率が変化しないことも想像以上に便利です。

 一方でAF-S MicroNikkor60mm2.8Gのような切れ味はありませんし,あと一歩寄りたいというところで限界を迎える点で,やっぱ等倍撮影というのはいいなあと思い直した次第です。

 AFが遅いことはなにも問題はありません。確かに静物ならAFは便利ですが,相手が動くならもうMFであわせた方がずっと楽です。

 絞り開放のF5.6でもF8でもF11でもそんなに画質に変化はありませんから,確かに絞り開放から使えるというのは嘘ではありませんが,F11まで絞ってこれか,というがっかり感があるのは事実です。

 ということで,VRがない事を加味すると,F8くらいで撮影するのがこのレンズの良い使い方ではないかと思いますが,総じて本来のマクロ領域の撮影については期待通りです。

 ではもう1つ,一般撮影ではどうでしょうか。実はマクロレンズというのは一般撮影でも好ましい結果を得られることが多いです。やや暗いので敬遠されがちですし,一般撮影用にはもっと良いレンズがたくさんありますのでわざわざマクロレンズで撮影することもないのですが,ボケ味といい解像度といい色のりといい,なかなか高い次元でバランスしているのがマクロレンズです。

 MicroNikkorを名乗る事の出来るほど収差が補正されているズームですので,私はかなり期待していました。しかしこの期待には少々届かなかった様です。

 まず,全体に眠いです。解像度が不足し,線が太いです。それから若干ハレ気味で,白く飛びがちです。またコントラストも今ひとつで,このあたりは当時のズームレンズらしい個性を引き摺っているように思います。

 これらは絞れば改善しますが,F11あたりまで絞ってしまえばVRがないこのレンズではかなり撮影可能な状況が限定されてくるでしょう。歪曲収差がソフトウェアによって完璧に補正される現代において,光学的に補正することに主眼を置いたこのレンズの出番は,もうないのかも知れません。

 とはいえ,ボケはなかなか良好です。自然ですし,滑らかです。そしてちゃんと光を読めば立体的な表現も十分可能なレンズだと思います。

 ちなみにAIですので,F2にも使えます。実際撮影してみましたが,まったく問題なく使用することができました。

 でもさすがに25年前のレンズですね,これを現代にも通用する等とはちょっと言えないですし,はたまたこれに10万円の価値があるかと言えばないと思います。マクロ撮影はセンサのサイズが小さくても構わない撮影領域ですし,持ちやすいことやブレの防止,拡大率やフォーカスの合わせやすさという点が重要ですから,実質的にもうスマホに任せるべき世界なのかも知れません。

 Fマウントが徐々に終わりの時を迎える中で,これは私が買うおそらく最後のFマウントレンズとなることでしょう。実際の稼働率は上がらないとは思いますが,なにより技術的に大変興味深い唯一無二のレンズですし,また評価が大きく分かれるレンズとして,おそらく最後まで持っているレンズになるんじゃないかと思います。

 春になったら外に持ち出してみます。

DDR2の4GBのSO-DIMMを買うことになるとは

  • 2023/01/17 13:49
  • カテゴリー:散財

 AVRなどのマイコンのソフトは,ツールの関係でWindowsを使うことが多いです。私は生活マシンをMacにしてますので,開発マシンはそのお下がりになることが多く,現在はなんとMacBookProのEarly2008(MB134J)という骨董品にWindowsを入れて使っています。

 こいつを置き換えた15インチのMacBookProが2016年のLateで,普通はこれをお下がりにしてWindowsを入れても「古い」と罵られることを請け合いですが,そこからさらに古いマシンでもWindowsが動いているというのは,なんとWindowsというのは古いマシンを大事にしてくれているのだろうと思います。

 話が逸れますが,MacはOSのアップデートが割に簡単に打ち切られるので,長く使うには向かないと思います。移行が簡単で移行後の制約もほとんどないことを考えると,さっさと新しいマシンを買ってしまえと言うのがAppleからのメッセージです。

 で,そのWindowsを入れたMacBookProですが,軽い開発なら十分な速度で動いていると思います。2.6GHzのCore2Duoでキャッシュは6MBですから,シングルスレッドの性能はそんなに低くはないと思います。(いや,低いのですよ・・・)

 LCDが15インチで広いことは開発には有用ですが,一方でメモリの速度が遅いこと,HDDが遅い(SATAです)から,ここもボトルネックになっています。

 実は,このマシンを開発マシンとしてWindows8.1を入れるとき,使い物にならないくらい遅いマシンになったらどうしようかと思っていました。やってみると案外快適で,レトロPCのエミュレータも問題なく動いています。

 ただ,これ以前のMacOSを入れて使っている時既に,最大まで増設してあった6GBのメインメモリが壊れていて,やむなく4GBで使っていた事が引っかかっていました。

 壊れたのは2GBだけか?というなかれ。このあたりは当時らしいちょっとした事情が絡んできます。

 MacBookPro2008には,メモリの増設スロットが2つあります。ここにDDR2のSO-DIMMを差し込むのですが,スロットは2つですから,例えば4GBにするには2GBを2枚使うことになります。決して512MBを8枚というわけにはいかないのです。

 当時のDRAMは2GBit品が一般に出回っている容量としては最大のもので,これを8個使ったDIMMが安価な2GByteということになってきます。ということは,MacBookPro2008では4GBまでが手軽なメモリの上限となってきます。

 一方で認識可能な最大容量はというと,4Gbit品を使って6GByteまでなら認識出来ることがわかっています。一応仕様上は4GByteまでとなっていますが,4GBのDIMMを2枚で6GBまでは認識します。これは2GBと4GBの組み合わせでも可能です。

 残念なのは,同仕様のメモリを別バンクに配置することで可能になるメモリインターリーブが2GBと4GBの組み合わせでは機能しないという事なのですが,おそらく10%程度のパフォーマンス改善に役立ったと思うと,容量を取るか速度を取るかがなかなか悩ましいところです。

 私の場合,当初は2GBと4GBの組み合わせで使っていたものが,4GBのDIMMが壊れてしまって仕方なく4GBで長く使ってきたということになります。記録によれば,4GBのDIMMが壊れてトータル4GBで使うようになったのが2016年の5月とのこと。

 マシンも古いし,特に問題も感じなかったので,おそらくこのまま壊れるまで使うんだろうなと思っていたところへ,Windows8.1のEoSです。無償でWindows10に移行出来るうちにということで,私も年末にWindows10に移行したのですが,随分と動作が引っかかるようになってしまいました。

 特に開発関係のツールを起動すると,しばらく反応が戻ってこないこともあるくらいで,これはおそらくメモリ不足でしょう。ということで,もとの6GBに戻したいなあとおもっていました。

 しかし,前述の通り,当時でさえもDDRのSO-DIMMで4GBというのは売れ筋から外れたちょっと変わったメモリです。当時私はこれを6000円くらいで買っているようですが,2GBのものなら1000円台で買えたんじゃないかと思います。

 すでにDDR2は作られていないでしょうし,私のような変わり者のために在庫してくれているお店が,プレミア価格で販売出来ることを夢見ている状況でしょうから,決して安くないはず。

 調べてみると,やはり高価です。が,1つだけ5000円というのを見つけました。4GBのDIMMが5000円とは,今の尺度で見れば高いのですが,DDR2であること,当時もこれくらいの値段はしたということを考えると,悪い買い物ではありません。

 この機会を逃すと買えなくなると思って,ポチっておきました。ただ,今刺さっている2GBの2枚のうち,1枚を入れ替える事になりますので,トータル6GBになることを考えると,2GBの増設に5000円となりますから,ますますバカらしくなりますが,それあもう仕方がありません。

 届いたメモリはなかなか良さそうなもので,当たり前の事ですが取り付けると正常に起動,問題なく動作しました。狙い通り引っかかりのようなものも出なくなり,少し重いなと感じる事以外は実用上全く問題なしです。

 大規模開発を行うわけでもなく,せいぜい数kByteのメモリのプログラムをビルドするくらいですから,本当はVisualCodeStudioを動かすためといっていいといいほどなわけで,調べてみると空きメモリは約3GBとなっていました。もしメモリの増設をおこなわなかったからこれが1GBになっていたわけで,そうなると確かにスワップも頻繁に起きるでしょうし,今回のプラス2GBは期待以上の効果をもたらすかも知れません。


2022年の散財

  • 2022/12/26 12:02
  • カテゴリー:散財

 先日も書きましたが,2022年はレトロPCで遊ぶ年になりました。おかげで単価の大きな買い物は少なく,また精神的な問題もあって全く新しい事に興味が持てない状況でしたので,この1年の三山を振り返るという恒例行事も,珍しく低調なものとなりました。

 大きなものを買ったという記録を並べてみても5つほどで,何を書こうかと選ぶ必要がないというのも,さみしいものでした。

 さらに深刻だったのは,買ったものを使って喜んだり,不満を持ったりという「その後」がほとんどなく,買ったはいいけどなにもしない,ということがあったことです。つまりそれは,買わずにいてもなにも生活に変化をもたらさなかったということです。

 何度も書いているように,その代わりにレトロPCで遊んだり,AVRマイコンで工作したりと,それなりに楽しい時間を過ごしていたとは思います。しかし,音楽にしても写真にしても,感性に触れるような趣味を楽しめるほどのゆとりが,もうなくなっているのだろうと思います。

 閑話休題。

 2022年の散財を振り返ってみます。

・アラジンのトースター

 2022年一発目の散財はこれで,ヨドバシの夢のお年玉に含まれていたものです。たかがトースターじゃないかと侮っていましたが,劇的に美味しく焼けるトースターは毎日稼働する調理家電となりました。

 これ単体で買った方が実は良かったんじゃないかと思うほどよい買い物だったと思うのですが,これが自分の希望ではなくヨドバシのセレクションだったというのがミソで,実はヨドバシの夢のお年玉は,毎回良い経験を私たちにもたらしてくれます。

 残念なのは毎年買えるわけではないこと。抽選倍率が年々上がり,今では内容よりは当選したことだけで満足してしまうような状況です。2023年は抽選に外れてしまいました。残念。


・HELIAR40mmF2.8 ASPH L39

 40mmのレンズが流行っています。私はCLEで40mmを使っていますので昔からの付き合いですが,50mmでは大きすぎ,35mmでは小さすぎるという感覚を実は持っていたkとに気付かされたことを覚えています。

 ただこの40mmはMマウントでしたし,典型的なガウス型なので画質は50mmと似ています。もっと違う個性が欲しいなあと思っていた時に購入したのが,HELIAR40mmF2.8 ASPH L39でした。

 ASPHですからね,現代的な写りをします。開放から使える頼もしさも,色の出方も文句なく,それでいて小さく,ずっしりと重いこのレンズは,使っていて楽しいレンズだと思います。

 残念な事は,フィルムがもう使えないものになってしまったことでしょうか。

 話が逸れるのですが,今年はフィルムにとって節目の年だったように思います。ウクライナとロシアの戦争で,主要なフィルムの製造拠点である東ヨーロッパからの供給が滞りがちになりました。

 あおりをうけてコダックもフジもフィルムの供給が減り,買えなくなったばかりか値段が高騰しています。昔100円ショップで買えたカラーネガが,今や2000円ですもんね。

 話はこれで終わりません。コダックのアジア方面の生産を受け持っていた中国の工場がコロナと中米関係の悪化から撤退し,なんと日本国内の薬品の販売を終了しました。

 フジも大幅にラインナップを減らしていますので,以前のように仕上がりやフィルムに応じて現像剤を選ぶという表現手法が使えなくなっています。

 それでも手に入るだけましで,カラー現像はもう全く手に入りません。

 では高価なフィルムをどうやって現像するかと言えば,もう自家現像は無理で,写真屋さんに出すしかありません。カラーはそれでもいいでしょうけど,モノクロは自動現像機が使えませんので,時間もお金もかかります。

 昔はジャンク箱の肥やしで猫またぎ(猫が跨いで通るという意味で,誰も見向きもしない価値のないものという意味です)とも言われたコンパクトカメラが驚くような高値で売られていたり,ボケボケのレンズが「味」として尊ばれるレンズになったりしていますし,つい先日もペンタックスがフィルムカメラを開発するという発表を行ったばかりで,フィルムはまだまだ生き残りそうな印象を与えていますが,肝心のフィルムのメーカーから「がんばります」というメッセージが全くと言っていいほど出ておらず,もしかしてペンタックスはフィルムの供給問題をなにも考えずに話を進めているんじゃないかと,不安になっています。

 私はと言えば,Zfcでも使えるからとHELIAR40mmF2.8 ASPH L39を買ったものの,40mmは純正のレンズの写りが気に入って常用になっています。あ,APS-Cだから60mm相当か・・・


・ハンディオシロスコープHO102

 いきなり年末に飛びますが,毎年なんやかんやでamazonのブラックフライデーで無駄使いをしてしまいます。昨年はHIOKIのテスター,今年はハンディオシロスコープのHO102です。

 HIOKIのテスターは現在測定の主役として大活躍なのですが,HO102はちょっと失敗だったかなと思っています。

 テスターにくっついたおまけ,程度のハンディオシロは昔からありましたし,それに何度も裏切られて来た私も,HO102のスペックを見ると「これは本当にまともなオシロスコープがハンディになったのかもしれない」と手を出してしまいました。

 10:1のプローブが使えること,200MHzお帯域を持つこと,2CHであることだけでも十分なものだと想像出来たからなのですが,落とし穴は垂直感度が低いことでした。

 ノイズを見ることも,波形のちょっとしたトゲを見ることも難しいオシロは,いわば拡大率の低い虫眼鏡です。もうちょっと大きく見たいな,あるいはここに潜んでいるはずなんだけど,という私の期待には届かないものでした。

 テスターとしても中途半端ですし,オシロとしても結局ベンチ型の代わりにはなりません。操作性も悪く,もう少し考えて買えば良かったかなあと思った買い物でした。


・F(x)tecPro1x

 フルキーボード搭載のスマートフォンです。詳しいことは先日書いたばかりなのでその後の話を少し。

 背面のロゴのかすれについては,とりあえず言うだけ言ってみようと思って販売店のサポートに電話をしました。「こんなもんです」と言われれば引き下がるくらいの気持ちだったのですが,予想に反して交換か返金してくれることになりました。

 返金はちょっと避けたいところで,そうすると交換なのですが,完売のため交換品がありません。ロゴの分だけ割引するという選択肢もあったのですが,運良く在庫が見つかり,交換してもらう事になりました。

 交換してもらったものをワクワクして見てみると,ロゴこそ綺麗ではありますが,あちこちに先の尖ったものでこじ開けたようなキズがあるじゃありませんか。

 キーボードを出した状態で,左肩に3箇所,右肩に2箇所のキズがあり,塗装は剥げて地金が出ており,アルミは盛り上がって変形しています。これは未使用品どころの騒ぎではないと,翌日に電話をしました。

 もう交換品はないので返金しかないと言われたのですが,いやいや数日前に返した,もともと私の手元にあったものがあるでしょうと指摘すると,それとの交換は出来ませんとつれない返事です。

 せっかく手に入れた珍しい商品が不良品,交換したらそれがさらに悪いもので,交換品がまさにそこにあるのに交換出来ないなんて,そりゃ切ないでしょうと食い下がりましたが,交換はあくまで同じ価格の同じ程度のものとの交換であり,ロゴがかすれたものを同じ程度として交換することが出来ないという事でした。

 まあ,それもわかります。とはいえ,ロゴがかすれたものは一度不良と認定されたわけで,交換してもらうと不良としての扱いが取り消される形になるというのは,これで腑に落ちないものがあります。

 お店が出来ない事は出来ない,出来る事は精一杯やると言うスタンスだったのでいろいろ提案をして下さったのですが,結局今手元にある傷だらけのものを際査定し,これを値引き販売することで差額を返金してもらう対応で手を打ちました。

 金額を書くとなにかと問題があると思うので書きませんが,私としては想像以上に割り引いてくれたと思います。言い方を変えれば,それだけこのキズは大きな減額となるものだったのでしょう。返品されても売り物にならず,出来れば私に持っていて欲しかったということでしょうね。

 そういううがった見方はともかくとしても,お店の対応は荒っぽさがあるものの,お店として可能な選択肢を出し惜しみせずに複数提案してくれたことは,とても信頼出来るものだったと思います。お店の名誉のために書いておきますと,ロゴのかすれもキズも,未使用品として入荷した商品に最初からついていたものだったわけで,いわばメーカーの品質基準を満たした仕様です。

 それを検品でお店の基準による再評価ではじけなかったことに問題はありますが,誰の手にも渡っていないという意味での未使用品という表現に偽りはなく,メーカーの出荷基準に合格した良品であると強弁しても通ったと思います。(でも不良在庫の買い切りで流れてきた商品にメーカーのサポートはありませんから,全責任を負うのがお店のつとめです)

 今にして思うと,販売店も逃げずに,自分の責任の範囲で十分に誠実な対応をしてくれたと思います。感謝ですね。

 キズも目立ちますし,塗装も剥げていますが,動きそのものは問題がないようです。実査に使ってみるとBlackberryKEYONEとはまた違った快適さがあります。OSはAndroid11と2世代も前ですが,セキュリティアップデートがGooglePlayで配布されるので実際に使える時間は長く出来そうです。

 あとは壊れないことを祈りたいです。外出先でスマートフォンが壊れるというのは,酸素ボンベがなくなるようなものですからね。


・STAX SR-507
 11月の初旬のことですが,STAXのアウトレットから入荷連絡がきました。私が使っているSTAXのイヤースピーカーはSR-303でもう年以上も使っているものです。

 イヤーパッドの交換は何度も行っていますが,スポンジがすでにボロボロになっており,音響的にもよろしくない状態だったことが気になっていましたが,この20年で価格が急激に高騰したことや,高級路線になってしまったことから,SR-303の後継としてSR-307あたりをアウトレットで探していたのです。

 あいにくその時は完売で手に入りませんでしたが,入荷したら連絡をもらうことにしてあり,それが忘れた頃にやってきたというわけです。お値段は26180円で,なかなか微妙な値段です。

 そこでふと,このSR-307がヨドバシでいくらで売られていたのかが気になり,調べたのがきっかけで,もう1ランク上げてみてはどうだろうと大人の発想が首をもたげてきました。

 アウトレットの在庫を調べてみると,SR-507が53900円です。Λシリーズの後継であるSR-L500が8万円を越える価格であることを考えると,現在はミッドクラス,当時のハイエンドをこの値段で買うチャンスはもう二度と来ないでしょう。

 同じクラスのものを2つ持っていてもつまりません。本革のイヤーパッドにも憧れがありますし,個々は少し背伸びをしてSR-507を買った,と言うわけです。

 届いて早速聞いて見ましたが,実は少しがっかりしたのです。SR-303は高解像度で,これまで聞こえなかった音が聞こえる魔法のヘッドホンでした。しかし低音はあまり豊かとは言えません。私はそれがかえって聞きやすく,好ましいものと思っていました。

 SR-507は低音が豊かになり,普通のヘッドフォンと同じ傾向になったと思います。その点では,コンデンサ型の弱点を克服したモデルと言ってよいのでしょうが,一方で解像度が落ちたように思えたのです。

 とはいえ,小さい音を聴きたいという気持ちから気が付いたらボリュームMAXという,音量のリニアリティのすごさとダイナミックレンジの広さ,大音量を破綻なくストレートに再現する能力はもちろん健在で,音が丸くなった分リスニングに疲れもなく,オーディオマニアにはこの方が受けるよなあと思った次第です。

 STAXはやっぱりあの角形じゃないと,というSTAX原理主義の私には,ΛシリーズこそがSTAXです。おそらく最後のSTAXになるだろうSR-507と,SR-303は併用したいと思います。


・ゲームの類い

 購入当時に書き忘れていたものがゲーム機で,AstroVisionMiniとMegadraive2mini,そしてゲーム&ウォッチのゼルダの伝説を買いました。

 AstroVisionMiniは正直期待外れで,あまり盛り上がらなかったように思います。一方のMegadraive2miniは,期待を越える収録数とラインナップ,そして遊べるクオリティで,期待を大きく越えるものでした。気合いの入れ方が全然違うと感じます。

 特にドッヂ弾平は噂通りの良ゲーで,あまりゲームに関心を示さない娘が楽しんでいました。値段以上に楽しめるので,スプラトゥーンに疲れた人は息抜きに買ってみてもいいと思います。

 本命はゲーム&ウォッチです。マリオは発売当時に買っていましたが,ゼルダはもともと興味がなかったので買っていませんでした。

 しかし,娘がPCで古いファミコンのゲームで遊ぶようになったのを見て,ゲーム&ウォッチにファミコンのエミュレータを入れれば手軽に遊べるのではと思い立ち,amazonのセールの時に買いました。

 買ってすぐ分解,事前にaliexpressで調達してあった64MbyteのEEPROMに交換して,先人達が切り開いた道をありがたくトレースさせて頂きました。

 ちなみにROMんも書き込みツールとしてSTMicroのST-LINKあ必要になるのですが,私は偶然Nucleoを持っていたので,これを使うことにしました。

 ゼルダから外したEEPROMをマリオに移植し,マリオは4MBのEEPROMを搭載したモデルとして改造しました。

 ゼルダはオリジナルのゲームが大きく,すべて外部フラッシュに置くため設定が消えないようですが,マリオはオリジナルの機能をCPU内蔵フラッシュに書き込むため,設定が消えてしまうと言う問題があるようです。

 ともあれ,ゼルダは大容量ストレージを手に入れ,MasterSystemやPCエンジンのエミュレータまで取りこんで,レトロゲームマシンになりました。

 娘に渡してみると,喜んでファミコンのゲームでしばらく遊んでいましたが,気が付いてみるとちゃんとゼルダの伝説で遊んでいました。改造の必要などなかったというオチがつきましたが,クリスマスという事もあり,プレゼントしました。

 

 ということで,今年もいろいろ買いました。数は少ないながらも,実はレトロPCや電子工作関係で部品を買ったり,オークションに突っ込んだりと,単価は小さいながらも合計するとびっくりするような金額になっていそうな気がします。

 もともと,手持ちの部品を使って安く作ろうという同機で始めた工作も,結局手持ちがないという理由で買い足す羽目になり,結局部品が減っていない(それどころか増えている)という悪い状況です。

 来年は,自宅の修繕や子ども塾等で大きなお金がかかります。無駄遣いは慎まないといけないなあと思います。

 

F(x)tec Pro1xを買う

 私は未だに通話用とデータ通信用に携帯電話を分けていて,通話用に維持している3Gのガラケーを「メインだ」と言い張る変わり者です。

 更に悪いことに,もう携帯電話の世界にはついて行けないと興味を失い,仕方がないから持っているという状況に甘んじており,かつてザウルスとPHSでモバイル通信を日常的に行っていたり,海外からPalmTXを輸入して常用したり,twitterデビューがアドエスだったりと,すっかり過去の栄光が失われています。

 振り返ってみると使いやすいように自分でなんとかするということが必要なくなってしまって,それで結局興味を失うことが多いように思うわけですが,なにも手を汚さずとも普通に使える機器というのは楽ちんな一方で,少し外れたことをしようと思うととても苦労するか結局あきらめるかのどちらかになってしまうので,それで結局今日もを失うのだと思います。

 まあ,そういう目的のズレがある似たような傾向の方が世の中にはいらっしゃるようで,例えばキーボード付きのスマートフォンには一定のファンがいるようです。

 電池で動く小型携帯機器のフルキーボードというのは,PC-1245というポケコンに始まり,実際便利につかえることもあって,未だにその魅力にあらがえません。

 iPhoneやAndroidでキーボードがなくなり,タッチパネルでの操作が広く受け入れられるようになったわけですが,私個人は表示されている画面を直接触ると言うことにどうにも馴染めず,これまでもBlackberry KEYONEを使ってきました。

 Blackberry KEYONEはとてもいいスマートフォンでしたが,いかんせん古くOSも8.1止まり,動作速度以上にセキュリティに不安があり,手頃なキーボード付きのスマートフォンが出てきたら買い換えようと思っていました。

 やはりマニア向けの製品になるので,どうしても聞いたことがないようなメーカーから,クラウドファンディングなんかで買うという形が多く,これも私にはちょっと抵抗がありました。

 そこへ飛び込んで来たのが,イギリスのF(x)TECHNOLOGYから出ていた,F(x)tec Pro1xという機種が未使用品で4万円で販売されているという話でした。

 この機種は2年ほど前にちょっと話題になったので私でも知っているのですが,画面をスライドするとキーボードが出てくるという,アドエスを彷彿とさせるモデルです。

 ただ,この手のギミックはやはりメカ屋が優秀な日本製が望ましくて,少々不安があったのですがこの機会を逃すと当分買い換えできないなと,なかば自分を騙すようにポチりました。

 届いてセットアップを行いようやく常用を始めたのですが,結論から言うと今ひとつで期待を下回るものでした。

(1)外観

 大きささはそれほどでもないですが,厚みはキーボード付きという事もあり,かなり分厚いと思います。重さもありますし,これをスマートフォンとしてみればやはりデメリットになると思います。

 意外にかっちりとした剛性感もありますし,青の本体色も綺麗です。しかし,キーボードのギミックには個体の問題かも知れませんが,右側にガタがあり,キーボードを出して画面にタッチするとカタカタと音がなります。これはダメでしょう。

 キーボードは意外によい感触で,独立したキートップを持つ押しやすいキーです。バックライトも持っているあたり,なかなかこだわっているなあと感心します。

 配列は前機種のPro1で酷評された配列を見直していますが,その結果私は何の不満もなく使えています。とはいえ,つくづくBlackberryのキーボードの使い心地の良さが懐かしく感じます。

 キーボードのスライドはちょっとコツが必要で,カメラのシャッターボタンや電源ボタン,音量調整ボタンに触らないように開くのはなかなか難しいです。結構な力を入れないとスライドしないので,ついついキーボードを使わなくなってしまいます。

 そうそう,私の個体の問題だと思うのですが,背面の「XDA」のロゴがかすれていました。本当に未使用であるなら製造時の不良でしょうが,もう面倒ですし,目につくものでもないのでこのまま使うことにします。

 
(2)使い心地

 CPUがミッドレンジ向けのものに変わってしまったのでパフォーマンスは良くないです。メモリも今どきのモデルとしては少なめですので,スマートフォンとしてみれば4万円の価値があるかどうかさえあやしいと思います。

 ディスプレイはOLEDでなかなか高品位だと思います。ただ別にLCDでもいいと思うくらい,LCDとの差が縮まっているのだろうと思います。

 ちょっとどうなのかなと思ったのは左右の端っこが曲面になっていることです。手に馴染むデザインには貢献するかも知れませんが,曲面に映る文字が見にくかったり,そこにタッチがしにくかったり,フィルムが貼れなかったりとあまりメリットを感じませんでした。

 キーボードはスライドが面倒に感じがちで,まず使おうという意欲が湧きにくい上,ATOKとの相性が悪く,横長の画面が使いにくいこともあり,縦画面のままキーボードが使えるBlackberryが圧勝です。

 
(3)その他

 セットアップを一通り済ませた後カメラをテストすると,カメラアプリがすぐに落ちてしまい,もう一度セットアップする羽目になったりしましたし,WiFiの感度が悪すぎて,勝手に切断されてモバイルネットワークに繋がっていたのにセットアップを続行してパケ死したりと,とにかく大変でした。

 ATOKとの相性が悪いことも問題で,横画面でソフトキーボードを消すと縦画面でもソフトキーボードが表示されずに詰むとか,Gboardも候補が画面に大きく表示されて邪魔になるなど,最大の売りであるはずのキーボードが使いにくいというおかしな事が起きています。

 Android11というのはなのでセキュリティのアップデートはGooglePlayで配信されるので安心感がありますが,これがなければKEYONEをそのまま使い続けていたかも知れません。


(4)まとめ

 わざわざ買い換える必要があったのか,という疑問を感じる買い物でした。ちなみに購入したディスプレイのフィルムは曲面をカバーしない中途半端なもので,画面が見にくくなるだけのものでした。国内の有名なメーカーの製品だったのですが,失敗だったと思います。

 専用のケースもありませんし,なにかと不便な思いをします。はっきりいって,ウケ狙いのアイテムだったと思います。

 素のAndroidであることは評価しますが,楽しさや満足感で言えばBlackBerryがやっぱりいいなあと,見直しました。

妥協しないハンディオシロを買う

 先日のamazonのセールで,また新しい測定器を買ってしまいました。HO102というハンディオシロです。

 今持っているオシロもテスターも機能的には満足していますが,先日AppleIIの修理をやっているときに,現場で波形を見たいときが頻繁にあり,この時いちいちTDS3054を持ち運んでいたのがとても面倒だったのです。

 帯域は最低でも100MHz,2ch測定が可能で,10:1プローブが使えて,トリガも綺麗にかかって,カーソルも使いやすくて,それで十分なメモリとサンプル周期を持っているもの,つまり一昔前の中級モデルくらいのものが電池で動いてくれればいいなあと思っていたところ,目についたのがHO102でした。

 スペック的に3万円から4万円くらいするのも当然だと思っていたのですが,HO102はセールで2万円でした。聞いたことがないようなメーカーのものですが,同じ物がOWONに供給されているようなので,そんなに悪いものではないでしょう。

 とにかく,100MHzで2chのオシロが2万円です。

 さて,そのHO102ですが,スペックを並べると100MHzで2ch,10:1のプローブが使えてと,すでに十分使いものになりそうな感じです。サンプリングは最大500Ms/sでメモリは8k,画面の更新速度は10000回/sと,これも実用レベルではないかと思います。

 これが手のひらサイズで電池駆動,しかも2万円なんですから恐れ入りました。

 で,少し使ってみたのですが,例えばカーソルの時間測定が逆数表示(つまり周波数ですね)出来ないとか,ロータリーエンコーダがないので直感的に操作できないとか,ちょっとフロアノイズが大きいとか,そういう不満はありながらも,普段使いには十分なものであると思います。なんといっても電池駆動というのが素晴らしい。

 そうなると心配なのは精度と信頼性です。信頼性は使ってみないとわからないですが,精度は使い始めるときに分かっていないと不安なものです。ただ,オシロスコープなんてのはそもそも精度を追い込む時に使うような測定器ではないので,テスタモードでの精度を見てみることにします。

 HO102にはテスタモードを持っていて,ボタン1つで切り替えが出来ます。カラフルなLCDで見やすく表示されるので好印象ですが,ファンクションの切り替えがロータリースイッチではないので使いやすさは今ひとつです。

 気になるのは精度で,一応一応スペックとしては20000カウントです。ちょっといいテスタくらいの感じでしょうか。コンデンサの容量はもちろん電流も測定出来ますし,今どきのテスタが出来る事は一通り出来そうです。

 では早速,恒例の誤差を調べてみましょう。いつものように標準電圧発生器を測定してみます。

 この標準電圧発生器は2016年に購入したもので,AD584KというICを使って,温度係数が15ppm/℃という安定性を持っています。出荷時に信頼出来る測定器で測定した値を添付してくれているので,これとの比較を行えば自分の測定器の精度がある程度わかります。

 出荷時の値は以下の様な感じです。

2.500V・・・2.50165V
5.000V・・・5.00302V
7.500V・・・7.50454V
10.00V・・・10.00533V

 測定日からすでに7年も経過しているので,ズレていても仕方がないのですが,そこも含めて確かめていきます。

 まず,うちの基準器であるHP34401Aです。
2.5018V
5.0035V
7.5053V
10.0064V


結構ズレているように思いますが,実は昨年に測定した値があります。

2.5017V
5.0035V
7.5054V
10.0065V

 これを見るとほとんど変わっていません。しかも昨年の値と2019年の値とは一致しているので,この3年ほど値がほぼ変わっていないことになります。

 次に,HP34401Aの現在の値とHO102の比較です。

2.502V -0.2mV -0.00799%
5.003V -0.5mV -0.00999%
7.505V -0.3mV -0.00400%
10.006V -0.4mV -0.00400%

 お,なかなかやりますね。桁数が減った分だけ不利になっていますが,ほぼドンピシャという感じでしょうか。これなら十分信頼出来る測定器といえるでしょう。気に入りました。

 でも,20000カウントの弱点が出てますね。2.5Vでは少数3位までしか出てません。私のように5Vまでの範囲でおさまってしまう弱電屋さんにとっては,20000カウントも6000カウントもそんなに変わらん,ということです。

更新速度は仕様として規定されていませんが,1秒間に3から4回というところでしょうか。十分です。また,trueRMSというのも地味にうれしいところです。

精度の仕様はDCが0.5%+3dig,ACが0.8%+5digですから,DT4282の足下にも及びませんが,FLUKE 101と同じですね。実用範囲です。


 参考までに,うちのもう1つの基準器であるDT4282です。購入後1年経過しました。

2.5017V 0mV 0%
5.0035V 0mV 0%
7.505V -0.4mV -0.00633%
10.006V -0.5mV -0.00500%

 相変わらず良い値を示しています。さすがは60000カウント,6Vまでなら小数点4位まで表示する上,34401とぴったり同じの値を出すなど,しびれます。


 まとめると,HO102はスペックは凡庸で,20000カウントも実使用上はあまりうれしくないが,実力は十分で測定値も信頼出来る,操作性は今ひとつだが視認性は良く,常用可能なテスタであると言えるでしょう。

 考えてみると2万円ですから,オシロスコープの値段を考えるとタダみたいなもんです。現場でオシロとテスタを切り替えて使うことがどれだけあるかわかりませんが,とりあえず1台持っていけばどっちでも対応出来るというのは頼もしいですし,それぞれの機能に妥協しないで済むという安心感もあります。

 中国製なので見た目もアレですし,手触りも良くありません。PCと繋ぐソフトも試しましたが,別に使いたいと思うようなものでもない程度でしたし,付属品の質も低くて,テスタリードなどはなにやらベタベタして気持ち悪いです。

 ですが,オシロスコープとテストの2つの基本機能はしっかりしていますし,使い心地も悪くなく,測定結果は信頼出来ます。これが2万円ですからね,電子工作初心者の方々にこそ,この測定器をお奨めしたいです。おそらく10年は使えますよ。

 

ユーティリティ

2026年01月

- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed