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さようならZfc,ようこそZf

 ニコンZ f(Zとfの間にはスペースが入るのが正しいようなのですが,これだとZとfみたいになるので,以後私はZfと書きます)を買いました。予約開始と同時に予約したので,発売日の午前中に手に入りました。

 Zfcが登場した時に,いずれはフルサイズでクラシックデザインのカメラが出ることを多くの人が予想したし,私も期待もしたわけですが,そのZfcがよく売れたこともあり,満を持して登場したのが,フルサイズのZfです。

 Zfのなにが素晴らしいといって,Zfcの時とは違い,ZfがZ5のような下位モデルをベースに外側だけ交換したモデルではないということです。外側はFM2をモチーフにしながら,中身は実はZ6クラスの最新モデルであり,性能にも軽快さにも妥協がなく,間違いなくこのクラスにおけるニコンの最も新しい技術が盛り込まれた,戦闘力の高いモデルなのです。

 Zfの売りはデザインなの?性能なの?と聞かれたとき,その両方!と答えたニコンはすごいと思いましたし,同時に無茶をするなあとも思いました。Zfcは間違いなくデザインに振ったモデルであって,質感であるとか性能的なものには妥協が強いられました。

 しかしZf,どうですか,この質感の高さ,この性能の高さ。

 同時に値段も本格的なものになってしまいましたが,それも含めて「最新のカメラとして真面目に買う」モデルになっていると思います。誤解を恐れずに言えば,ライトユーザーや初心者,ちょっと別の入り口からカメラに興味を持った人たちの受け皿としての役割は,もうないといってよいでしょう。それはZfcの仕事ですし。

 ということで,Zfです。

 Zfはクラシックなカメラのデザインを纏った,本格的なミラーレスです。2400万画素クラスのフルサイズはミラーレス一眼カメラの激戦区ですし,Z6IIはもちろん各社本当に良いカメラが揃っています。性能と扱いやすさのバランスがちょうど良く,私も最もカメラらしい万能選手が揃っていると思います。Zfはその最新機種なのです。

 お値段も本格的になっていて,実売価格は約27万円。円安が進んだこともあって数年前なら23万円くらいだった(だって10年前のα7って15万円だったんですよ)と思うのですが,それはまあ仕方がありません。

 決して私はバーゲンプライスとは思いませんが,27万円に相応しい質感と性能を備えていることは間違いありません。つまり,27万円に期待するものは十分備えているという事です。

 ということで,最新の高性能カメラを昔のUIで使う楽しみを味わいつつ,レビューです。

(1)質感とデザイン

 Zfcは全体にプラスチッキーで,ちゃちな印象を受けました。しかもダイアルもグラグラしていましたし,レリーズボタンも遊びが多く,それ以外のボタン類のクリック感も良くないものでした。

 しかしZfはそれらがすべて解決しています。中身が詰まっていそうな密度感,触れた時に感じるヒンヤリとした質感,指にしっかりかかり,精度良く確実に回転するダイヤル,そして適度な反発力と底打ち感のあるレリーズボタン,上品なクリック感とストロークを持つボタン類,すべてが上質で,触っていたいという感覚が沸いてきます。

 サイズも私にはちょうど良くて,少し大きめのフィルムカメラを触っている感じです。それからあまり誰も触れないのですが,右側のグリップは,F3のそれとそっくりです。特に側面に繋がる部分の処理がうり二つで,ここの処理はF3を見た時に私が感心した部分の1つなのですが,私は,Zfは本当はF3になりたかったんだろうなと思いました。(ZfはFM2でもF3でもなく,Zfシリーズなのです)

 デザインそのものはZfcの踏襲ですが,大きさが変わっているのでそのままというわけではなく,辻褄合わせの細かい処理が散見されます。そもそも大柄なFMやFEシリーズなんてのは世の中には存在しないわけなので,FMらしさをこの大きさから引き出すのは,結構大変だったんじゃないかと思います。

 それこそ,潔くF3やF2のようなデザインテイストにすればすべて解決だったと思うのですが,ニコンがやりたかったのはF3やF2を復活させる事ではなく,あくまでクラシックデザインの「Zシリーズ」を作りたかったわけで,そういうブレないところもニコンらしくて私はとても良いと思いました。

 Zfcでは,デザインに軸足を置いたせいで操作性が犠牲になっていました。Zfもそうしたきらいはあるのですが,大きさが変わったことで操作系のゆとりも出来た事で,随分と楽に操作ができるようになりました。

 どちらかというとZfcは派生モデル,飛び道具的な位置付けで,悪く言えばそれは卑屈に見えたりしたのですが,ZfはもうZの中核をなす新しいカテゴリであり,実に堂々としていると感じます。全体にそういう雰囲気を纏っていることが,私はなにより素晴らしいと感じています。

(2)画質と基本性能

 画質は文句なし。2400万画素クラスですのでトリミング耐性は低いですが,ダイナミックレンジも広く,発色も素晴らしいですし,ノイズも低く高感度特性も高いです。

 ぜひ触れておきたいのがモノクロモードの搭載です。以前からモノクロ撮影を行うモードを持っていますが,一々メニューから切り替えないといけないこともあり,私も使ってきませんでした。

 しかし,Zfではシャッター速度ダイアルの下に動画と静止画と同じスイッチで,モノクロの切り替えが行えるようにしてきました。動画撮影を同列ですよ。

 そしてこのモノクロは,3つのモードが選べるようになっています。モノクロはどの色をどの濃さで表現するかという問題に加えて,白から黒にどういうカーブで変化するかという2つの要素が絡み合ってなかなか難しい世界です。

 カラーの場合,実物との比較(あるいは記憶との比較)が可能で,比較対象に近いことが一応の正解となるわけですが,モノクロの場合色という情報の欠如が大きすぎて,どんだけ頑張っても実物には近づけません。

 なので,もはや最初から撮影者が伝えたい情報を取捨選択することが求められるという芸術性の高さがモノクロ写真にはあると思うのですが,これを積極的に楽しんで欲しいというのが,Zfを作った人の想いのようです。

 使ってみましたが,モノクロは楽しいです。フィルムによって随分結果が変わるのがモノクロですが,自分の考える結果がそのまま出てきた時の感動は大きな物があります。

 Zfでは,ディープモノクロームが私のイメージに近く,これがデジタルカメラの手軽さで手に入るのは素直にうれしいと感じました。しかもミラーレスらしく,ファインダーがモノクロになってくれると言うのですから,モノクロ撮影の難易度がぐっと下がってきます。

 これまでもこうしたモノクロモードを備えたカメラはありましたが,私はどれも遊びでちょっと使った程度で終わっていました。しかしZfでは案外積極的に使っていくことになるかも知れません。欲を言えば,もう少し階調が滑らかなモードがあったらいいなと思います。

 AF性能も良くなっています。D850を使う私にとっても,もう十分なものがあると思います。顔とか飛行機とか認識出来るようですが,そんなことより基本性能としてのAF精度や速度がここまで来たことが感慨深いです。

 手ぶれ補正はZシリーズ最高の,まさかの8段。あの大きなセンサーを動かして8段もの補正をするというのですからすごいなと思いますが,実際オールドレンズを装着してもぴたーっと像がファインダー内で吸い付くのを見ると,恐ろしささえ感じてしまいます。D850にVRレンズの組み合わせよりもスペック上も体感上も上です。

 私自身は手ぶれ補正が強力になっても,被写体ブレがある以上はシャッタースピードを下げられないと思っていますので,その恩恵は限定的と考えていますが,レリーズの本体ブレを強力に押さえられるというのは魅力的な一方で,ますます1枚1枚をラフに撮影してしまうんじゃないかと心配になります。

 そして連写速度。連写速度は重要ではないと言う人が多いですが,数字の問題と言うより,その連写に対応出来る骨格と筋肉を持っていることが重要であり,それは連写をしない場合でも,剛性感とか信頼性とか精度とか,そういう全体的な性能に大きく影響します。連写は使わなくても出来るモデルを私なら選びます。

 ZfはなんとJPEGで最大7.8コマ/秒,露出が安定しないらしい拡張モードではJPEGで14コマ/秒という速さです。これらはいずれもメカシャッター時ですので,私の言う骨格と筋肉という観点ではこの数字が重要になるのですが,確かにこの速度を実現するだけの機構が入っていることを感じさせるのが,シャッター音です。

 Zfcのパシャコンという感じの間延びした音に対し,Zfはカコンという感じの切れ味のいい音がします。この音はかなりいい音で,どんどんシャッターを切りたいと思わせるものがあります。

 連写速度の高さ,そして最高シャッタースピードが1/8000秒というのももはや上級機レベルであり,明らかに一山越えたところの表現力を身につけているといえるでしょう。

(3)操作性

 操作性はZfcを踏襲しているので,Zfcユーザーだった私にとっては,良い面も悪い面もそのまま継承という感じです。

 私は,せっかくZfcなんだからと積極的に軍艦部のダイアルを使っていましたから,Zfでもダイアルを中心にした使い方をしています。Zfcでは本体が小さくて,ファインダーを覗きながらシャッター速度を変更するのがちょっと大変だったのですが,Zfはちょうど良い大きさで,ファインダーを覗きながらの作業がやりやすくてよいです。

 ただ,ISO感度については散々言われたZfcの使い勝手の悪さがそのまま残っていて,ISO感度の自動設定との折り合いがよくありません。

 前後のコマンドダイアルは固くなったことと,指の引っかかりが強すぎてちょっと痛いので,あまり使いたくはありません。特にフロントのコマンドダイアルは指が自然に届かず,出来るだけ使わないような設定に変えてしまいました。

 前板の下側にあるボタンは特等席のボタンで,かつてF3ではAEロックでした。有効に使いたいのですが,私の場合,さっと握ると小指があたるので,大事な機能にはアサイン出来ません。

 あと,これはZfcもそうなのですが,ドライブモードやAFモードの切り替えがメニュー呼び出しなので非常に面倒です。Zfcは機能的に貧弱なので切り替えも必要なかったのですが,Zfは本気のカメラですので,これらの機能の切り替えにさっとアクセス出来るインターフェースが欲しい所です。

 グリップは握りやすくて,F3を彷彿とさせる物があります。握りやすいことと関連があると思いますが,フィルムカメラに比べて厚みがあって,これが握りやすさや安定感を増すことに繋がっていると思います。

 ただ,この厚みは結構不細工で,もっと薄く作る事にこだわって欲しいと思いました。特にLCDのバリアングルですが,これがなくなる代わりに薄くなるなら,私は喜んで薄い方を選ぶでしょう。

 EVFはZの伝統で相変わらず見やすく,我慢を強いられません。OVFの方が見やすいのは事実なのでOVF並になったとまでは言いませんが,このEVFで不満の出ることはありません。

 これら操作系のダイアルやボタンやEVFの良さを下支えしているのがプロセッサのEXPEED7だと思います。このプロセッサはZ8やZ9で使われている最新のものですが,おかげで動きがキビキビしていて,まるでメカニカルカメラを使っているような瞬発力を感じます。

(4)そのほか

 気になったこと,気に入らなかったことをちょっと書いておきます。

 まず電池。EN-EL15a/b/cが使えると言われているのですが,同梱の電池は空っぽなので,届いてすぐに撮影は出来ません。ならば早速充電をと思うのですが,充電器が同梱されていません。じゃどうするかといえば,本体にUSBから給電して充電です。

 ただ,これだと予備バッテリーを常備して撮影不可能な時間をゼロにするという運用が出来なくなってしまうので,どのみち充電器は必要になるんじゃないでしょうか。

 それから電池の種類についてです。EN-EL15系というのは名機D800で登場したバッテリーで,多くの機種に使われている電池です。ですが,内蔵されたセルの仕様が変わったことと,サードパーティー品を排除する対策が入った事で,無印/a/b/cの4つで相互互換性があるとはいえません。

 Zfでは無印が使用可能な電池から外れたのですが,私の手元にはD800を買ったときの予備バッテリーとして用意した無印があります。そこでこれをZfに入れて見ました。

 結果はNG。使用可能な電池を入れて下さいと怒られてしまいました,ほんの一瞬EVFが映るんですが・・・残念です。

 無印はD850に取っておき,EN-EL15aはZfとD850で使い回すことにします。

 そうそう,アイピースは丸形です。いやー,ニコンはよく分かってますね,この丸いアイピースが高級機の証であることを。Zになって丸いアイピースをどうするのかと思っていたのですが,Z6とZ7では角形に統一,しかしZ9で復活し,Z8はZ9と同じものを流用ということで,F時代と同じように2系統に分かれてしまいました。

 Zfcでは無理矢理丸いアイピースにしたのですが,Zではちゃんと丸い物が付けられています。ただ,昔は視度補正レンズが別に必要だったこともあって丸くなければならない理由もあったのですが,今は視度補正は内蔵されていますので,本当は丸い必要はありません。

 ここで,アイカップなんかが昔のように出てくれればうれしいのですが,かつては高級機から廉価なモデルまでくまなく用意されたアイカップが,Zでは全く用意されていないのです。誰も欲しくないのかなあ。

 私は昔からアイカップがないとダメな人なので,可能な限り装着しているのですが,ZfcでもF3時代のアイカップ(DK-2)を無理矢理貼り付けていました。

 Zfでも同様にアイピースに無理矢理DK-2を接着して使っています。サードパーティー品ではZ9ように大げさな形のアイカップが売られていたと思いますが,こういうプレーンなアイカップは,もうみんな必要ないと思っているのかもしれません。

 LCDのバリアングルについても1つ。実はZfcでは,LCDのヒンジの部分が割れるという持病がありました。中古品では結構な割合でひびが入っているそうですが,幸い私は割れることはありませんでした。

 力がかかりやすいこともそうですし,もしかすると材料や設計の問題かも知れないのですが,それにしてもあのヒンジの部分だけ出っ張っているのが気になります。ぶつければ割れてしまうものなので,Zfでは改良されているだろうと思っていました。

 しかし全く同じ構造です。材料など見えないところでの対策が入っていることを願ってやみません。


(5)最後に

 レトロな外観を纏った,最新の万能選手がZfです。気軽に買える金額ではなくなりましたし,その点で万人にお勧め出来るモデルとは言えないのですが,あらゆる表現に我慢を強いられない,本気のカメラだと思います。

 先にも書きましたが,デザインで売るのか性能で売るのかという二者択一の考え方は視野は狭く,そのどちらもという考えには私もはっとさせられました。

 そして,そのデザインというのも,可愛いとか懐かしいとか,そういう話ではなく,実際に使ってわかるのはその使いやすさです。カメラの長い歴史の中で,様々なデザインや操作性が世に問われたものの,今なお我々のイメージに残り続け,愛されているデザインは,FM2などのクラシックなデザインです。

 これは,持ちやすさや操作の仕方が理にかなっていること,合理的かつ直感的であることに尽きると思います。100年前のように,操作系がメカ設計の都合で決まった時代を乗り越え,今のように電気で操作系を自由に配置できる時代が来ても,今なお右肩にはレリーズボタンとシャッター速度ダイアルがあるのです。

 Z6の後継機が,Zのデザインでいずれ登場するでしょう。その時このZfとの棲み分けは,デザインの違いというよりも,どっちの操作系がお好みですか?という,ユーザーの使い勝手で選ばれるのではないかと思っています。

 ちなみにお値段のお話ですが,私はZfcとDXフォーマットのレンズ(18-140mmと24mm),それからあまりに大きすぎて使い道がないFマウントの200-500mmを処分して,約23万円を作りました。これならあと4万円ほど上乗せすればZfを買えるということで,今回は早々に予約を入れました。(D850は壊れるまで使うつもりです)

 Zfcと18-140mmが意外に高価だったことに驚いていますが,こうやって自分のライフスタイルの変化や環境の変化に合わせて機材の入れ替えをするのもまたカメラ道楽の楽しみです。

 他にもまだまだ試せていない機能も多く,なにより撮影枚数も少ない中で,これからどんどん出来る事が増えていくでしょう。Zfcの時は最初から諦めていたことが,Zfでは余裕で出来ることも多いわけで,時代の進化によるものと,クラスが上級に上がった事によるものに加えて,シャッターの小気味良さやダイヤルの感触の良さという官能的な部分で,Zfを楽しみたいと思います。

 

DL-103の針交換

 なんやかんやで私の話のネタになることが多い,浅からぬ縁の山下達郎さんが,満を持してアナログ盤で過去のアルバムを復刻させるというニュースを小耳に挟んだのが春頃のことだったと思います。

 なにもめんどくさいLPを,しかも4000円も出して買うもんか,と思っってほったらかしていたのですが,発売が近づくにつれ,どういうわけだか広告を目にすることが増えました。

 発売後も目につく広告に閉口し,ええいチラチラと鬱陶しいと,もう10年ぶりくらいに渋谷のタワーレコードに出向いて「FOR YOU」と「RIDE ON TIME」を買ってきました。そして,勢い余って「GREATEST HITS」まで予約してしまい,これで文句はなかろうと,私の中では解決済みの話になっていたのでした。

 時は流れ,9月末に予約していた「GRATEST HITS」が発売になったのですが,今年の夏は特に暑く,お作法の厳しいアナログ盤を聴こうという気が起きませんでした。それに,きっとこの暑さですから,カートリッジのダンパーのゴムがグニャグニャになっているに違いありません。もう少し涼しくなってから,という言い訳には十分です。

 かくして朝晩が少し肌寒く感じるようになった先日,ようやく重い腰を上げてアナログ盤を聴くことにしたのです。

 ところが,前回アナログ盤を聴いたのがもう4年も前の話。ちゃんと音が出るのかも怪しい中で,のんびりと準備を始めることにしました。カートリッジは邦楽ですから,もうDL-103一択です。

 身に覚えのないイコライザアンプの改造を分解して知った時には,「アルツハイマー病になるとこんな感じなんかなあ」と考えてみたり,グレースのトーンアームは右と左が逆になってることをすっかり忘れていたりと,なかなかスムーズに事が運ばない中でようやく音出しです。

 しかし,音を出してみると,左右の音量のバランスがおかしいです。片方だけ2dBくらいレベルが低いです。レベルを合わせてみても,どうも高音の伸びが悪く,周波数特性もアンバランスになっているようです。

 カートリッジをSPU#1に交換するとバランスは正常になりますので,問題はDL-103になると考えて良いでしょう。2時間ほど再生していると左右の音量バランスは1dBくらいになってきたのですが,相変わらずヌケが悪くて,これは我慢なりません。

 針の寿命でこういうことが起きるという話はあまり耳にしませんので,きっとダンパーの劣化か,内部機構の故障でしょう。

 こういう場合,カートリッジ本体の買い直しとなるわけですが,幸か不幸かDL-103はMCカートリッジで,針交換はすなわち本体交換です。MMカートリッジの針交換ほど安くはないのですが,本体を買うよりも随分安いので,DL-103所有者の特権とも言えるかも知れません。

 値段を調べると34000円ほど。うーん,以前このくらいの価格でDL-103を買った覚えがあるのですが,あれから何度も値上げがありましたし,致し方ないか・・・

 そんなことより,在庫です。在庫があれば店頭でその場で交換してもらえるはずですが,在庫というのはあくまで針交換用に準備された本体であり,通常の製品とは区別されています。交換品の在庫を持っているお店なんかそうそうあるわけなく,期待しないで調べていると新宿や秋葉原のヨドバシにあるじゃないですか。

 新宿なら1時間かかりません。DL-103を購入したのが2007年5月ということですので,今年で16年を経過していますから,新品に交換するというのも良い選択です。ちょっともったいない気もしますが・・・

 ということで,先日の日曜日の午後,DL-103の針交換品を購入してきました。

 久々の新宿だったので疲れてしまいましたが,戻ってきて早速取り付けて聴いてみましょう。

 どこかで読んだのですが,DL-103は,針交換をする度に感動する,らしいです。果たして,私も感動してしまいました。そう,DL-103の音です。

 新しいカートリッジに交換すれば,音が良くなって初めて感動するものです。しかし,今回はあくまでDL-103の元の音に戻っただけであり,良くなったわけではありません。それでもこの感動はなんでしょう,変わらないことに対する驚きでしょうか。

 工業製品ですし,ばらつきもあれば,長年の製造で材料が変更されることもあります。そんな量産品の宿命を乗り越えて,変わらないこと,つまりいつも同じ音を出すと言う安定性や信頼性を特徴の1つとしていることが,素晴らしいと感じました。

 DL-103の良さは,なにも足さずなにも引かず,刺激の少ない自然な音をそのまま出す事にあり,それはもちろん体験済みです。これい加えてよく言われるのが安定性や信頼性ですが,これを今回味わうことができたと思います。

 確かにMC-20もSPUも素晴らしいのですが,あれこれ交換しても結局最後にはDL-103に戻してしまいますし,録音していつも聴く音源にするときにはDL-103を選んでいますから,DL-103に対する信用というのは,絶対の物があるんだなと思います。

 悪く言えば地味な音ですから,DL-103には音をグレードアップするという魅力はありません。しかし,この高いレベルで標準器が存在し,それが長年変わらず生産されて入手が容易であることは,実は改良品を作る事よりも難しいんじゃないかと思いました。

 私のように,アナログ盤をたくさん持っておらず,聴く機会も環境もそんなに整っていない人間にとって,カートリッジを持つことの意味は,その違いを楽しむことにあります。

 違いを楽しむには,標準的なものが1つ定まっていなければなりません。それがこのDL-103なんだと思います。

 おそらくですが,針を折ってしまうとか,断線するとか,そういうことでもない限りDL-103の針交換品を買うことは,もうないでしょう。ですが,価格が上がっても,DL-103が作り続けられて,今と同じように入手も容易であることを願ってやみません。そう,日本にはDL-103があるのです。

 

P6201を2つも手に入れた

 さて,先日アクティブプローブのP6201を手に入れた話を,結局2465Aのメンテを行いことになったと言う形で書きましたが,今回はその続きです。

 10:1や100:1のアッテネータがないために実用的に使えないじゃないかという話はあるものの,とりあえず調整をやってみることにしました。うまく調整ができれば壊れていないという証にもなりますし。

 P6201はプローブですから,調整は不可欠です。ただちょっと面倒なのでやってない人も多いでしょう。ということでマニュアルを見ながら調整を進める事にするわけですが,高速な立ち上がりのパルスを発生させる機材もないし,1GHzの帯域を持つオシロスコープもありませんので,そこはもう自分の届く範囲でと言うことで割り切り他ありません。

 ところで,調整方法が書かれたマニュアル(サービスマニュアルではない)は新旧2種類があるようで,わかりやすさで言えば旧,確実性で言えば新ということになりそうです。今回は新マニュアルで進めます。

(1)まずは分解です。ネジを外して,上下のケースを外します。まるで三枚おろしのようになると思いますが,この状態でオシロスコープに接続します。もちろん電源も繋いで下さい。
そうそう,電源ラインに入った抵抗がかなり熱くなるので注意。

(2)まずはスイッチ類の設定です。50ΩTERMはINT,DC OFFSETはOFF,COUPLINGはDCに設定します。

(3)ではオフセットから調整します。オシロスコープの入力を1MΩのDC,最小レンジに設定し,この時輝線が0VになるようにR250を調整します。R250はDC OFFSETのスイッチがある面の端っこにあり「OUTPUT ZERO」と書かれています。

(4)次にバイアスの調整です。Q300というトランジスタ(マイクロディスク型とは珍しい)のベースとGNDの間の電圧をテスターで測定し,-3.3V±25mVになるようR230を調整します。Q300は先程のR250とは反対の面にあり,R230はR250と同じ面にあり「BIAS ADJ」と書かれています。

(5)実はこの2つの調整は温度変化に弱いので,上下のケースを仮組みして20分放置し,再調整を行います。

(6)高周波のゲインを調整します。ファンクションジェネレータで10kHzの方形波を作り,プローブに入力します。オシロスコープは0.2ms/div,50mV/divに設定しておき,波高値が5divになるようにファンクションジェネレータを調整します。

(7)出てきた方形波が綺麗な方形波になるよう,R370を調整します。R370はQ300同じ面にあり「H.F. GAIN」と書かれています。

(8)設定などはなにも変えず,今度はC220というトリマコンデンサを,方形波が綺麗に表示されるように調整します。これは高周波のクロスオーバー位相調整というらしいのですが,よくわかりません。とりあえずC220はDC OFFSETのスイッチと同じ面にあります。

(9)もしアッテネータがあれば,アッテネータを取り付けて,アッテネータの横についているトリマコンデンサを調整して方形波が綺麗に出るようにします。


 たったこれだけです。オフセットをゼロにすること,内部のトランジスタのバイアスを調整すること,そしていつもの方形波が綺麗に表示されるように2ヶ所同時に調整すること,だけです。

 実は,プローブ内部の調整もあるのですが,ここはそれほど狂わないだろと言うことと,壊してしまうかもしれないのでやめておくことにしました。

 また,低周波のゲインや50Ω終端抵抗もチェック対象なのですが,ここはチェックをするだけで調整出来ないので,結局意味がないということでキャンセルしました。一応見ておいた方が壊れていない証明になって安心出来るとは思います。


 さてさて,こうしてP6201の調整が終わり,ちゃんと観測出来ることが分かったので,いよいよ本気でアッテネータを手に入れる必要が出てきました。

 しかし,P6201の付属品ですし,これだけ手に入れるのは難しそうです。どうしたものかと考え込んでいると,耳寄りな情報が!

 とある中古測定器の業者さんが,無保証のジャンクとしてP6201を3000円ほどで売っているのを見つけました。プロの業者さんがジャンクで3000円ですから間違いなく壊れている(それもどうしようもないほどに)のは当たり前としても,付属品が一式揃っているというのが目を引きます。

 そう,ケースこそないんですが,それ以外の付属品は揃っているんです。アッテネータが壊れているという可能性は低いだろうし,仮に壊れていてもこれくらいなら直せそうです。

 こういうのは売り切れている場合が多いんですが,幸いにして在庫ありとのこと。すぐに購入して手に入れました。

 届いたP6201は思った以上に程度が良く,付属品も問題はありません。まずアッテネータのチェックをすると全く問題なしです。いやー,これですでに3000円の元は取ったなあ。

 次にP6201本体のチェックですが,実はこちらも問題はなさそうでした。調整も出来ましたし,先に手に入れたP6201と比較するために同時に同じ信号を測定して波形を重ねてみましたが,ぴったり重なりました。故障もなければ,特性のばらつきも(私の見える範囲では)小さくまとまっていそうです。

 ということで,結果的にアクティブプローブが2本も手に入ってしまいました。アッテネータが1つしかないのは残念ですが,1:100のものを上手く使えばなんとかなる場合も多いでしょう。水晶発振や高速クロック,バスの信号波形の確認に威力を発揮しそうです。


 ・・・こうなってくると,いちいち2465Aの電源を入れるのが面倒ですよね。1101Aという電源ユニットが未だに人気なのはP6201を現在のオシロスコープで需要があるからですが,その1101Aも決して安いわけでも,数が出ているわけでもありません。

 そこで世界中のマニアが自作を考えるわけです。±15Vでせいぜい500mA程度の綺麗な電源を出す電源器があればそれでOKなので自作の難易度は低いのですが,なかでも最高難度のものが,あの電源コネクタの入手です。

 古い2400シリーズから取り外す人,保守パーツを探し出して手配する人などいろいろいるようですが,どちらにしても簡単ではありません。

 私も1101A相当品を作ろうと思っているのですが,やはり難しいのは電源コネクタの入手です。

 ん,そういえば部品取りにと2445を1つ押し入れに入れてあったなあ。これから取り外してみますか・・・必ずしもついているとは限りませんが。

 

NIKKOR Z DX 24mm f/1.7とフード病

 久々の艦長日誌なのですが,NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を発売と同時に買ったので,そのレビューです。

 Zfcを購入して手元に置いて,ぱっと撮影に使えるようにしてあるのですが,撮影時のレスポンスとか,撮影後の画質を考えるとやっぱりD850の方が何段も上であることを思い知り,結局元の場所に戻してしまうという事が続いています。

 撮影というユーザー体験を考えた場合,Zfcはなんだか楽しくないということです。

 その原因の1つに,明るい単焦点レンズが「ボディキャップ」の代わりに常時装着されていないというのもあると考えていました。いや,キットレンズの28mm f/2,8もいいんですが,これはちょっと好みが違います。40mm f/2は画質は好みなのですが,焦点距離が35mm換算で60mmとちょっと長いです。

 D850の「ボディキャップ」が相変わらずシグマの35mm f/1.4ですから,これに近い撮影感覚を得るものが欲しいと思っていたら,DX専用の24mm f/1.7が出るというじゃありませんか。これは期待しないわけにはいきません。

 価格も手ごろ,フードも付属となかなか良い条件なので予約して買いましたが,実際には予約しなくても買えるくらい,今ひとつ人気のないレンズだったんだなあと実感します。それもそのはず,ZでDXで単焦点で24mmが欲しい人など,そんなにいるはずないです。

 前置きはこのくらいにして,さっとレビューです。

(1)質感

 持った感じはとてもしっかりしていて,質感はとてもよいです。これを実売36000円ほど(しかも純正)で買えるというのは,今どきなかなかない話だと思います。こういっては反論を受けるかも知れませんが,プラスチックがカメラに普通に使われるようになった1980年代後半のレンズに比べて,同じプラスチックを主体とする最近のレンズというのは,本当に質感も良くなったし安っぽくなくなったと思います。

 なんなら,AiAF24mm f/2.8とか,SMC PENTAX35mm f/2なんかと,NIKKOR Z DX 24mm f/1.7を並べて比べてみてください。これは単純はデザインの流行の問題とは違う話だと思います。

 マウント径が大きいZですので,レンズ自身を小さく作る事には限度があると思います。それでもぱっと手に取ったときの馴染み方は,やはりかつての手軽な単焦点レンズです。

 フォーカスリングは実に滑らか。回してもフォーカスが動かない最近のフォーカスリングを,手慰みで無意識に回してしまうのは,このレンズが初めてです。

 しかし,どうにも許せないのがフードです。フジツボフードがついてくるというので期待していましたが,こんなにごっついフジツボフードというのは,かなり不細工です。取り付けるともう一回り大きなレンズに化けてしまいます。

 さらに残念なのは,フィルターを取り付けたあとにフードを取り付けると,キノコみたいになってしまうことでしょう。この不細工さは筆舌に尽くしがたい。

 きっと,フィルターなしの状態での一体感を求めるあまり,フィルターのあとにフードを取り付けたときの美しさをあきらめたんだと思いますが,それにしてもこれは恥ずかしくて使う気になりません。

 当然このフードは金属製ではなく,プラスチックです。それも本体の質感とは裏腹に実に安っぽい,本当にオマケ感覚満載です。デザインした人も,設計した人も,きっと心のどこかで「これでいいのか」と思っていたんじゃないかと思います。

 そのフィルターの直径は46mm。まあ,デザイン上は46mmにするのも手だったとは思いますが,28mmにしても40mmにしても52mmというニコン伝統のサイズですから,これを踏襲するのが自然な発想だったと思いますし,その上で共通項のあるデザインにまとめてくれた方が,私はうれしかったです。


(2)画質

 安いレンズとは言え,そこは外れなしの誉れも高いZの純正レンズですし,非球面を2つも奢る今どきのレンズですので期待をしていたのですが,結論から言えば,Zとしてはそれなりのレンズだと思います。声を上げるほど高画質でもないし,写真がうまくなったと錯覚するほどのレンズでもないということです。

 誤解を受けたくないのですが,低画質かといえば全くそんなことはありません。20年前のこのクラスのレンズだったらもっと性能が低い(というか当時のフィルムの世界ならそれで十分高画質だった)でしょうから,このレンズの性能は間違いなく高く,これがこの大きさとこの価格で手に入ることには,驚きさえあります。

 しかし,絞り開放ではコントラストも低く,中央はともかく周辺の画質低下が大きいので全体として眠い画像になります。周辺光量の低下は私は気にしない人なのですが,35mm換算で周辺の光量が落ちるというのは,ちょっと考えたことがないと感じた人も多いんじゃないでしょうか。

 なので,少し絞って使うことになるのですが,f/2ではまだまだ,f/2.8でももう一歩,f/4くらいで鮮鋭度も上がって満足な画質になるのですが,それだと背景をぼかすのに一工夫が必要になるので,無理にこのレンズを使う必要があるのかと思うようになります。

 全体のバランスは良いレンズなのですが,拡大して眠い画質のレンズは,全体でもシャキッとしないレンズだったりしますから,私個人の印象としてはキットレンズの28mm f/2.8と同じ傾向かなあと思っています。


(3)操作感

 ここは別に不安を感じてはいなかったのですが,期待通りAFも素早く,小気味良く撮影が出来ます。ホールド感も良くて,これは鏡筒をマウント径に対して細く作っているからだろうと思います。Zマウントは大口径ですので,小柄なレンズのデザインは難しくなりますよね。

 操作とは違うのですが,絞りの最小値がなんとf/11までしかありません。f/16やf/22まであるのが普通だと思っていましたから,f/11なんていう常用域で打ち止めとは,Zの思想が透けて見えてきます。

(4)特筆すべき事

 これは書いておかないといけないことなのですが,寄れます。ニコンの広角レンズは「寄る」ことにこだわりが強いレンズも多く,また寄れることを性能の1つとして考えている節がありますが,このレンズもまさにそうで,レンズの先端から被写体まで,なんと12cmまで近づけます。

 これくらい近づけると,35mm換算で36mmとはいえパースを強調したり背景のボケをコントロール出来たりするので,本当に表現の幅が広がります。ニコンを使っていて良かったなあと思うことの1つです。


(5)まとめ

 まず,とにかく値上がりが激しいカメラ/レンズの世界において,実売36000円で買える明るいレンズというのはありがたいと思います。DXと割り切ったせいでもあると思うので,今年秋に予定されているフルサイズのクラシックデザインモデル(仮にZfとしましょうか)には使えませんが,私はZはAPS-Cでいいんじゃないかと思ってもいるので,これはこれでありだと思っています。

 D850くらいの画素数と画質であれば,ラフに撮影してトリミングで切り出しなんてことをついついやってしまうのですが,Zfcではそういうずるいことは出来ません。写真の基本の立ち返る良い機会のように思います。

 質感も高く,手触りも幸せなレンズですが,画質はZとしては凡庸で,最低でもf/2.8まで絞らないと後悔しそうな画質だと思います。

 そして最大の難点は,フードです。ついでにいうとフィルター径です。これだけはもう少しよく考えて欲しかったと思います。


(6)そんなわけでフード病

 そんなわけで,久々にフード病を発症しました。35mm換算で36mmですから結構深いフードが必要になるので,付属のフジツボフードが随分先に伸びているのも頷けます。

 なら無理にフジツボフードにする必要はありません。もっと美しいフードにしないといけないでしょう。

 そこで,お気に入りの,takumar28mmの角形フードを取り付けようと考えました。フィルター径を49mmにするステップアップリングを使って角形フードを取り付けて見ますが,これだと見た目はよくても,肝心の遮光特性が今ひとつで,もっと深いフードでないといけません。

 手持ちのPENTAXの50mm用の角形フードがはデザイン面でも遮光特性でも100点なのですが,これはフードをしたままレンズキャップを取り付けられないので,常用は厳しいです。

 あれこれを試行錯誤を行ったところ,PENTAXの50mm用の丸形フード(35年前に買いました)を取り付けています。そんなに深いフードではないのですが,細いので十分な遮光特性が得られています。

 見た目も悪くないですし,キャップもフードを取り付けたままで出来ます。当分これでいこうと思います。

 そうそう,保護フィルターをどこに付けるかでフードの選択肢も変わってくるのですが,出来るだけ有害な反射を減らしたいので,前玉に近い場所に取り付けることにしました。

 そうするとフィルターは46mmで取り付ける事になるわけですが,これもまたフード選びを厳しいものにしています。もしステップアップリングの後の49mmで取り付けるように出来ると,手持ちの関係でもう少しいろいろなフードが選択肢に入ってくるだけに,随分迷いました。(そんなに迷うところか?)

 もう少し試行錯誤をやってみても面白いでしょう。もう一段49mm-52mmのステップアップリングを入れて,純正の35mm用フードを取り付けても面白いでしょうし,もしかしたら45mm f/2.8Pのフジツボフードを付けてみてもいいかも知れないです。

 フード病が治るには,もう少し療養が必要みたいです。


 

microKEY AirとJupiter-XmをワイヤレスMIDIで繋ぐ

  • 2023/06/15 13:03
  • カテゴリー:散財

 私が気晴らしの1つは,シンセサイザーを演奏することです。なにも本気で演奏するのではなく,さっと電源を入れて,5分か10分か音を出すという気軽さが,気晴らしならではの楽しみ方です。

 この気晴らしは昔から続いていますが,現在の機材はJupiter-Xmです。さすがにカシオトーンと同じ大きさではありませんが,気軽さはまさにカシオトーンといっていいくらいで,電池で動くことも,スピーカーを内蔵していることも,気晴らしにはとても大切な機能だと思います。

 音も良いですし,弾きやすく強弱を付けやすいミニ鍵盤も気に入っていますが,1つだけ気に入らないことがあるのは37鍵しかない鍵盤です。

 37鍵だと両手で弾くピアノやオルガン,シンセパッドなんかも狭すぎて演奏に幅が出ませんし,片手で弾くリードなどだって,この音域では窮屈です。もし49鍵のJupiter-Xmが出たら買い換えようと思っているくらい,不満です。

 もともとJupiter-XmはJupiter-Xの音源モジュールにPC用のミニキーボードがついたくらいの製品なので,37鍵という鍵盤は本気で演奏するようなものではないのでしょうが,なかり良く出来た鍵盤だし,ハードウェアシンセの楽しさや魅力,機動力を考えると49鍵や61鍵のモデルがあってもよいと思います。

 発売から4年経過しましたが,49鍵モデルが出るような話もなく,どうしたものかと考えていると,49鍵の外部キーボードを使うことを考えました。外部キーボードですから,ミニ鍵盤でなくとも標準鍵盤も選択肢に入ってきます。

 しかし,本体より大きなキーボードというのもなんだかもったいないので,今回はミニ鍵盤から選ぶ事にしました。

 ミニ鍵盤の定番と言えば,コルグのmicroKEYシリーズです。安い,小さいだけではなく,演奏のしやすい高品質な鍵盤であることも耳にしています。しかもBluetoothLEを使ったワイヤレスMIDIにも対応したモデルも用意されていて,さすがコルグだなと思います。

 49鍵のmicroKEY Airはお値段が15000円ほど。これでJupiter-Xmが49鍵モデルになるなら安いです。繋ぎ方など調べ切れていない(説明書を見ても判断出来ない)ので不安もありましたが,まあどうにかなるだろうと購入することにしました。

 翌日には届いたので早速接続を試みます。最初はBluetoothです。しかし,残念な事にJupiter-XmとはBluetoothによるワイヤレスMIDIでの接続は出来ませんでした。説明書には記載がなかったと思うのですが,Jupiter-XmのBluetoothはSource機器にはなれないようで,SinkデバイスであるmicroKEY Airに繋げることはできないのでした。

 そうなると有線接続なのですが,これも結論を書くとアウト。microKEY Airの有線接続はUSB MIDIだけで,通常のMIDIは出ていません。一方のJupiter-Xmについては,USB MIDIは基本的にはDEVICE側だけの対応です。USBメモリ接続用にHOSTも搭載されていますが,USB MIDIが通るかどうかは取説には書かれていません。

 試してみたところ,音は出ました。しかし,あまりにレイテンシが大きいことと,発音タイミングがばらつき,全く使い物になりません。シンプルな4つ打ちが随分と跳ねてしまうので,笑ってしまうほどです。

 こうなると標準のMIDIで繋ぐことを考えないといけないのですが,この段階でmicroKEY Airは使えない事になります。そこで,USB MIDIを通常のMIDIに変換するコンバータを探してみましたが,こういうものはなかなか売られていません。自作された方もいらっしゃいましたが,ファームが非公開だったり,ちょっと大げさだったりしたので,この方向はパスです。

 microKEY Airを返品して別の品種に買い直そうかと思っていた所,ふと目に入ったのが標準MIDIをワイヤレスMIDIに変換するアイテムです。これが上手くいけば,microKEY Airとワイヤレスで繋ぐことが出来るでしょう。

 問題は相性です。ローランドやヤマハからも出ていますが,一番信頼出来そうだったのが,CEGというシンガポールのメーカーが作っている,WIDI Masterという製品でした。

 電源が入ればとにかく自分から繋ぎにいくので,本当にケーブルではないMIDIケーブルとして扱えるだそうです。2,3年ほど前にすでに有名になっていたものですが,当時に比べて若干価格も上がっているみたいです。

 これを6000円ほどで購入することにしました。今回の目的に使えなくても,汎用のワイヤレスMIDIならいくらでも使い道があるでしょう。

 これも翌日届いたので早速試してみました。

 すると,なんともあっさりと,Jupiter-XmとmicroKEY Airが勝手に繋がって音の出る状態になってくれました。いやー,これは画期的です。

 この,「勝手に」というのが実は面倒な場合もあり,タイミングによってはJupiter-XmのBluetooth MIDIと繋がってしまうこともあります。そうなると接続を切る作業が発生するのでなかなか面倒なのですが,この場合はJupiter-XmのBluetoothを最初からOFFにしておけば問題は解決です。

 さて,繋がっただけではダメで,ちゃんと演奏に耐える物かどうかを調べないといけません。まずレイテンシです。レイテンシはアタックの強いピアノでは結構気になりますが,アタックの弱い音ならまず問題になりません。

 ただ,Jupiter-Xmの鍵盤と弾き比べてみると,やはり音が出るまでの時間が短い方がダイレクト感があります。この楽しさは言葉に出来ないです。

 鍵盤自身の評価もしないとです。Jupiter-Xmのミニ鍵盤比べて,長さが短いのが1つ,それから白鍵と黒鍵の間隔が少し広めになっています。また,ストロークも短いように思います。

 長さが短いこと鍵盤は,想像以上に弾きにくいです。そのせいもあってか,強弱もつきにくいように思います。Jupiter-Xmの方が支点までの距離があるので,キーを押す位置によって重さや押し込みの速度に違いが少なくて済むせいでしょうか,とにかくmicroKEY Airの鍵盤は思い通りに演奏出来ないのです。

 強弱がつきにくいのでのっぺりとした演奏になりがちですし,かといって意識して強く演奏するとミスを連発します。慣れているのが一番の原因だとは思いますが,Jupiter-Xmの鍵盤は本当に良く出来ているなあと思いました。

 ということで,一応microKEY AIrを使って49鍵という広さをJupiter-Xmに持たせる事ができました。確かに演奏しにくく強弱も付けにくいですが,49鍵という広さはやはり期待通りの心地よさで,最初からこの鍵盤数で発売して欲しかったなあとつくづく思いました。

 それと,ワイヤレスMIDIは実に快適です。レイテンシも小さいとは言えませんし,気にならないわけではありませんが,実用レベルだとは思います。むしろ有線で繋がった不自由さから解き放たれることが最大のメリットな訳で,今回のような外部キーボードでさえもその利便性は強く感じる事が出来ました。

 そんな中でこのWIDI Masterという製品は評判通りの安定性です。繋がるのも簡単,繋がってからも安定しているので,これはよい製品に巡り逢ったと思います。


 

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