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昇圧型スイッチングレギュレータを我らに

  • 2008/10/15 17:12
  • カテゴリー:make:

ファイル 224-1.jpg

 電子工作をやってきて,先日とうとう手に入れた技術が,電圧を上げることです。スイッチングレギュレータを使って昇圧,というやつですね。

 何だ今さらと思われるでしょうし,私自身もそういう気持ちなわけですが,手軽な方法がなかったのだから仕方がないと,居直ってみます。

 78xxシリーズという俗にいう三端子レギュレータが簡単に手に入るようになるまで,電子工作のアマチュア達は電源を安定化せず,電池で動かすか,あるいは変圧-整流-平滑という三段階で商用電源から作った非安定化電源を使っていました。

 もちろん,それなりの規模の安定化電源回路をディスクリートで作って搭載するマニアもいたのですが,動かしたい回路よりも安定化電源回路の方が規模がでかくなったりすると本末転倒です。

 そもそも電池はなかなか都合のいい電源で,安価で持ち運びもでき,そこそこ安定化されているし,電圧も手頃です。それにノイズもリプルも含みません。

 しかし,TTLのように電圧が一定でなければならないデバイスが使われるようになったり,電池では消費電流が大きいため不経済で商用電源やACアダプタを用いる場合には,やはり安定化電源回路が必要です。

 そこへ登場したのが三端子レギュレータです。80年代後半には100円程度の価格になっていましたが,変圧-整流-平滑の後にくっつけるだけで安定化電源が完成,しつこいリプルもあっさり除去と,一気に安定化された電源が身近な存在になりました。

 とはいえ,あくまで高い電圧から低い電圧を得るのに,その差分を熱にして捨ててしまうことで安定化するもったいない方式によるものに過ぎません。エネルギーを「変換」するという方法で安定化するスイッチングレギュレータは,アマチュアにはなかなか難易度が高いままでした。だから,高い電圧を低くすることは簡単でも,逆は夢のままだったのです。

 「初歩のラジオ」などの電子工作の雑誌で見たことがある昇圧系の記事として,LM3909を使ったチャージポンプ,フォワードコンバータを応用した電子蛍光灯,電子びっくり箱,そしてTL497を使ったDC-DCコンバータくらいがあったように記憶しています。

 TL497を使ったDC-DCコンバータは,確か電池1本か2本を9Vまで昇圧して006Pの代わりにするような便利グッズだったように思うのですが,大きなコイルやコンデンサが必要で,大げさになってしまったように思います。


 さて先日,動作確認のために昨年秋に修理したキヤノンのX-07とNECのPC-2001の2つの機種の電源を入れてみました。X-07は「BatteryLow」の表示が出てしまいましたし,PC-2001は表示が薄く,使い物になりません。

 こういう「動態保存機」を維持するのに,乾電池は不経済で,よって自己放電の少ないエネループが最適なのですが,残念なのは起電力が1.2Vと乾電池に比べて0.3Vも低いことです。

 この頃の電池で動くパソコンは,電池を4本使って6V作り,これをダイオードでドロップさせて5V付近を供給していますから,ニッケル水素電池を4本使って4.8Vを作っても,実は動作電圧範囲ギリギリなわけです。先のX-07もPC-2001も,電池を取り出して測ってみると,1.2V/本とまだまだ十分な電圧です。

 それでも動いているうちは良いのですが,少し電圧が下がるともう「電池切れ」というサインが出てきます。

 例えばですね,単三のアルカリ電池は1500mAの電流を1時間供給できると,一般的に言われています。しかし,これは新品の電池を0.9Vまで使い切った場合に1500mA引き出せるという意味で,これが1.3Vや1.2Vくらいで使えなくなってしまうと,まだまだ残っているのに電池を交換しないといけなくなるわけです。

 ニッケル水素電池の場合,終始電圧は1セルあたり1.0Vと言われています。ですが,X-07が電池切れのサインを出すのは1.15V程度です。ここで交換してしまうと,全然使い切れません。

 PC-2001に至っては,4.8V位ですでに電池切れマークが点灯し,液晶表示も薄くなっています。どう考えてもアルカリ電池でしか使えまないようです。でもエネループで使いたいしなあ。

 X-07は4.6VというギリギリICが動作する電圧をディスクリートで作った安定化電源回路で生成しているので真面目だなと思うのですが,PC-2001やPC-E500などでは,単三電池4本の6Vからダイオードを1つ入れて5.4Vに落とし,これをそのままCPUやRAMに突っ込んでいます。いやー,実に牧歌的な時代だったんだなあと,そんな風に思います。


 そんなある日,三端子の昇圧型DC-DCコンバータICがアマチュア達の間で流行っていると耳にしました。秋葉原や日本橋で買えないようなものはすでに珍しいものではなくなっており,気が付かないうちに我々の持っているポータブル機器に内蔵されているものなのですが,アマチュアが1個2個から気軽に購入できるこの手のICは,まだまだ遠い存在です。

 調べて見ると,それはHT7750AというICでした。台湾のHOLTEKというメーカーのもので,TO-92という2SC1815なんかと同じようなパッケージに入っています。見た目はそれこそ三端子レギュレータと同じで,実にアマチュア向けです。

 これにチョークコイル,ショットキーダイオード,そしてコンデンサを2つほどくっつけると,1Vあたりから5Vを作ることが出来るのです。いやー,夢のようです。

 しかもお値段は1つ60円程度。マルツ電波で買うと30個以上で単価50円になります。安い。アマチュア向けの定番になりそうな気がします。

 簡単にHT7750Aのスペックを紹介しておきましょう。

・PFM方式(周波数200kHz)
・最低動作電圧0.7Vtyp.
・効率85%typ.
・出力電圧誤差±2.5%typ.
・出力電圧は2.7,3.0,3.3,5.0の4種類
・出力電流は最大200mA
・消費電流5uAtyp.
・スイッチングFET内蔵
・CMOS

 うーん,なかなか良くできたICです。PFMというのはスイッチングレギュレータの回路方式の1つで,一般的にはPWMが使われていますが,PWMがスイッチング周波数を一定にし,デューティを可変して電圧を安定化するのに対し,PFMは周波数を可変して制御します。

 PWMは負荷が軽いときでも同じ周波数で発振しているのでIC自身の消費電流が多めになりがちで,これが軽負荷時の効率を悪化させます。しかしPFMは電圧が下がったらスイッチON,上がったらOFFで制御しますので,負荷が軽いときには周波数が下がり,自分自身の消費電流も大幅に低下します。PFMが軽負荷のスイッチングレギュレータで効率を稼げるのはこれが理由です。

 詳しい話は書きませんが,PFMはPWMに比べて動作が安定していて,発振しにくいことも利点です。ぱっと作ってそこそこの性能が誰でも出せる,というのは,半導体にとってはとても大事な性能の1つです。

 PFMは周波数が可変するのでノイズ対策が面倒になることもあり,実際の設計ではPFMとPWMを使い分ける,もしくは両方の機能を持つICを使うのですが,今回の私の用途ではPFMでちょうどよかったと言えます。

 効率85%というのは「低い」と思う人もいると思いますが,同期整流でもない昇圧型のDC-DCコンバータで85%を無調整でたたき出すというのは,私は大したものだと思います。昇圧型では頑張って作っても90%くらいが関の山ですし,素人がぱっと作って本当に85%取れるなら優秀でしょう。

 消費電流が5uAというのもばっちりですね。負荷が重いときはIC自身が消費する電流など大した影響はありませんが,軽負荷時には無視できなくなります。特に,今回のようにSRAMのバックアップを行う回路では数十uAの消費電流が長く続くことになりますから,とてもありがたいです。

 出力電圧は固定で,4つのうちから選びます。好きな電圧が得られないことは不自由ですが,ぱっと作って±2.5%以内の希望の電圧が出てくるというのは確実ですし,楽ちんです。少しなら電圧を調整出来ます(後述します)し,最大200mAまで取り出せるという手頃さも(放熱設計などを考えなくてよいという点も含めて)アマチュア向きにはちょうどよいと思います。

 で,これを使うと,4.8Vのニッケル水素電池から,アルカリ電池の6V並の電圧を生成できるようになり,PC-2001やX-07を救うことが出来るんではないか,と思い立ちました。古いハンドヘルドマシンに近代的な電源回路を内蔵するという試みですね。

 早速注文し,届くまでに仕様書を詳しく見てみます。100uHのチョークコイルと手持ちの300mAクラスのショットキーダイオード,そしてタンタルコンデンサを集めて,準備完了。

 この手の電源の設計はコイルの選定がキモです。少し乱暴な言い方ですが,取り出す電流が多いときにはインダクタンスを大きくしないといけません。しかし,インダクタンスを確保するには,簡単に言うとたくさんコイルを巻かないといけませんから,そうすると直流抵抗成分が増えて,効率が悪くなります。

 HT7750Aをマルツ電波で買った関係で一緒にコイルも調達しますが,ここは面実装品の背の低いコイルが買えるのがよいですね。東光のA921CYのうち,100uHのものを選びました。価格は90円。

 これらが届いてから早速組み立て開始です。

 HT7750Aは出力電圧が5V固定です。5Vではちょっと心許ないですから,あと少しだけ電圧を上げる工夫をしてみます。

 1つは出力電圧をコンパレータの入力に戻す端子に抵抗を入れることです。こうすると内部の分圧比が変わり,高い電圧が出てきます。適当にやってみると10V位まで電圧が出てきましたが,これってHT7750Aの耐圧を越えているので即却下です。なんか電圧もふらふらとして危なっかしいので,この方法は危険と判断しました。

 もう1つは,GNDを浮かせることです。ここに普通のダイオードを入れると,GNDが0.6Vほど(実際は流れる電流が小さいので0.7から0.8Vくらい)浮きます。これで簡単に5.6Vまで電圧をかさ上げ出来ました。このダイオードを流れる電流はICが消費するわずかな電流だけですので,小型のスイッチングダイオードでも構いません。

 三端子レギュレータではよく使われたテクニックでしたが,これで本当に正しいのかどうか,私にはわかりません。たぶん大丈夫だと思いますが・・・

 あと,ちょっと出力にノイズが多く,発振しやすくなっている可能性も心配だったので,0.1uFのパスコンをGNDと出力の間に入れてみました。目視でもノイズが減ったと分かるほどの変化があり,これは正解です。

 というわけで,4.8Vから6V付近をあっさり生成出来たことに気をよくし,モジュール化して4つほど作ってみました。

ファイル 224-2.jpg

 では評価してみましょう。

 無負荷時の消費電流は入力電圧が低いほど増えますが,3Vで30uAほど,4.5Vで15uAほどで,一応合格の範囲です。

 安定した電圧(実測で5.9V)を出力できる入力電圧の最低ラインは負荷40mA時で2.2V。ちなみにGNDをダイオードで浮かせているから2.2Vなのであって,単体の特性では1.5Vくらいからになると思われます。動作そのものは1Vくらいからするようですが,電圧も上がらず,電流も引けず,実際には使えません。

 効率ですが,下のような感じになりました。まずはダイオードでGNDを浮かせてあるものの結果です。

・入力:4.48V,57.6mA 出力:5.96V,35.4mA 効率:81.8%
・入力:3.02V,99.1mA 出力:5.90V,35.0mA 効率:69.0%

 入力3V時の効率が予想外に悪いです。効率がGNDを浮かせたことによるのであれば,この方法で電圧のかさ上げをするのは失敗ということになります。そこで,単体の特性を評価してみます。

・入力:4.49V,41.4mA 出力:5.16V,30.7mA 効率:85.7%
・入力:3.59V,51.4mA 出力:5.16V,30.6mA 効率:85.5%
・入力:3.02V,61.6mA 出力:5.16V,30.5mA 効率:84.7%

 ほぼスペック通りの結果になりました。こちらはなかなか良い感じです。

 この結果から考えると,やはりダイオードによるかさ上げは効率の悪化を招くようです。入力も出力もダイオード1つ分の0.7Vだけかさ上げされていますので,HT7750Aは0.7V低い電圧で動作し,しかもより重い負荷が繋がっていると見る事ができますが,それを加味して入力の電圧が4Vくらいあれば,80%以上の効率を確保することは出来そうです。

 今回のゴールはエネループ4本で6Vを得る,であり,ニッケル水素電池の終止電圧が1セルあたり1.0V,4本では4.0Vですから,これでもとりあえず実用にはなります。ギリギリセーフとしましょう・・・(プロの世界では通用しないです)

 さて,もう少し電流を引っ張ってみます。

・入力4.50V,130.2mA 出力5.26V,96.1mA 効率86.7%

 効率のピークは50mAくらいのはずなのですが,100mA引っ張って87%近くまで上がっています。うむー,スイッチングレギュレータは奥が深いですね。

 結論ですが,データシートの回路をそのまま組み立てるだけで85%の効率は簡単に確保出来ます。電流も100mAくらいなら楽々引っ張れそうですし,リプルも少なく,ノイズも小さいので,手軽で良くできたICだと思います。

 で,ダイオードによる電圧のかさ上げ作戦は,かさ上げされた分の電圧を差し引いて比較すると,4%から5%程度の効率の悪化があります。ただし動作そのものに支障はなく,4V以上で使うなら効率も80%は確保出来そうです。また,IC自身の消費電流は増えません。使い方次第では便利でしょう。


 というわけで,早速PC-2001とX-07に組み込んでみました。電池からの配線をぶった切り,間にこのモジュールを挟み込むだけです。

 結果は上々。PC-2001は見やすく,生き生きと動き出し,X-07も「LowBattery」の表示を出す事はなくなりました。

 これだけお手軽に昇圧回路が作れるようになると,いろんなものに応用が利きそうです。コストも全部で200円か300円かそんなもんですので,値段もお手軽です。これでようやく,昇圧回路を我が手にしたという実感がわきました。

 これでエネループを骨までしゃぶれる・・・そんな風に思って布団に入ったのですが,寝る前に少し考えてみると,まずいことが・・・

 以下次号。

PE-101Aと6V6シングルアンプ

  • 2008/10/07 12:36
  • カテゴリー:make:

 先日押し入れから6V6シングルアンプを引っ張り出して,PE-101Aに繋いで音を出してみてがっかりしたことを書きましたが,このままあきらめてしまうのもつまらないので,少し手を考えてみました。

 まず,このアンプの出力は約3.5W。効率90dBのPE-101Aとの組み合わせでは,小さい部屋ならまずまずの出力です。ただし,線の細さが面白くない,低音を下支えする安定感がないことが問題です。

 帰還量は現在約16dBと結構かけていますが,ダンピングファクタは約4.9と,なんとか合格点です。しかしやっぱりもう少し欲しいところでしょう。ちなみに初段管の6SL7については,歪みの小さくなる動作条件で動かしていることがはっきりしたので,ここは問題ないとして先に進めます。

 それで,前回も書きましたが3極管接続を行い,帰還量を減らすという作戦を実際にやってみたくなりました。出力が大幅に減るので心配ですが,まあやるだけやってみましょう。

 配線を変更する前に,ACケーブルをプラグ式に改良します。以前はシャシーが込み入った関係で直出しだったのですが,取り回しが面倒なのでメガネプラグにしました。

 これが終わってから,3極管接続への改造です。スクリーングリッドをプレートにくっつけるだけの話ですから,とても簡単なはずです。発振止めの100Ωをシリーズに入れることもあるようですが,私の場合は面倒な出入れません。出力も小さいので大丈夫でしょう。

 しかし,スクリーングリッドに電源を供給する回路が浮いてしまうわけですから,負荷が軽くなって電圧が上がります。そうするとコンデンサの耐圧を越えてしまうかも知れず,もしそうなるとコンデンサを外すなどの対応が必要です。

 幸い,350Vの耐圧に対し,300V程度で収まってくれたので,対策は必要なし。予定通りスクリーングリッドをプレートに接続します。

 プレート電圧を測定すると300V程度です。ん?確か6V6のスクリーングリッドの耐圧は285Vではなかったっけ?定格オーバーになってしまうとまずいです。調べてみると,6V6は後期には耐圧が315Vに引き上げられていることと,3極管接続ではプレートと同じ電圧でもよい(そうでないと3極管接続のプレート電圧がスクリーングリッドの耐圧に制限されただでさえ小さい出力がますます小さくなる)とされる説があるらしく,今回はとりあえずよしとしましょう。

 改造が終わり,各部の電圧を測定してスピーカを繋いでみます。音を出してみるとあきらかにこれまでとは異なる音です。

 低音のポンポンいう感じがなくなり,音圧は乏しいながらも頑張って下支えをしているような音です。ボーカルの角が取れた音は以前にも増してふくよかになり,聞き疲れしません。

 これはいい。3極管接続というのは思った以上によいです。

 ここで終わっても良かったのですが,帰還量の調整と測定をしないとダメだろうと,ささっと測定を始めてみました。

 まず最大出力は,目視による正弦波のクリップが始まるのが1kHzで0.98W。1.5Wくらいは取れるかなと思っていたので,予想以上に低いです。これで足りるかどうか少々心配です。

 ダンピングファクタは500Hz,8Ω負荷で約6.2。あれ,5極管接続とあんまり変わりません。

 ではゲインを見てみると,約5.9dBです。これもあまり変わりません。では,帰還量はいくつなんだと測定すると,これが8.93dBと小さくなっています。

 なんだか,なんの調整もしないで,ちょうど私が狙っていた点に落ち着いてくれていました。5極管接続では大きかったゲインを大量の負帰還で小さくしたものが,3極管接続では最終的なゲインはほぼ同じで,帰還量が減っている,ということは裸のゲインも小さかったということになります。

 Ep-Ip曲線を見てみれば,5極管接続と3極管接続で(同じ負荷なら)ゲインに差が出ることは当たり前なわけで,つくづく5極管(今気が付きましたが6V6はビーム4極管ですね)というのは感度も効率も高い,優秀な真空管だったんだなと実感しました。

 周波数特性はあまり関係ないと思いつつ,0.73W出力時で-3dBになった周波数は,下が9.8Hz,上が98.5kHzと全然問題なし。ただし20Hz以下の歪みの大きさは目を覆うばかりです。完全にトランスの性能が出てますね。

 高域が結構伸びているので,トランスを含むオーバーオールでの負帰還をかけた今回の回路では,発振するかも知れません。1uFのコンデンサを出力に繋いで1kHzの矩形波を入れてみましたが,元々きちんと位相補償を行ってあるので,今回もわずかにリンギングが出たくらいで済みました。これなら問題なしです。

 ということで,測定を始めるまではすごく面倒だったのですが,終わってみると特に定数の検討をすることもなく,さっと終わりました。こうして簡単でもいいから様子を見ておくと,安心です。

 そして組み立てを終えて,リスニングに使ってみましょう。聞き疲れをしないこと,ふくよかな中域にとても自然な感じがすること,小さな音でも全然平気で,何かしながら聴くのにぴったりという印象は相変わらず,いやむしろ強まったといえるでしょうか。遊びに来ていた友人も「これはBGMに最適」と同じような感想だったので,あながちウソでもないでしょう。

 それにしても1Wでも立派なものですね。真空管アンプは元々パワーが小さくても実用になると言われているのですが,それも今回実感しました。3極管接続ですからソフトディストーションであることも理由でしょう。BGMとして使うこと,元々ニアフィールドで使うこと,を考えると,出力を下げても音質を確保するという今回の目論見は正解だったと思います。

F-757を調整してみる

  • 2008/07/11 15:58
  • カテゴリー:make:

 最近,日曜日の午後など,特に聴きたい音楽があるわけでもないようなときは,FMラジオを聞くことがあったりします。

 エアチェックに耐えないような番組ばかりと旧来のファンは(私も含め)FMから遠ざかる一方ではありますが,少し考え方を変えてみるとその面白さに気が付きます。

 FM放送は,その特徴から高音質,ステレオ放送がウリでしたから,エアチェックを前提とした音楽放送を中心として親しまれてきたわけですが,FM放送の特徴は別に高音質というだけではありません。

 1つは混信がない。同じ周波数なら強い電波が勝ち,弱い電波は消されます。ということは,地域に密着した小さいサービスエリアを前提とする,地域放送局が成立するわけです。

 1つには電波の状況による,音量の変化が少ない。AMラジオとFMラジオを車の中で聞き比べれば分かりますが,AMラジオは走っていると音量の変化がけっこうあります。一方のFMラジオは,きちんと音がきこえていれば音量があまり変わりません。声を聞くときなどこれは結構重要で,カーラジオにFMというのは実に相性がよいのです。ということは,車の中で聞いていて楽しい番組が揃うことになります。

 高音質以外にも,FM変調をかけることで得られるメリットはあり,やはりFMは存在意義があるなあと,そんな風に思います。

 それで,以前は高音質一辺倒だった放送局側の考えも,こうした状況から個性が出てくるようになります。地域FMなどはその最たる例でしょうし,NHK-FMが比較的トラディショナルな方針であるのに対し,他の民放大手は娯楽性を高めています。

 それが技術的に,あるいは音質的にも大きな差となっており,NHK-FMの音質の高さはマニアの間では知らない人はいない程です。対してJ-WAVEなどは音質を積極的にいじって,車の中などで聞きやすくする先駆者でした。

 私のFMの受信環境は,ラジオなどという簡便なものがないおかしな状態ゆえ,F-757というパイオニア製の比較的高級なチューナーがメインです。F-757はAMステレオが受信できない以外はほとんど後継機F-777と同じで,F-777が中古市場でも大人気であることに私は結構気をよくしています。

 当時展示品かなにかを2,3万円で購入したことしか覚えていませんが,それまで使っていたアナログチューナーに比べて,受信性能も音質も安定性も格段に向上したことが印象に残っています。

 ところが,NHK-FMだけやたらと歪むのです。他は全然大丈夫なんですが,時報やピアノ,サ行の音が濁ります。これはとても辛いです。

 私の地域はいわゆる強電界地区ですので,大げさなアンテナを上げなくても十分とされているのですが,私は横着をして部屋に引き込まれているTVのアンテナから分配をして,FMチューナーに入れています。レベルは主要局すべてでS5,NHK-FMも例外ではありません。

 例えば,TOKYO-FMやJ-WAVEも同じように歪むなら,電波に問題があるという気がしたのですが,問題はNHK-FMだけです。それまで絶対の信頼を置いていたF-757に,ちょっと疑念が沸いてきました。

 いろいろ調べて見ると,やはりチューナーは経年変化に弱いらしいです。高級機ほど調整箇所も多く,20年も経てばまず再調整をしないと性能は出ないとのこと。

 しかし,調整をお願いするにはサービスセンターに持ち込む必要がありますし,F-757を購入してからすでに16年,断られてもおかしくない状況です。今後も維持していこうと思うなら,自分で調整くらい出来た方がいいです。

 調整そのものは難しくありません。むしろ楽だと思いますが,基準信号発生器と呼ばれる高価な測定器がなければ,全く手出しが出来ないのです。

 ともあれ,F-757のサービスマニュアルを探してみます。海外のマニアはなんでもかんでも自分でやる熱い人が多く,そのせいか海外サイトにはサービスマニュアルがよく出回っています。サービスマニュアルも著作物ですので限りなく黒に近いグレーなのですが・・・

 サービスマニュアルによる調整手順は予想通り簡単で,測定器さえあれば出来そうな感じです。

 さて,問題は基準信号発生器です。買うと言っても新品は数十万円,それで出来ることはFMラジオの調整だけ。いやー,これはさすがに買えないです。中古は数万円くらいで出てきますが,今欲しいといってすぐに見つかる訳ではありませんし,それに数万円で出来ることが相変わらずFMラジオの調整だけです。却下でしょう。

 ま,悩む前にふたを開けてみましょう。

 でかい1枚ものの片面基板が顔を出します。安いベークライトの基板です。ここにびっしりと部品がついています。調整可能なコイル,トリマコンデンサ,可変抵抗もおびただしい数になっていて,これすべてを調整するともう大変なことになると想像がつきます。これだから高周波はいやなんです。

 とりあえず,放送波でどうにかなるところまで調べてみます。まずStep1,フロントエンドのバリキャップ電圧の確認です。サービスマニュアルは海外仕様なのでこの通りの電圧にはなりませんが,PLL-ICとして同じソニーのCX7925を使っている他のチューナーを調べて,これに近い電圧になってるかどうかをみます。

 するとやはり結構ずれています。高い周波数側をあわせると低い周波数側があわなくなるので困ったものですが,そもそも国内向けの仕様が見つかりませんから仕方がありません。一応ここでは,90MHzの時に21.5Vになるようにしておきました。

 次にトラッキングです。76MHzと90MHzの2つの放送波をつかまえて,TP10の大きさが最大になるよう,交互に調整をします。しかし,そう都合良く76MHzと90MHzで放送をやってくれているわけはありません。76.1MHzと86MHzの2つを見つけ,これで調整を行います。結構ずれている感じです。

 次は中央付近の周波数を受信し,IF段の調整です。ちょうどNHK-FMの先代が83.1MHzなので,これを使います。TP10を見ながら,最大になるようにIFトランスを調整します。

 次は検波出力の調整。同じく83MHzを受信し,TP4とTP5の間の電圧がゼロになるよう,トランスのコアを抜き差しします。これも割合簡単です。

 さあ,次のステップで私の手は止まりました。モノラル時の歪率調整です。83MHzを受信し,音声出力端子の歪率が最小になるようにするのですが,歪率計がありません。低歪率な正弦波発振器もなければ,低歪率なFM送信機も基準信号発生器もありません。まさか1kHzの正弦波を流し続けてくれるような,そんな永久放送事故な放送局があるはずもなし。

 ただ,NHK-FMの歪みっぽさがこの段階で消えてくれればうれしいなあと,調整箇所であるトランスのコアをグリグリ回していたら,ペキッと嫌な音がしてコアがかけてしまいました・・・うわぁぁぁぁあ

 ・・・このSTEPは飛ばしましょう。サブバランス調整というのやります。これは簡単で,83MHzを受信してTP3が最小になるようにすればよいらしいです。楽勝。

 次はMPXのVCOです。TP7が38kHzになるように調整ですが,ここはPLLがロックすればよいので,多少いい加減でもどうにかなるでしょう。

 次はパイロットキャンセルの調整。ステレオ放送を受信し,漏れてくるパイロット信号19kHzが最小になるようにしますが,ステレオ放送で無音を出し続けてくれるような永久放送事故な放送局があるはずなし。次。

 えと,ステレオ時の歪率調整・・・出来ません。次。

 えとえと,ステレオ時のチャンネルセパレーション調整・・・1kHzの正弦波を方チャネルだけ流し続けてくれるような,しかも時々左右を入れ替えてくれるような,そんな怪奇現象のような放送局があるはずもなし。次。

 次は・・・ありません。

 ということで,肝心な調整が出来ずに終わってしまいました。コアもかけてしまいましたし,いろいろいじりましたから,このままほっとくわけにもいかないでしょう。どうにかせねば。

 足りないものは,歪率計,低歪率な正弦波,そしていろいろな設定が可能なFM送信機です。

 実は歪率計と正弦波発振器は,最近PCを利用して実現するフリーソフトが存在し,お金のない自作派は随分救われています。私も救われたかったのですが,Windowsの動いているマシンで一番高速なのは1.3GHzのCeleron。しかもGPU非搭載です。あまりに非力で使い物になりませんでした。

 しかし,ふと手元を見ると,そこには2.5GHzCore2Duo,GeForce8600搭載のMacBookProが!

 実はBootCampを試してみようとWindowsXPを入れてあったりしたので,これを使って歪率計と正弦波発振器を用意しましょう。正弦波発振器は出力をSPDIFにするとアナログ回路での歪みを無視できます。

 ただ歪率計(スペアナ)だけはそういうわけにもいかんので,ローランドのUA25を使ってUSBから入力します。

 試して見ると,これはすごい。スペアナなんて,サンプリング点を65536にしても18fpsで表示できています。32768にすればほぼリアルタイムですよ。すごい。ノイズフロアも-100dB以下と,実用上十分。オーディオに限って言えば,もう測定器級だといってもいいんじゃないでしょうか。

 問題はFM送信機,いわゆる基準信号発生器です。これは本当にどうにもなりません。

 まてよ,FMトランスミッタを使えないか・・・最近のワンチップFMトランスミッタは高性能化が進み,音質もかなり良くなっていると評判です。

 幸い,会社にSiliconLab社製の高性能な評価ボードがあったので,ちょっと借りてきました。これはUSBで様々な設定が可能で,周波数,送出レベル,デビエーション,入力のミュートやパイロット信号の有無など,およそ測定に必要なことはPCの画面上で切り替えることが出来ます。

 このボードの実測値を見てみると,明らかにチューナーの性能に負けています。しかし歪率は0.3%をちょっと上回る程度ですし,チャンネルセパレーションも40dBくらいです。これを基準に調整してもこの性能を上回れないのですが,でもこのボードで最善を尽くせば,実力はもっと上に来ている可能性もあります。

 ないよりまし,これでやってみましょう。ありがたいことに,このボードの音声入力はSPDIFが許されています。

 接続を済ませ,各種ソフトを入れて,早速試してみますと,予想以上の好印象です。調整箇所を動かせば,それに従ってすすーっとスペアナが変化します。正弦波そのものの歪みも小さく,案外いいところに調整が出来そうです。

 最終的に歪率は測定限界に近い0.3%まで追い込みました。このチューナーのスペックもこの程度ですから,ベストといってよいでしょう。また19kHzのパイロット信号の抑圧などはわかりやすく,目視でもノイズに埋もれる位のレベルに追い込めます。

 チャンネルセパレーションもしっかり調整。ただ,やっぱり結構漏れるみたいですね。送信側の問題かも知れないのでなんとも言えません。

 調整のための環境さえあれば,作業そのものはとても簡単。やはり調整前がベストになっていたわけではなく,若干のズレがありましたから,経年変化だけは避けられないようです。

 早速試聴です。はっきりいって,よくわかりません。もともと高音質を指向したソースも少なく,NHK-FMは相変わらず歪みだらけですので,よく分かりません。よく分からないのですが,気が付いたのが低音がしっかり出てることでしょうか。

 iPodを送信機に繋いで音を出してみましたが,アンテナを直結しているせいもあり,iPodを直接聞いているのとなにも変わりません。少なくともこの段階で,Hi-Fiオーディオ機器としてのFMチューナーであることに,私は自信を持ちました。

 となると,NHK-FMの強烈な歪みの原因ですね。どうもこれは,マルチパス障害のようなのです。

 なぜ民放ででないのか分かりませんが,テレビのVHFアンテナは,FM放送の帯域では指向性がちょうど180度反転します。直接波ではなく,むしろ積極的に反射波をつかまえているような状態なので,受信レベルが良くてもマルチパスが起きまくっているのは確かです。

 歪みになるか,ジュルジュルという音になるかは,直接波と反射波の到達時間差によるものがあり,また送信周波数にも関係がありますので,そう考えるとNHK-FMでだけ歪みが出るというのは納得出来ます。

 試しに,アンテナ端子と金属製のラックをくっつけてみると,歪みがなくなりました。やはりマルチパスですね・・・

 下手に素人がいい加減な機器で調整を行わずともよかったのかも知れません。ベストではなくても,十分な性能を持っていることは確かだったわけですし。

 問題の解決には,さらにFMアンテナを調達しないといけないことになりました。以前はマルチパスなど出なかったので,T型のフィーダーアンテナはすでに捨ててしまいましたし,賃貸ですから屋根上に7エレのFMアンテナなど上げるわけにはいきません。(そういえば実家では最初にあげた3エレ八木が台風に飛ばされ,5エレにしました・・・)

 ということで,まずはフィーダーアンテナを買ってきましょう。数百円で買えるはずです。昔はスーパーにも売ってたくらいだったのですが,最近はとんと見かけなくなりました。まだ売ってるのかと心配になって調べると,大手量販店にはありそうです。会社に帰りにでも買って来ることにします。

6V6シングルを改造

  • 2008/05/28 12:12
  • カテゴリー:make:

 2000年に作った6V6GTのシングルアンプを改造しました。

 改造と言っても性能の向上はなにもありません。このアンプは自分でゼロから設計したものだったのですが,案外性能が平凡で,特にこのアンプでないといけないような音でもないことから,ほとんど使っていません。

 自分で設計をしたということもそうですが,旧タンゴが廃業した時の,最後の生産分として入荷したU-608というトランスを手に入れたことがきっかけでした。5Wくらいのシングルアンプを作るのに,どんな真空管を選べば良いかを考えたのですが,どうせメインのシステムにはならないだろうし,ヘッドフォンジャックも付けておきたいということで,あまり欲張らないようにしたのです。

 U-608はUL接続用のタップが出ていませんので,五極管を使う場合でも素直に五極管接続をするか,あるいは三極管接続をする,もしくは最初から三極管を使うしか選択肢がありません。

 三極管はすでに5998のプッシュプルがありますし,ここで2A3みたいな本格的なアンプはドライブも大変なのでちょっとしんどい。かといって6BQ5や6BM8みたいなタマでは,最後のタンゴトランスがもったいないので,悩んだ末6V6にしたのです。

 スクリーングリッドへの電圧供給はなにかと面倒ですし,出来ればUL接続したかったのですが,仕方がないので設計課題の1つとして,真面目に五極管接続をすることにしました。

 電源トランスはいつもお金がかかるものなのですが,新規の投資をしたくないという気分もあって,手持ちにあったST-220の中古品を使うことにしたのです。ところがこのST-220というトランスB電源を220mAも確保されていて,6BQ5や6V6のプッシュプルに対応できるちょっと大きめのトランスです。今回の6V6シングルでは100mAもあれば足りると思っていたのですが,まあいいかと使うことにします。

 ところが,電流が少ないのでやはり電圧が高めに出てしまうことと,サイズが大きく重たいことで,小型のシャシーではたわみが大きく,また配置にも無理があることなど,かなり不自然な状態で使っていたのです。

 ま,それはそれでなんとかあわせ込んで,4.5W+4.5Wの出力のシングルアンプが完成したわけですが,すでにあれから8年。

 昨今の原材料高騰からトランスの値段もうなぎ登りです。1.5倍から2倍になったトランスもざらです。いわば贅沢品ですし,食料品と違って1回買うと数年は買いませんから別にいいのですが,それでも出来るだけ「鉄の塊」には投資をしたくないものです。

 そこへノグチトランスというトランスの専門店が値上げの予定を発表しました。ST-220などというオーバースペックのトランスから,適当なサイズのトランスへ交換しないといけないなと思って矢先の話で,以前なら5000円を切っていたPMC-100Mという手頃なトランスも,今や6000円近い値段になっています。

 これ以上値上がりすると,価格的に交換する意味もないですから,こういうのはさっさと注文するのがよいです。

 出てきたST-220で,ちょっと出力の大きめのプッシュプルアンプを作ることが出来ない物かと考えたのですが,220mAという電流も,280Vという電圧もちょっと小さくてダメそうです。(この段階で電圧に思い違いをしていて,40Wクラスのプッシュプル用出力トランスを2つ注文済みであったことは内緒です。)

 そこで考えたのは,ST-220を5998プッシュプルに転用,5998プッシュプルについていたPMC-283Mを,新しいプッシュプルアンプに使ってはどうか,ということです。

 PMC-283Mは320Vで280mAですから,6CA7でプッシュプルを組むと30Wくらいはいけそうです。しかも120V巻線も出ているので,固定バイアス用の負電圧も作ることが出来ます。(ST-220にはありません)

 このトランスも10年前は1万円くらいだったのですが,今は結構高いですねえ。

 しかし,問題は5998プッシュプルにST-220が使えるのかどうかです。

 固定バイアスではありませんし,電圧も280Vあれば十分なのですが,電流が220mAは実は少ないのです。5998Aのアイドル電流が1ユニットあたり60mA,これが4つ分ですでに240mAですから,軽くオーバーです。

 まあ,少々多めに電流を取っても電圧が下がるくらいでたぶん使えると思うのですが,長時間の使用は難しいでしょうね。

 しかし,ST-220を使わないともったいないですから,やっぱりこの作戦でいきましょう。

 こう決めて,6V6シングルの改造を始めます。トランスの配線を外し,シャシーからST-220を取り外します。ここにPMC-100Mを取り付けますが,幸いなことにちょっとヤスリで削るだけで固定穴を作ることが出来ました。しっかり固定できます。

 しかし,合計100mAのトランスというのは,小さくてかわいらしいものです。

 配線を終えて,各部の電圧を測定すると,当たり前ですが改造前と全く同じです。これなら間違いないだろうとさくっと音出しをします。

 ハムも全然なく,ノイズもほとんど聞こえません。まずは成功でしょう。

 しかし,音を出すと,スケール感がないのです。広がりもなく,随分と頭打ち感がします。ジャズは言うまでもなく,クラシックはもう苦痛というくらいの狭さです。

 効率のいい大きなスピーカならもっと鳴るんでしょうが,やはりドライブ能力が特に必要と言われるCM1では,全然だめですね。いやー,がっかりです。

 試しに5998プッシュプルに切り替えると,広がりはそこそこ,低音もしっかり出てきますが,高音に伸びがありません。やっぱ頭打ち感があります。クラシックで顕著ですね。

 それならばとうちの常用機である300Bシングルを投入,自然な伸びはあるのですが,低音のモコモコとした分離の悪さ,スケール感のなさからくる広がりのなさに「こんなに悪かったかうちのアンプは?」と思うほどでした。パワー不足です。

 最後の手として,MOS-FETの40Wアンプです。これはあまりにソリッドな音でつまらないのですが,どうしてどうして,クラシックを鳴らしてみると一番ましなのです。友人も「これでやっと普通になった」といってましたし,確かにすべての音が等しいバランスで鳴っています。

 やっぱクラシックのようなスケール感重視の音楽は,パワーが必要なんだなあと思ったことと,変に特性に偏りのある「個性の強いアンプ」ではなく,ストレートでソリッドなアンプこそクラシックには適しているのではないかと,そんな風に思った次第です。

 楽器の数が少なく,ボーカルやピアノなどの柔らかい音が主役なら,負帰還の少なめのシングルアンプは,本当にいい音を出すと思います。

 一方で,6CA7やKT88,6L6GCなどの銘球を使った大出力プッシュプルアンプも,音楽のジャンルに関わらず昔から高い評価を得ています。五極管でアンプを作るくらいなら半導体でいいじゃないかと思っている私ですが,UL接続という絶妙な負帰還システムは半導体では実現できず,ここに試してみる価値があるのではないかと思います。

 

バックアップメモリの電池交換

  • 2008/05/26 14:54
  • カテゴリー:make:

 5月の連休には実家に戻っていたのですが,1つ気になっていたことを片付けてきました。古いシンセサイザー達の電池交換です。

 今時のシンセサイザーはフラッシュメモリがあるので電池交換など不必要ななのでしょうが,80年代のシンセサイザーのユーザーメモリはSRAMで,唯一長期間のバックアップが可能な書き換え可能なメモリだったのです。

 バックアップ用の電池はおおむねコイン型のリチウム電池で,大体5年程度持つと言われています。今となっては使うこともないシンセサイザーではありますが,それでも当時のデータが永遠に失われるのは忍びなく,わずか数百円の投資と少しの手間で救えるなら,やっぱりなんとかしたいといいうのが,これ人情というものです。

 実家にあったのはローランドのD-20。これは私が10代の頃に使い込んだ1台です。ゴミ同然ですが,やっぱ捨てられないものです。

 使われている電池はCR2032で,メイン基板の電池ホルダーに取り付けられています。通電しながら電池交換をするのがミソで,これを忘れるとメモリがふっとびます。

 幸いにして私のD-20が,遙か昔の記憶を失ってはいませんでした。

 作業時間はわずか10分ほど。ここから先また5年,こいつは長い眠りにつくのです。

 ついでに,JX-8Pも見ておきましょう。中古で買ったJX-8Pは確か私が改造し,RAMカートリッジと同等な機能を内蔵させた時に,バッテリバックアップの電池も高性能な物に変えた記憶があります。

 電源を入れてみると・・・カートリッジを認識しません。その上,ユーザーデータをすっかり忘れています。うーん,かわいそうなことをしました。

 中をあけてみますと・・・あれ,元に戻してある。

 ・・・思い出しました。JX-8Pはいかにも80年代的なアナログシンセですが,これを初めてステージに持ち出す際,信頼性を高めようとして,改造箇所を全部元に戻したのでした。電池もCR2032になってます。

 近所のスーパーにまた買いに走り,CR2032を交換しましたが,記憶が失われてしまったJX-8Pは,私がエディットした音を出してくれることは,ありませんでした。

 妙な虚脱感が私を襲い,私はそのまま電源を落とし,ケースにJX-8Pを戻し,そのまま部屋を後にしました。新しい記憶を与えられることは,結局ありませんでした。

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